【社会保障】日本が誇るソフトパワーは長寿社会 | Making Our Democracy Work! 石井登志郎オフィシャルブログ Powered by Ameba

【社会保障】日本が誇るソフトパワーは長寿社会

■批判噴出、後期高齢者医療制度


 この四月から始まった後期高齢者医療制度の評判が最悪です。政府は、膨れ上がる医療費をいかに抑制するか、そのために一人当たりの医療費が多い75歳以上の方々を別管理することによって医療費の膨張を抑えようとしていますが、その運用、制度に関して多くの問題が指摘されています。高齢者を年齢で区分けすることで受けられる医療にも区別が持ち込まれることへの懸念や、これまで家族と共用の健康保険に入っていたものから一人一人が被保険者となることによる負担増、その他、消えた年金の解決が一向に進まない状況で年金からの保険料天引きだけが進むことの不条理さなど、特に高齢者の怒りは頂点に達しています。民主党は、後期高齢者医療制度の廃止法案を提出したところですが、そもそも論として、国の医療制度のあり方が何かおかしいのではないか、単に今回の制度だけに不備があるのではなく、本質的な考え方に問題があると感じます。

■日本は長寿の国


 私たちは、誰もが健康で充実した人生を、それも長く送りたいと願うはずです。長寿は、大昔から全人類の希望であり、長寿の秘訣、長寿の妙薬がどこかしこと語られ続けてきました。そして、わが国は世界一の長寿国家を作ることに成功しました。このことは、紛れもなくすばらしいことです。
 平均寿命世界トップクラスの要因は、第一に乳幼児死亡率が低いこと、第二に医療制度が整っていること、第三にバランスのとれた健康的な食生活が根付いていることが挙げられます。もちろん、戦争・紛争がないこと、凶悪犯罪がないことも平均寿命世界一を支える大きな要素です。江戸時代後期には平均寿命が30歳以下であったとの記録もありますが、その最大要因は乳幼児死亡率が7割にも達していたということだそうです。第二次大戦後は50歳そこそこであったものを、国民皆保険制度と伝統的な健康的食生活が下支えし続けて、今日の平均寿命男性79.00歳、女性85.81歳へとつながっています。
 そのすばらしい長寿社会が、いつしか官僚政治によって “やっかいなもの”と考えられてはいないでしょうか。仮にそうだとしたら、その考えを排除し、かつ持続可能で長寿を歓迎できるための制度へと改革をしなくてはなりません。
 


■山国からのヒント


 長寿でありながら、低い医療費を実現する。そのためには、普段からの地域ぐるみの健康づくりが大切であることを、一つの例が示してくれています。以下、田中康夫前長野県知事コラムからの引用とし、ヒントとしてみたいと思います。

 僕が知事を務めた山国は嘗(かつ)て、塩分摂取過多な食生活でした。佐久総合病院や諏訪中央病院に象徴される“農村医学”の現場で勤務する医療者は、保健師と共に集落を回り、減塩運動を展開しました。
それまでは直接、冷や奴に醤油を掛けていた人々に、必ず小皿に注いで、少し浸すだけで食しなさい、と食生活改善運動を始めたのです。減塩の総菜を1品、食卓に並べなさい、と繰り返しても人々が従わないのを見て、塩を一切使わない料理のコンテストを開催しました。 と同時に早期発見・早期治療の、詰まりは医療と福祉と介護をシームレス=継ぎ目の無い形で提供する「地域包括ケア」を70年代から試み、全国屈指の長寿でありながら、最も医療費が低い実績を齎(もたら)すに至ったのです。

 ただ医療費を抑制するだけでは、何も生みません。この難問を、知恵を絞って乗り切ることこそが今の医療制度改革に求められる姿です。長野県の事例は、一つのヒントを与えてくれます。