世界電子議会会議 in ローマ 参加報告 | Making Our Democracy Work! 石井登志郎オフィシャルブログ Powered by Ameba

世界電子議会会議 in ローマ 参加報告

13日から15日の間、イタリアのローマで開催された世界電子議会会議に、日本の議会を代表し、衆議院は私が、参議院は自民党の山谷えり子議員が参加をして参りました。

世界電子議会とは
これは、一言でいえばインターネットはじめIT技術が、世界の議会において、その透明性や説明責任、公開性等にいかに取り組むか、という題材のフォーラムです。2007年にジュネーブで初めて開催され、今回で5回目ですが、日本の議会としては初参加で、そういう意味では私が日本の議会人として初めてこの会議に参加をしたということになります。私にとってはぴったりのテーマでもありありがたい機会でありましたが、過去一度も参加してこなかった会議に今回なぜ参加することになったかは、昨年、衆議院と参議院のサーバーがとあるならず者にサイバー攻撃を受け、ダメージを被ったことにも関係がありました。IT技術は業務の効率化や広く市民とつながる上で実に有益なツールですが、一方でこれまで思いもしなかったような被害を受けることにもつながります。今回の我が国の“負の経験”を世界に共有し、また他国の経験を吸収してこいと、小平議運委員長や国対幹部の差配で、ローマに出向きました。

「二重同時通訳」の初体験
初めての国際会議への代表参加、メジャーな会議ではありませんが、何ごとも初体験は発見の連続です。一つ発見したのが、「二重同時通訳」の存在。会議の発言者は、もちろん英語ばかりではなく、開催地のイタリア語やフランス語など、様々な言語が飛び交います。しかし、いちいちゆっくり通訳をしてられませんから、同時通訳になるのですが、例えばイタリア語でスピーカーが話せば、それを直接日本語にするのではなく、まず英語にして、その英語を日本語にする、という形で「二重同時通訳」が行われます。フランス語にする場合も、イタリア語を英語にしたものをフランス語にする、ということです。言ってみれば、英語が「ハブ空港」の役割を果たすわけです。通訳技術の知恵に感心しました。ちなみに、私は日本語と英語で発言、私の英語力だと、日本語の方が言いたいことを自由に言えますが、英語の方が直接伝えてる感があり、さて、どちらがよいか、今後の研究課題です。

私の発言 日本の経験を代弁して
国際会議ですから、良くも悪くも形式的なプレゼンテーションが多かったことは否めません。その中で、私としてはより具体的なメッセージを共有できるように、三回、発言しました。
一つ目は、議会の公開性、説明責任について。私からは、福島第一原発の事故で世界に心配をかけたが、議会として、独立の事故調査委員会を立ち上げ、日本語のみならず英語で世界中にインターネットを通じて発信し、当時の総理や原子力安全委員長、事業者への客観的なヒヤリングを包み隠さず発信した事例を紹介しました。公開性、説明責任と言えば、自国民に対するものにのみ目が行きますが、こうした事例を示すことで、ネットの特性を活用した、世界への発信にも議会は役割を果たすべき、と発言しました。
二つ目は、昨年発覚した議会へのサイバー攻撃を受けての対策です。同じセッションで、中南米コロンビアの代表団が、ハッキングを受けて二日間、議会審議に支障を来した、というようなことを言っていました。それもあり、私からは、サイバー攻撃は最新で完ぺきと言われる対策をいかに講じようとも、更に新しい攻撃をハッカーが仕掛けてくることが残念ながらあり得ることを認識する必要がある、技術による防御には完璧はあり得ない、だからこそ、仮に攻撃を受けたとしてもそのことによって議会審議が止まったり、国家運営が滞らないような対策も考えておく必要がある、と述べました。どうもこの会議は、IT礼賛が過ぎていたので、少し冷静な視点を投げかけたつもりです。
三つ目は、インターネットを活用した可能性を前向きにもっと追求すべき、と主張しました。議論がかなりごちゃごちゃで我が国はこんな取り組みをしている、というプレゼンが続いたので、私からは、「透明性(transparency)の向上は間違いなく重要だが、ただの一歩に過ぎない。更なるステップ、参加(participation)や協働(collaboration)を目指す、つまりネットを使って政策や法案をさらに磨きあげ、よりよいものにしていける可能性を追求すべきである、という点です。一方で、ネットを通じた世論が、世の中一般の世論とは違う特色もあり、メディアリテラシーの課題等も含めて、そうした点の課題整理を次回以降の電子議会会議の題材にすべき、と発言しました。これに先立って、山谷議員からは文科省が取り組んだ「熟議」プロジェクトの紹介を行い、ネットを活用した世論形成、実名性の重要さなど指摘し、他国の耳目を集めました。
こうした発言が、どれだけ他国の代表団に響いたかわかりませんが、グッドプラクティスのみならず、負の経験も共有できれば、こうした会議がより実りあるものとなります。また、こうした機会を通じて、多くの世界の議会人と触れ合うことで、何か新しいものが生まれる可能性もはらんでいることを実感できました。

それにしても、インターネットのような現代社会の最新技術に関する国際会議を、ローマで開催する、というのも不思議なものです。今回の素晴らしい経験を、今後の活動にしっかり生かしていきたいと思います。