「フランス人の流儀」―日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化― | 大原浩の金融・経済地動説

「フランス人の流儀」―日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化―


「フランス人の流儀」―日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化―
日仏経済交流会(パリクラブ)編
立花英裕 編集協力
大修館書店
定価1700円(税別)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E4%BA%BA%E3%81%AE%E6%B5%81%E5%84%80%E2%80%95%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E4%BA%BA%E3%81%A8%E6%96%87%E5%8C%96-%E6%97%A5%E4%BB%8F%E7%B5%8C%E6%B8%88%E4%BA%A4%E6%B5%81%E4%BC%9A/dp/4469250813/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1339404549&sr=1-1
が発刊されました。


パリクラブの多くのメンバーが、それぞれのパートを分担、執筆しているのですが、とてもうまくまとめられています。パリクラブ理事の有地浩氏が、編集委員を代表して<はじめに>を書いていますが、これだけ雑多な内容を手際よくまとめた手腕には驚かされます。


わたし自身が5年間、クレディリヨネ銀行でフランス人達と付き合ったことに照らし合わせて、大いに共感することや、意外に知らなかった驚くべき事実が随所に盛り込まれ、ぎっしりと活字が詰まった247ページを一気に読了してしまいました。


フランスというと、芸術・グルメなどの文化面が採りあげられることが多いのですが、本書では、フランスで長年勤務したビジネスパーソン達によってフランス人の「仕事の流儀」が生き生きと描写されています。

また、フランス社会やビジネスの「実態」についての内容も見逃せません。


ギリシャ問題以降、EUの中心国であるフランスにも「不安」の目が注がれています。しかし、「英米・アングロサクソン方式」でも「日本流・東洋的」でもない、「フランス方式」の問題解決方法は、大変参考になりますし、かなりしたたかであると思います。


日産を復活し、リーマンショック以後も同社を立派に牽引しているカルロス・ゴーン氏の祖父はレバノン人で、13歳の時にブラジルに渡って事業を始めています。父親はレバノン人女性と結婚し、ゴーン氏が生まれたのですが、その後母親とともに6歳から17歳までレバノンで暮らしています。


そして、フランスのエリート養成校の代表であるグランゼコールの一つ、エコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)を卒業。さらに、(パリ国立高等鉱業学校(Ecole des Mines de Paris)にてCorps des Mines課程を修了し、フランスのエリート養成システムに組み込まれます。


フランスの人口は7000万人程度ですが、世界中で2億2000万人がフランス語を使用しています。また、不幸な歴史ではありますが、第2次世界大戦までフランスは、アフリカ・中東・インドシナに植民地を保有していて、それらの地域には(言葉も含めて)今でもかなりの影響を及ぼしています。


しかも、アフリカ・中東・インドシナは、リーマンショックの影響をほとんど受けておらず(アングロサクソン資本主義に組み入れられていない)、これからが期待できます。


ゴーン氏も含めて「フランス人の流儀」は、我々が思っている以上に世界に影響を及ぼしています。本書を一読して、フランス的思考法・ビジネスストラテジーを学ぶ価値は十分あるのではないでしょうか。