忘れてた。
いや、忘れたことにしてただけかもしれない。

シンプルな白シャツに、少し透けたインナー。
この季節は、そういうのが無防備になりやすい。

「うわ…マジで?」

声に出さなかったけど、心臓がひとつ跳ねるような音を立てたのは、たしか。

「久しぶり……だよね?」

「……元気そうやな」

その言い方、懐かしすぎて、喉の奥が熱くなる。

気づいたら、居酒屋で並んで座ってた。
ソファにちょっと沈み込む感じが、横にいる彼との距離を余計に意識させてくる。

「……ほんま、変わってないな。いや、でもちょっと色っぽくなったんちゃう?」

酔ってるのか、素なのか。
でも、そんなこと言われたら、なんか……変なとこがじわっとする。

あの頃、私はまだ学生で、彼は会社勤め。
絶対に人に言えない関係なのに、触られるたび、誰かに“見つかりたい”とも思ってた。

「今、ひとり?」
「うん……」

答えた瞬間、脚が勝手に彼の方を向いていた。

そのまま、自然すぎる流れでホテルの部屋。

シャワーも浴びず、
スカートのままベッドに腰かけた私を見て、
彼がふっと笑った。

「変わらんね。こういうとこ」

そう言いながら、指先が私の髪をゆっくり梳く。
太ももの内側がじわじわ熱くなっていくのが自分でも分かる。

「……この匂い、まだ覚えてる」

そう言われたとき、
息を止めたまま、脚を閉じ直したのがバレないようにした。

ベッドの上で、ふたりとも無言になる。
でも、無言の中に「もっと触れて」「もう入れて」と言ってるみたいな呼吸があって。

「……全部思い出した」

キスの合間に、彼がつぶやいたその声が"いちばん下"に響いた。