居間に立ち込めていた濃密な熱が、ゆっくりと静寂の中に溶けていく。
僕は、はやる鼓動をなだめるように、あえて丁寧に時間をかけて彼女と腰を交わした。早く逝ってしまいたいという切実な欲求を、平均的な時間という理性の枠に押し込める。それは、僕が彼女にとって「一時の情熱に流される未熟な男」ではなく、彼女のすべてを過不足なく受け止め、満たすことのできる「健康的な男」であると証明するための、静かな闘いでもあった。
果てたあとのピロートークは、驚くほど健康的だった。
さっきまで獣のように喘いでいた彼女は、再び僕の知る「後輩」のような顔をして、けれどその瞳には消えない「女」の光を宿して、他愛もない話を僕に投げかける。
僕は、ふたたび勃起してしまわないように、慎重に心を凪に保った。
使い切った熱の名残を帯びた、少し湿った陰茎。それは、大きくもなければ、情けなく萎れきってもいない。戦いを終えたあとの、適度な重量感を持った「身体の一部」として、僕はそれを丁寧に、儀式のようにパンツの中へとしまい込んだ。
魂を削り合うような陶冶の儀式を終え、僕の肉体は今、極限の空腹と、ある種の野蛮な解放感に満たされている。
「……お腹、空きましたね」
彼女が、乱れた髪を指で梳きながら微笑む。
その唇は、まだ僕の熱で赤く腫れている。
重厚な静寂と、初恋の清純な思い出、そして背中に刻まれた「研がれた爪」の跡。
それらすべてを冒涜するように、ニンニクの効いた、油の滴るような、およそこの部屋の品格には似つかわしくない食事を、彼女と二人で貪りたい。
彼女を「女」として陶冶した後の、この卑俗な食欲。
それこそが、僕が「後輩」という仮面を被った彼女から引き出したかった、彼女という人間の「生」の正体であり、僕自身のシコイ本音なのだ。
健康的な男として、僕は彼女の手を引く。
家を出れば、そこには雨上がりの湿った夜気と、僕たちがこれから汚していく、卑俗で輝かしい世界が広がっている。
僕はパンツの中に収まった己の分身の重みを感じながら、次に彼女に何を食わせ、どう汚してやろうかという「健康的」な欲望に、ひっそりと口角を上げるのだった。