第二次安倍政権待望論Ⅱ(中編) | 田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」Powered by Ameba

第二次安倍政権待望論Ⅱ(中編)

中国が尖閣を口実に台湾を取り込んでしまえば、この貴重なる親日国が反日へと染まっていきかねません。台湾に対して「台湾は尖閣の領有権を主張しない」という条件で、同海域で台湾に自由な漁業権を認める協定が実現すれば、台湾を中国ではなく日本の側に一段と引き寄せることができます。安倍氏はこれまでも大きな視野での対中・対台戦略を構想してこられましたが、その中にはこの漁業権問題の解決も含まれています。安倍政権がその解決へ向けて取り組みを進められれば、きっと李登輝氏も台湾国民への説得役を引き受けられることでしょう。尖閣に築かれた港を拠点に日本と台湾の漁船が仲良く一緒に漁ができる日がくれば、中国がいかなる日台離間工作を行おうとも日台は不動の友情を築くことができるでしょう。

野田政権は内閣改造において、私が拙著にて「狂気の媚中主義者」と評した田中真紀子氏を閣僚に起用しました。さっそく中国の国営新華社通信は、田中氏が「日本の歴史教育には欠陥があり、歴史の事実を国民に伝えるべきだ」という発言を行ったと報じ、嬉々として田中氏を持ち上げる記事を掲載しています。このような時期に自虐史観まみれの媚中主義者を閣僚に抜擢することは、中国に対して「もう日本は降参間近だ」という誤ったメッセージの発信につながります。
固有領土を侵略されかけ、狂ったような反日暴動デモで脅され、このような状況に至ってはいくら平和ボケの日本人であっても、もはや「相手の嫌がることはしない」という盲目的な「日中友好」は成り立たないことを理解しています。友好どころか、日中両国はすでに冷戦に突入しているという現実を直視しなければなりません。これからの日中関係はかつてのアメリカとソ連、また現在のインドとパキスタンのような関係に進んでいきます。大陸国家の中国が覇権拡大を求めて海洋へ進出しようとすれば目の前に「邪魔」な日本列島が立ちふさがっているのです。東アジアにおいて大陸国のランドパワーと海洋国のシーパワーが同等の国力を持ったことで、決して避けることのできない地政学的衝突が生じているのです。この衝突を回避することは不可能です。しかし日中冷戦が米ソの冷戦と異なる点は、残念ながらすでに両国間に大きな経済的な結びつきが生じてしまっている点です。

安倍氏の対中「戦略的互恵関係」とは、経済面など日中両国ともにメリットになることであれば合意するが、日本の国益を損なうことは絶対に譲歩しないということです。国益とは経済的な利益だけでありません。領土はいうまでもなく、主権・名誉・歴史観といった国家として絶対に譲歩してはならない大切なものがあります。確かにそれを譲歩しないことで対中貿易減少など目先の経済的損失が出ることもあるでしょう。不当な関税をかけられたり、一部の資源の輸出を停止されることもあるでしょう。中国人観光客が激減することもあるでしょう。
しかし国益とは目先の銭勘定だけではありません。主権国家として絶対に譲ってはならないものを譲歩していけば、そこに支配と被支配のシステムが成立し、相手側の要求はエスカレートの一途をたどり、最後にはすべてを奪われてしまうのです。すなわち譲歩を重ね続けていけば最終的に日本はチベットのような状況に陥ります。戦後歴代政権の多くは自虐史観による贖罪意識のせいで、中国や韓国に対し、譲ってはならないものを多く譲歩してきました。河野談話や村山談話、教科書検定の近隣諸国条項などがその最たるものでしょう。河野談話を修正するという安倍氏の公約は、過去の政権の過ちによって譲ってしまった大切なものをもう一度取り戻すということなのです。

