隣人X 疑惑の彼女
上野樹里、林遣都、ファン・ペイチャ、野村周平、嶋田久作、原日出子他
80点
異星人と少年との接触を描いたスティーヴン・スピルバーグの「E.T.」が傑作であるのは、「ファンタジー」だからである。
ところが、本作品はSFの体裁をとりながら、極めて現実的な社会問題に取り込んでいる。その意欲は評価したいが、「ファンタジー」と「現実の社会問題」の折り合いが上手くついていない。
「人間を絶対に傷つけない宇宙人」という設定は、ファンタジーでは十分あり得る。しかし、「現実社会」との接点を持ったときには「うさん臭く」なる。
宇宙人でなくても、過去の人類の歴史を振り返れば、欧米による植民地化、欧米が抱える移民問題を始めとして「侵入者」が厄災を引き起こしてきたのは事実だ。現実を描くときに、その「恐怖」がきちんと描かれていないと嘘くさくなる。
また、作品中で「X」がどのように日本人としての戸籍を取得したのか不明な部分があるが、これは北朝鮮の工作員などが行う「背乗り」を連想させる。
多くの人々が恐れているのは、このような「なりすまし」によって「侵入者」が社会に潜伏することである。「現実」を絡めているのに、その部分がきちんと描かれていないのは残念だ。
救いは、肩の力が完全に抜けた、上野樹里の36歳の女性を表現した透明感のある演技だ。「のだめカンタービレ」とは全く違った、内側から感情がにじみ出てくる表現力は絶賛したい。
彼女のおかげで、ラブ・ロマンスとしての本作品は一定水準を維持している。
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