大人こそ、性やジェンダーに関する知識のアップデートを

 

どんな性教育やジェンダー教育をしているか、全国のすべての男子校にアンケートをとって、ユニークな取り組みについては1年間をかけて実際の授業を取材して、それを来年夏には一冊の本にまとめようと思っています。

 

本になるまでちょっと時間があいてしまうので、書籍用の原稿とは別に、授業の実況中継的な記事を書いて、JBPressというウェブ媒体で8月から「男子校の性教育」という連載を開始しました。実際には性教育だけでなく、ジェンダー教育を含むのですが。本ができるまでの10カ月間ほど続ける予定です。

 

第1回は東京都の巣鴨高校の家庭科の授業でした。一世を風靡した人気ドラマ「逃げ恥」のスペシャル版を教材にして、男性が育児休業をとることの重要性や、それがまだまだ十分に理解されていない社会の現状や、いまだに旧来の「男らしさ」にとらわれがちな現代の男性の葛藤などを学びます。

 

第2回は兵庫県の灘高校での公民の授業でした。近隣の甲南女子大の学生が十数人参加しており、思春期保健相談士の外部講師が、女性の生理や性的同意やデートDVについて行う講義をメインにしながら、ところどころで大学生が高校生のディスカッションの相手をしてくれるというユニークな立て付けの授業でした。

 

この記事が結構読まれて、SNSでは茶化すようなコメントも目立ちました。「男子校×女子大×性教育」に過敏に反応して、真面目な取り組みを笑いのネタとして消費するようなコメントです。どういうひとたちが書いてたのかわかりませんが、これに対して複数のメディアが「揶揄するほうがおかしい」という趣旨の記事を書いてくれました。

 

男子校という空間も多くのひとにとって未知だし、女子大の学生というのもふだんはなかなか知り合う機会が少なくて、いろいろ妄想してしまったのかもしれませんが、高校生も大学生も外野の騒音はあんまり気にしていない様子です。

 

これだけ性教育の必要性が訴えられていても、いまだに性の問題って向き合いづらいテーマなんでしょうね。真正面から向き合えないから、笑いのネタとして消費して、なかったことにしてしまう心理なのだと思います。恥ずかしいときほど笑いに逃げちゃうって心理、誰にでもありますよね。だからこそ、やっぱりこういう教育が必要だということが今回の騒動で可視化されたと思います。こういう取り組みを発信することも大切だなと思いました。

 

ただ単に性教育とかジェンダー教育とかすると広すぎてしまうので、最初は男子校と女子校の取り組みを取材しようと思いました。男子のみ女子のみというちょっと特殊な環境から見てみることで見えてくる本質みたいなものがあるのではないかという勘です。しかし編集者さんからまずは男子校の取り組みに特化して取材してみたほうがさらに視点が絞れるのではないかとアドバイスを受けて、なるほどなと。

 

性やジェンダーについてオープンに話すって、人前で下ネタを話すみたいなことではないですからね。巣鴨が家庭科で、灘が公民科で扱っているように、家庭生活、社会生活を営むうえでの最低限必要な知識として高校生たちは学んでいます。グローバル教育とかSTEAM教育みたいな、市場経済での勝ち組になる為の教育よりもよほど重要だと私も思っています。

 

高校生に負けず、大人たちもそこは学びをアップデートしていかなければいけないのではないかと思います。

 

*参考

女性自身

https://jisin.jp/domestic/2244313/

アベマ

https://times.abema.tv/articles/-/10097143

ダイヤモンド・オンライン

https://diamond.jp/articles/-/329893

アベマの動画はこちらから視聴できます。

https://abema.app/C5D2 

 

※2023年10月5日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。