国のために命を捧げた戦死者に対する国家的感謝としての首相の靖国神社参拝も、国家として絶対に譲歩してはならない最たるものです。中国は日本を精神的従属化に置こうとする戦略的意図により「靖国参拝をするな」と圧力をかけます。中国に呼応する左派マスコミも、日本の自虐史観を利用して政権攻撃の材料に用います。無知蒙昧なコメンテーターや媚中左派の評論家などは「首相の靖国参拝は国益を損なう」などと主張します。しかし日本の首相が中国の圧力を排除して参拝することは、中国に対して「日本は中国に従属しない」という国家的意思表示なのです。それはとりもなおさず他国の内政干渉から日本の主権を守ることであり、固有領土を守り抜く決意とも表裏一体の関係にあります。

私たち日本国民はたとえ中国が経済的な圧力をちらつかせてもそれに動じてはいけません。経済関係をぶち壊しにして困るのは日本よりも、むしろバブル崩壊中だといわれる中国の側なのです。日本には円と人民元の直接取引停止など多くの対抗カードがあり、日本側から積極的に経済制裁を仕掛けていけば先に根をあげるのは間違いなく中国です。第二次安倍政権で実行されるであろう靖国神社参拝を中国がいくら非難しようとも、国民が揺るがずに安倍氏を支持すれば、安倍氏は毅然として国家の尊厳を守り抜いてくださるでしょう。政府と民間が一体となってひるむことなく、中国との冷戦・経済戦争に必ず勝つという強い意思を貫き、目先の利益に惑わされたりせずに中国に対抗していかなければならないでしょう。

安倍氏がかつて進められ、再び実行しようとされている対中「戦略的互恵関係」を平易にいえば、「これまでの日本のような自虐史観外交・謝罪外交はしない。むやみに対立することはせず双方にメリットがあれば合意する。しかし譲ってはならないものはたとえ経済的損失が派生しようとも決して譲らない。感情的にならずに冷静な判断で戦略的に国益を追求する。中国との国家間競争に日本は絶対に負けない」といったものだと感じています。安倍氏が提唱されてきた「アジア・ゲートウェイ構想」は、日本が中国との冷戦・経済戦争に勝ち残るために極めて有効な戦略でしょう。国際空港を24時間化することや税関・港湾手続きの統一簡略化、その他多彩なアイデアによるゲートウェイ構想は、アジアの代表は中国ではなく日本であるべきだという安倍氏の強い意思が反映されているものだと感じています。

日本が中国との経済戦争に打ち勝つには、まずは日本経済がデフレを脱却してふたたび成長軌道に乗らなければなりません。経済政策については前稿をご参照いただきたいのですが、安倍氏の主張されている超大型量的緩和と成長戦略的財政出動、これが実行されればおそらく確実にデフレ脱却を達成できるでしょう。何十年も続いた不況ですから一足飛びにはいきませんが、しだいに着実に景気が良くなり収入が増える実感を得られるようになっていき国内消費も回復していくでしょう。

安倍氏が提唱される成長戦略「イノベーション25」は、長期的視野に立った技術革新に国力を注ぐことであり、すでに世界27位(IMD「国際競争力年鑑」2012年)にまで低下してしまった日本の国際競争力をふたたび上位に押し上げていく原動力になるでしょう。例えば安倍氏が演説で一例として言及されたスーパーコンピュータによる新薬開発ですが、新薬分野でも日本はデフレで企業の研究予算がとれず海外勢に遅れをとり、それどころか海外で承認された薬すら日本では一向に承認されないドラッグ・ラグまで派生している始末です。しかし国が成長分野の技術革新を全面的に支援していけば、日本の技術力は必ずもう一度世界の市場を制するまでに成長していくでしょう。本来最も国が支援しなければならない技術分野を「2位じゃダメなんですか」などと言っているようでは、日本の技術力も国力も衰える一方です。

デフレ対策に安倍氏が進めようとされている公共投資は無用のハコモノを建てるたぐいのものではありません。前論文でも述べたように、首都圏直下大地震や南海トラフ大地震は遠からず必ず起こります。これは避けようがありません。明日起こるかもしれないのです。それなのに民主党政権は具体的な対策を何も進めようとせず、大津波に襲われることが予測される地域の住民は「津波が来たらあきらめるしかない」という嘆きの声をあげています。しかし思い切った超大型量的緩和による公共投資を国土強靭化の対策にも回していけば、来る大震災の人的・経済的被害も軽減できることでしょう。財務省の操り人形のような首相のデフレ維持・増税・緊縮財政では、次の震災で失われる国民の命は増加するだけです。安倍氏が言われる「日本人の命を守る」には、いうまでもなく震災の犠牲者数を少しでも減らしたいという意思も勿論含まれているのでしょう。

