蛇にピアス | 大原浩の金融・経済地動説

蛇にピアス

備忘録:映画レビュー:観た映画
★蛇にピアス
吉高由里子、高良健吾 、ARATA 、あびる優他
135点

...

 原作が芥川賞受賞作品(第130回)、しかも作者の金原ひとみが当時20歳であったということで話題になったので、「それなり」の作品だろうとなめてかかっていました。しかし、とても良い意味で期待を裏切られました。

 原作者の意向で、蜷川幸雄が監督したとのことですが、金原の選択眼に脱帽です。原作は読んだことがありませんが、ストーリー展開や世界観はかなり評価できます。しかし、この映画を質の高い作品にしているのは、蜷川の「美的センス」、「映像センス」です。

 まず、濡れ場。刺青やピアスをした男女の絡み合いということで、俗っぽくなりがちなところを、展開は衝撃的でも「寸止めの美学」と「日本刀のような鋭角な美しさ」の映像表現で、「芸術」の域に高めています。絵画で言えば「裸のマヤ夫人」という感じです。

 また、同監督は厳しい演出で有名ですが、俳優陣の演技にも緊張感が漂っています。高良健吾 やARATAがカミソリのような切れ味の鋭い演技をで脇を固めています。暴力性、怒りといったものが的確に表現されているといえるでしょう。

 吉高由利子はポッとした天然の持ち味を残しながらも、揺れ動く危うさをうまく表現しています。滑舌の悪い(舌足らずな)セリフまわしが意外にフィットします。濡れ場でもかなり健闘していますが、危うさの表現御分は監督にかなり監督に追い込まれた結果かもしれません・・・

 肉体改造そのものには、個人的に興味が無いので(注射も嫌いです)、舌を蛇のようにするという発想は理解しにくいですが、偉大な作家である三島由紀夫も「肉体改造」には異常な執着を見せました。

 ひょろひょろの文学青年だった三島は、ある時から剣道をはじめ、ボディ・ビルでムキムキの体に変身しました。三島も非常に精神的な危うさを抱えて生きていたのですが、精神的な危うさを抱えているからこそ、肉体改造に走るというのは大いに理解できます。

 また、肉体改造の行きつく先が、「死という形での完全なる肉体の記憶」に行き着くのもある意味当然かもしれません。いわゆる三島事件(割腹自殺)が、彼の46歳の誕生日の直前に決行されたのは注目すべきことです。独自の「美学」を追及していた三島は、肉体が衰え始める40歳あたりで過去の英雄たちのように「花と散りたい」と述べていたからです。

 吉高由里子演じるルイ他、三人の主要登場人物の深層心理には、このような「美学」と「もろい精神」が潜んでいるように思えます。 

もっと見る
『蛇にピアス』2008年公開|あらすじ、上映時間、予告編、キャスト、フォトギャラリーなど作品情報。みんなの感想や評価をチェックできるユーザーレビューも掲載。出演:吉高由里子、高良健吾 他
movies.yahoo.co.jp

★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏とシンクタンク「人間経済科学研究所」(Institute of Economics for Humans)<JKK>を設立予定です。HPは、https://j-kk.org/ です。

 

<昇龍社の出版物><アマゾン・Kindle版>

★バフェット38の教え 大原浩箸

読書は知性と教養を高める<第1巻>大原浩箸

★素晴らしき映画の世界<第1巻><第2巻>大原浩箸

★客家大富豪に学ぶ【TAO・永遠の成功のための18法則】甘粕正著

★未来世紀エルサレム、大原浩著

★時空小説「ルンビニ」大原浩著

終身雇用の実力主義―バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略―大原浩著

★バフェット流で読み解く、GINZAX30社<特選・優良企業>2018年度版、

昇龍社、アマゾン・キンドル版<上・下巻>

★「賢人バフェットに学ぶ・投資と経営の成功法則」昇龍社(アマゾン・キンドル版)大原浩著

★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2014)昇龍社<アマゾン・キンドル版>大原浩著

★「バフェットからの手紙」に学ぶ(2013)昇龍社<アマゾン・キンドル版>大原浩著

★The Roshi-老子81章・乱世を勝ち抜くための【決断】の書-(戦う経営者・ビジネスマン・投資家のバイブル)大原浩著