★賢者は歴史に学ぶ | 大原浩の金融・経済地動説

★賢者は歴史に学ぶ


勃興しつつあるイスラム経済圏やアラブ世界に興味を持っていることもあって、
「中学生でもわかる アラブ史教科書」
-日本人のための中東世界入門-
イザヤ・ベンダサン、山本七平著
(祥伝社、定価952円・税別)
を読みました。


イザヤ・ベンダサン、山本七平といえば、大ベストセラーの「日本人とユダヤ人」で有名ですが、その中にあった「全員一致は否決せよ」という言葉は、当時学生であった私に計り知れぬ衝撃を与え、現在も座右の銘にしています。


ちょっと考えると、「全員が賛成しているのだからそれでいいじゃない」ということになりそうです。たしかに、<一つのケーキをみんなでどのように分けるのか>というようなことは、全員一致で決めるのが望ましいでしょう。


しかし、企業戦略や国家戦略を決めるときに「全員一致」はとても危険なことです。全員が賛成するということは、それぞれのメンバーが深く考えずに、主流派の意見に付和雷同しているのかもしれません。どのような集団でも、多種多様な人々が集まっているのですから、真剣に考えれば考えるほど異論が出てくるはずです。ですから、反対が無いというのは真剣に考えていないことの証かもしれません。


あるいは、反対意見を述べにくい環境にあるということも考えられます。実際、異論を唱えると処刑されてしまうような独裁国家では、すべての物事が「全員一致」で決められていきます。


日本は、素晴らしい国ですが、その素晴らしい国の調和を保つためか「異論を封じ込める」傾向があります。欧米では「素晴らしくユニーク」と称賛されるアイデアが、日本では「変わっている」の一言で片づけられることが良くあります。


現在の日本に、どうしょうもない閉塞感が漂っているのも、「異論を封じ込め変革を阻止」しようとする、既得権益勢力がまだまだ強い点にあります。


二世議員があふれる政治家、言うまでない官僚・役人、そして規制に守られた電力・金融業界等など、数え上げればきりがありません。


このような、状況を突破するためにも「全員一致は否決せよ」という言葉の意味を深くかみしめる必要があると思います。


さて、「中学生でもわかる アラブ史教科書」は、1970年代から80年代にかけて、当時の日本人をパニックに陥れたオイルショックの後に発表された論文をまとめたものです。

ここ数年、アラブやイスラムに関する書籍をかなり読みこなしましたが、30年も40年も前に書かれたこの本が、もっとも鋭い切り口でアラブやイスラム世界を解説しています。しかも、「中学生でもわかる」と称しているように、決して難解な内容ではありません。アラブやイスラムに興味のある方は、必読の一冊だと思います。


それと同時に、この本にも鋭い名言があります。

それが冒頭の「賢者は歴史に学ぶ」です。下記一部を引用させていただきます。


賢者は歴史に学ぶ


賢者にとってのヒントは愚者にとっては打撃である(ミドラシュ箴言2・26)

日本人の多くは賢者であり、愚者は例外であろうから、いわゆる“石油危機”は、多くの日本人にとって、様々な問題の解明の糸口を探る感謝すべきヒントではあっても、打撃ではあるまい。ただ、ヒントは、それが与えられた機会に、しっかり掴んでおかないと消えてしまう。

(中略)


「危機!」「危機!」と「打撃」を訴えて、自らが愚者であることを証明する役割はそれにふさわしいマスコミに譲るとして、読者賢者は、その名にふさわしくヒント(暗示)を明示に変え、言葉にされることを望んでおられると考察したからである。

ヒントは平等に提供される。ただ、これを掴むか掴まないかは、その人の賢愚による。

(後略)


現在も、色々な「危機」が騒がれていますが、我々がどのように行動すべきなのかは、この一文に集約されていると言えます。



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