前稿でも述べましたが日本には復活の切り札があります。日本の天然資源は尖閣海域だけではありません。日本のEEZ内における海底資源のメタンハイドレートは世界最大級の7兆立方メートル(天然ガス換算で1148兆立方メートル)、さらに南鳥島の海底には日本の国内消費の約230年分に相当するレアアースが埋蔵されている大鉱床が発見されています。同海域では、従来中国でしか産出されていなかったジスプロシウム(ハイブリッド車のモーターに必須)が約400年分、光磁気ディスクに必要なテルビウムに至っては4600年分も存在することが確認されています。千葉県沖の南関東ガス田にはクリーンエネルギーといわれる水溶性天然ガスが約800年分あり、同様の天然ガス田は佐渡沖や北海道など各地で続々と発見されています。佐渡沖には大型油田の存在も確認されており、いうまでもなく尖閣海域は原油やメタンハイドレートやレアメタルの宝庫です。
これまで「資源のない国」といわれてきた日本は、海の中に膨大な天然資源を保有する世界最大級の資源大国だったのです。現時点で判明しているだけでも、日本の領有する天然資源は総額で3京3200兆円にものぼると推定されています。安倍氏の超大型緩和による財政出動をこれらの開発・採掘・実用化に投資してハイスピードで開発を進めていけば、日本経済は一気に甦り、いずれ世界を席巻するでしょう。もしかするとアメリカのGDPを追い抜く可能性すらあります。政界を見渡すかぎり、この壮大な国家戦略を敢然と実行できる人物が安倍氏以外におられるでしょうか。

近未来日本の最大の問題でもある少子高齢化による現役世代減少についても、少子化の原因の一つはこの長引くデフレ不況にあります。収入が減り続け生活が苦しく子供を育てる自信がないのです。収入が少ないために結婚したくてもできない人も多いのです。25~29歳の男性の平均年収は277万円といわれています。これでは妻子を養うことができません。しかしデフレ脱却して日本経済が再び成長軌道に乗り、景気がよくなれば出生率はふたたび上昇していくであろうと私は推測しています。
もし膨大なる天然資源の開発・輸出が大いに進展していけば日本には空前の好況が訪れ、しかもそれはバブルとは異なり実体経済を伴うものであり崩壊することはありえません。日本人は「日本に生まれて本当によかった」と心から思える世界一幸せな国民になれるでしょう。そして出生率は急速に回復し、豊かで笑い声の絶えない幸せな家庭が日本全国に満ち溢れるでしょう。第二次安倍政権に最低5年間の任期が与えられさえすれば、この「夢」は必ず現実化へ進んでいくものと私は確信しています。

前回の安倍政権における大きな実績の1つに教育改革が挙げられます。戦後長年に亘って日本の教育は、「戦後体制」の象徴ともいうべき日教組によって歪められてきました。日教組は子供たちに自虐史観を植え付け、左翼的思想の注入をはかり、国を愛することや国を守ることは右翼的な危険なことなのだという観念を刷り込んできたのです。その一方で組合員教師たちは授業そっちのけで赤い旗を振り回しての政治運動に明け暮れてきました。日教組こそまさに日本をダメにした元凶ともいうべき存在です。歴代政権中で最も拉致問題に真剣に取り組んだのは安倍政権ですが、日教組は北朝鮮の官製教育団体「教育文化職業同盟」と密接な繋がりを保ち組合費からの献金まで行っており、「北朝鮮の教育こそ理想の教育だ」と発言したこともある槇枝元委員長は北朝鮮から叙勲されている人物です。北朝鮮の教育を讃えるような狂った組織がいかなる思想を日本の子供に注入してきたかは推察するに易いでしょう。

