この世界の片隅で | 大原浩の金融・経済地動説

この世界の片隅で

備忘録:映画レビュー:観た映画
★この世界の片隅で
のん 、細谷佳正 、稲葉菜月 、尾身美詞他
150点

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 数々の映画賞を受賞した話題作は「はずれ」の場合が多いので、正直かなり「斜め」な視点で観始めました。しかし、その心配は最初の数分間で吹き飛んでしまいました。

 私が生まれる前の話ですから、そんな記憶があるはずもないのに、とても懐かしく心地よい世界が目の前に広がるところから始まります。

 物語は淡々と進んでごく平凡なのですが、2次元の絵の登場人物たちが3次元のリアリティを持って迫ってきます。実写よりもはるかに人間の心の機微を描いています。

 それはディテイルにこだわっているからではないでしょうか?いくら登場人物が飛んだり跳ねたり、泣いたり笑ったりしても、深いものは何も伝わりません。大事なのはちょっとしたしぐさや表情なのですが、それを表現するにはディテイルにとことんこだわる必要があります。

 本作品では、タンポポなどの野草をゆでたりする料理のシーンも、軍艦の金属感も同じように丁寧に描かれています。また、宮崎駿同様、空の描写にも手抜きがありませんし、天候の変化、昼夜の表現もリアリティがあります。

 極めつけは「原爆」の表現。この時代の広島にかかわる話では当然登場するものですが、とてもあっさりしているのに、その悲しさが胸の奥に突き刺さります。

 その他ほめちぎりたいところはたくさんあるのですが、絶対外せないのは「のん」の存在。
「ヘタウマ」なのか「へた」なのかは分かりませんが、「能天気でポッとしているけれどもひたむきに生きている少女」の声は彼女以外に考えられません。

 この物語は淡々と進むけれども、とても悲惨な話です。でもその悲惨な状況の中で懸命に生きる「すずさん」の姿と「のん」の声は、我々にとても勇気を与えてくれます。

 多分米国映画で言えば「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラに相当するのが「すずさん」なのかもしれません。あるいはもっと暗い面で言えば、デンマーク映画の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のビョークとも言えます。

 ただ、米国やスェーデンと日本の文化が大きく異なるように、「すずさん」も、スカーレット・オハラやビョークとは全く違った生き方をしています。

 でも「理不尽な困難に勇気をもって立ち向かう」という点では3人の女性は同じです。「すずさん」は、日本的な「愛とやさしさ、そして忍耐」で【理不尽】と戦っているのです。

 観ているときはそうでもなかったのですが、今コメントを書いているときにかなり「うるうる」きています。これまでの人生で観たアニメ(海外・日本を問わず)の中で最高傑作だと思います。

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『この世界の片隅に』2016年公開|あらすじ、上映時間、予告編、キャスト、フォトギャラリーなど作品情報。みんなの感想や評価をチェックできるユーザーレビューも掲載。出演:のん、細谷佳正 他
movies.yahoo.co.jp

★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏とシンクタンク「人間経済科学研究所」(JKK)を設立予定です。HPは、https://j-kk.org/ です。

 

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