文部科学大臣の諮問機関で、公立学校教員のなり手不足解消策を検討してきた中央教育審議会(中教審)が5月13日、具体案を盛り込んだ「審議まとめ」を盛山正仁文科大臣に提出しました。
具体案は、大きく3つの柱で構成されています。
(1)給与改善
(2)勤務時間削減
(3)人員増強
(2)の勤務時間の削減については、全教員の残業を月45時間以内(国が設ける残業の上限)にするために、勤務間インターバルの導入が掲げられました。勤務と勤務の間を最低11時間を目安に空けるようにという案です。
シフト制の勤務などで勤務間インターバル制度が導入されるのはよくある話ですが、学校って毎日規則正しく生活をおくるための場所でもありますよね。ないよりはいいと思いますが、そこで勤務間インターバルを導入しなければいけないというのはものすごく切ない感じがします。そもそも朝礼の時間とかありますからね。
(3)の人員増強については、現在、小学校の5・6年生で導入されている教科担任制を3・4年生に拡大する案が盛り込まれました。教員たちの一部業務を請け負う「支援員」の配置の充実も盛り込まれました。
そして、もっとも批判の的となっているのが、(1)の給与改善についてです。
公立学校の教員については、毎月一律4%ののみなし残業代を支払う「教員給与特別措置法(給特法)」があります。いわゆる「定額働かせ放題」と呼ばれる制度です。これを抜本的に見直すことが期待されていたのですが、結局4%を10%に引き上げるだけという結論になりました。
「定額働かせ放題」のしくみそのものは維持されるわけです。増額分は月1〜2万円程度だということです。それで教員になりたいひとが増えるのか。むしろ増額したんだから、しっかり働いてくれという方向性にならないか。懸念されます。
10%への増額で国の予算は690億円増える見込みです。また教科担任制実現のために、全国約1万8000校の小学校に1人ずつ教員の追加配置を行うと、国費ベースで400億円という予算規模です。教員の給与に対する国の負担は1/3なので、自治体負担を含めた公費全体としたらその3倍の規模です。約3300億円ですね。
財務省は文科省のほかの予算を削って財源を捻出するよう求めているようです。比較のためにあげてみましょう。大阪・関西万博の会場建設費が、大阪府・市、経済界、国の負担額を合わせて2350億円といわれています。それとは別に、少なくとも800億円あまりの国費負担があるともいわれています。上記の金額とほぼ同規模ですね。
時代の変化に合わせた教育をしろとかなんとかよくいわれますが、はっきりいって、そんなことをいっている場合じゃないんです。教員のなり手がいないということは、教育制度の崩壊を意味します。それが設計ミスだったのか制度疲労なのかわかりませんが、いずれにしてもそれはすなわち社会の瓦解が始まっていることを意味します。
子どもがいないからといって、まったく他人事ではない、いま、ここにある危機です。
どんな社会がいいか、社会としてどこにお金を使うべきか? 私たちひとりひとりに問われています。
※2024年5月16日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。