教育を日教組の思い通りにさせないためにも、安倍政権は教育基本法や教育3法を改正して、子供たちが偏向思想に染まらない真っ当な愛国心を持つように教育改革を推進されました。教員免許更新制度の導入によって、左翼活動家なのか教師なのかわからないような人物や怠けてばかりいる不良教師の存在は認めない方針を示されました。また、悪名高い「ゆとり教育」について初めて見直しを実行したのも安倍政権でした。日教組の要求に文科省が迎合した産物である「ゆとり教育」は日本人の基礎学力を著しく低下させ、日本の国際競争力を落とす一因になっていました。一方で中国や韓国は少しでも多くの知識を与えようと詰め込み式教育を行っており、このままではいつか日本人の基礎学力・科学技術力は中韓に追い抜かれてしまいかねない危機に瀕していたのです。
このように歴代政権が日教組や左派マスコミからの批判をおそれて手をつけなかった教育崩壊問題に、初めて大きなメスを入れた唯一の政権が安倍政権だったのです。しかし日教組に牛耳られている民主党政権のせいで、安倍氏の目指した教育再生の理想はまたしても歪められてしまいました。ましてや媚中主義の権化のような田中真紀子氏が文科相では、それこそどんな自虐史観教育の刷り込みが行われるかわかりません。もう一度この道半ばの教育改革を安倍氏の手で完全な形にしていただかねばなりません。教育再生が果たせれば日本の次代を担う優秀な世代が育っていくことでしょう。

東日本震災の被害が拡大したのは菅政権が国家非常事態宣言を発令せず、現場の裁量権が制限されたままであったことも大きな原因です。もしも大震災が安倍政権の時代に起きていたのであれば、間違いなく安倍氏は国家非常事態宣言を発令されて国力総動員で被災地救済に全力を尽くされ、また原発事故の対応も即座に米国の全面支援を受け入れ、ここまで被害が拡大することはなかったことでしょう。
復興に取り組むべき今も民主党政権は自ら指揮能力を発揮することなく官僚と地方自治体に丸投げしているありさまです。前論文でも述べた通り、安倍氏は官僚の政治支配に操られることなく政治主導の強いリーダーシップを発揮される方です。第二次安倍政権ができれば官邸主導で思い切った復興策を打ち出していかれるでしょう。また前論文にて述べた公務員制度改革についても、安倍氏が辞任に追い込まれたことで事実上中断されていますが、これも第二次安倍政権によって行革が完成することでしょう。

防衛問題においては、安倍氏の提唱される通り、まず一刻も早く集団的自衛権行使の解釈変更が必要です。「権利はあるが行使できない」という不可解な禅問答のような珍解釈は、まさに自虐史観に由来する防衛アレルギーの産物です。これを友人同士の関係に例えれば、隣で友人が暴漢に襲われているのに助けてはならない、しかし自分が襲われたときは友人に助けてほしいということです。こんな卑怯な屁理屈が通用すると考えてきた「戦後体制」は狂っているとしか言いようがないでしょう。
狂気の赤いデモに国会を包囲されつつも岸首相は占領下の被保護国そのものの屈辱的条約であった日米安保を改定され、少なくとも形式的には対等の同盟にすることができました。しかし集団的自衛権行使ができないかぎり、日本が一方的に米国に守ってもらう構図は変わらず、形式的には対等ではあっても実質的には日米は対等にはならないのです。

今、中国による直接侵略の危機にさらされているのは日本です。それなのに日本はアメリカに対して「目の前でアメリカ軍が攻撃されても日本は助けません。アメリカへ撃ち込まれたミサイルが日本領空を通過しても日本は撃墜しません。でも中国軍が尖閣に上陸したときには日本を助けてください」という、想像を絶する厚かましい要求をしているのです。
日米同盟は勝手に永遠に続いていくものではありません。日米安保条約は「締結国からの1年前の予告により一方的に破棄出来る」と定めています。アメリカの腹しだいでいつでも破棄できるのです。もしも現在の解釈通り目の前で米軍が攻撃されても加勢できないという事態が現実のものとなれば、米国民の日本に対する怒りは頂点に達し100%間違いなく日米同盟は破棄されます。怒り狂う米国民の世論を前にしては、いくら対日重視の共和党であっても破棄に反対しにくいでしょう。それゆえ米国共和党は様々なルートで日本に集団的自衛権行使の解釈変更を一刻も早く行うように助言を重ねています。日米安保がなくなれば、核武装もしておらず空母すら保有していない日本にはもはや中国を抑える抑止力はなくなり、アジア太平洋は中国の軍事覇権下に呑み込まれます。それは日本の終焉を意味するのです。

長年に亘って左翼勢力は「日米安保によって日本が戦争に巻き込まれる」などと喧伝してきましたが、今や日本が尖閣防衛戦になんとかしてアメリカを巻き込もうと必死なのです。おそらく毎度のごとく左派マスコミや左翼組織は「解釈変更は軍国主義への道」などと騒ぐでしょうが、国民の多くはもう既に妄想的平和主義の非現実性を理解しています。安倍政権が行った防衛庁の省昇格は、左派マスコミの批判をおそれて歴代政権のいずれもが手をつけなかったことです。しかし実際に省昇格されてしまうと、今や「防衛省」は何の違和感もない日常光景となっています。国民の多くはもう軍事アレルギーから脱しているのでしょう。

平和ボケが続いてきた日本の中には戦争をしたい人など皆無であり、民主主義の日本が国民の意思を無視して外国に戦争を仕掛けることもありえません。しかし侵略され攻撃されたときに、日本を守るのはまず日本自身なのです。何かあったらアメリカが助けてくれるだろうという甘えこそが「戦後体制」だったのです。実は日本人が平和ボケの妄想に浸っていられたのはソ連崩壊までの間でした。それまではアメリカも対ソ包囲網の軸として経済大国日本を無条件で守ろうとしていました。しかしソ連崩壊後の現在、民主党政権のせいで日米の信頼関係がズタズタになったこともあり、日本人が血を流そうとしないのにアメリカ人兵士の血を流す必要はないという考えがとりわけ米民主党勢力を中心に台頭しています。もはや時間的猶予はないのです。

日本は集団的自衛権行使の解釈変更と同時に、自国領土はまず自国で守るために、防衛予算を大幅に増額して防衛能力を高め、必要な関連法を至急に整備し、専守防衛を撤廃して「普通の国」にならなければなりません。あってはならないことですが、もし仮に日米安保が破棄されたとしても、日本独自で中国と戦えるだけの強大な防衛力を保持しておく必要があるのです。防衛力とは攻撃力と迎撃力がワンセットなのですが、日本は「近隣諸国に配慮」してわざと攻撃力を保持しないようにしてきました。「攻撃的だから」という意味不明の理由で日本は空母も長距離爆撃機も弾道ミサイルも保持していません。中国が空母を建造・就航させている以上、日本も同数の空母が必要です。長距離爆撃機も必要ですし、北朝鮮ですら弾道ミサイルを保持してその照準を日本に向けている以上は日本も弾道ミサイルを保有する必要があります。無駄なコスト高をおさえて効率的に防衛力を高めるためには武器輸出制限も完全に撤廃しなければならないでしょう。

現在の日中の戦力では、中国は兵員数や兵器の量数では日本をはるかに上回っていますが、自衛隊(特に航空自衛隊)の技能や兵器の性能は日本が勝っており、尖閣で軍事衝突が起きても自衛隊が勝つだろうといわれています。米国は安保条約の信義に拠って空母3隻を急派しており、万一の攻撃に対する臨戦待機状態を敷いています。米国はフィリピンにも原子力原潜を寄港させ、極東地域に軍事力の主軸を移動させつつあるのです。いざというときに中国が送り込むと予想される戦闘機500機ですが、より高性能の米空母群のFA-18戦闘機が240機、空自が運用するF-15が約200機で計440機が迎撃可能であり、制空権が奪われる心配はありません。制空権さえ奪われなければ制海権も保持でき、制海権があれば陸上兵力の人員移動も容易に行えます。日本のような海洋国家の防衛ではその鍵を握るのは航空面での軍事力なのです。中国の空母にしても旧ソ連の古いジャンク空母を改装した時代遅れのシロモノに過ぎず、艦載機の開発が遅れており離着陸訓練はまだ行われていません。今ならまだ日本は勝てるのです。

しかし、日本が現状の防衛予算のままであれば、あと10年経てば中国の軍事力は日本を圧倒するでしょう。中国のGDPが予想以上に早く日本を追い抜いたことに鑑みると、あと5~6年で戦闘力の逆転が生じる可能性もあるでしょう。つまり今から5~6年間の日本の防衛努力がそれから先の長い未来を左右するのです。この5~6年こそが最も大切な時期なのです。まさにその時期に安倍氏が次期首相候補となられたことは天が日本に味方してくれたとしか言い様がありません。

安倍氏の防衛思想は「強い防衛力を保持することが抑止力となって戦争を防ぐ」というものですが、これは国際政治学では鉄則の常識です。平和主義だの何だのといって自ら攻撃力を低下させて防衛力を弱めれば、対立国が戦争を仕掛けてくる誘発要因になってしまうのです。世界一の軍事力を誇るアメリカに戦争を仕掛ける国はありません。しかし僅か8500人の弱小軍しか持たなかったチベットはどうなったでしょうか。左派マスコミや左翼勢力が唱える妄想的な「平和主義」こそが戦争を招くのです。「日本は平和憲法があります、憲法9条があります」と叫んだところで、それが中国や北朝鮮に対して一体何の抑止力になるのでしょうか。この馬鹿げた妄想憲法は今や日本への攻撃を誘発する「戦争誘発憲法」と化しているのです。
戦争防止に最も有効なのは核兵器の保有ですが、仮に核兵器がなくても「日本は侵略や攻撃を受ければいつでも躊躇なく戦う国であり、それだけの強大な軍事力を保有している」という事実があれば、安易に日本に手を出そうと考える国はありません。こんなことは国際政治学を学ぶ者は学生ですら理解しているのに、その常識が通用しなかった狂った異常な時代が「戦後体制」なのです。

例えばこれまで日本は「周辺諸国に配慮」して潜水艦保有数は16隻を上限とし、まだまだ十分に使用できる新しい潜水艦を退役させスクラップ処分にしてきました。中国のご機嫌を損ねないために自ら防衛力を削いできたのです。そして中国に「配慮」して防衛力を低下させてきたせいで中国に侮られて尖閣を奪われかけているのです。「周辺諸国に配慮」してきた理由は、その根底に「かつての日本は悪の軍国主義国であり中国などを侵略して近隣諸国に迷惑をかけた」という自虐史観(東京裁判史観)があり、そして「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という異常妄想が記された占領憲法です。この自虐史観と妄想的平和主義こそが「戦後体制」なるものの実態だったのです。パラオのような小さな国ですら中国船の領海侵犯に対しては銃撃で応じているのです。この歪んだ「戦後体制」を終わらせなければ、日本を待ち受ける未来は衰退の果てに中国に併合される亡国でしょう。

「戦後体制」に幕を引くためには、憲法9条を改正して自衛隊を正式な国防軍として再定義しなければなりません。それが実現できてこそ初めて日本とアメリカは対等な同盟国になれます。GHQの米国人職員がわずか9日間ででっちあげた憲法こそがまさに「戦後体制」の根幹たるものです。この憲法は日本の手足を縛る目的でつくられており、米国の歴代共和党政権は対ソ・対中戦略のために日本が憲法改正することを要望してきました。
しかし日本の歴代政権は左派マスコミによる攻撃を恐れてこれを封印してきたのです。そして歴代首相が恐れた通り、憲法改正を掲げた安倍政権はご存知のように左派マスコミの総攻撃をくらい、多くの国民が左派マスコミのネガティブ・キャンペーンに騙されて参院選で民主党に投票し、安倍政権を退陣に追い込んでしまったのです。もう次はありません。第二次安倍政権は日本のラストチャンスなのです。万一、第二次安倍政権がもう一度左派マスコミに潰されてしまえば、全ては手遅れとなってしまいます。


<< 1(前編)  3(後編) >>