先月の日経新聞に、教員不足是正のために佐賀県が「公立学校ペーパーティーチャー研修講座」を開くという記事が出ていました。ペーパードライバーならぬペーパーティーチャー。つまり教員免許をもっていながらずっと教壇に立ってないひとに、教壇に立つための研修を行うということ。

 

ペーパーティーチャー研修だけでなく、「臨時免許」を取得して県内の学校で働いてもらうための相談会も行うとのこと。臨時免許というのは、教員がどうしても確保できないときに、教員免許はもっていないけれどこのひとなら教えられると教育委員会が認めたひとに例外的に発行する免許のこと。

 

2021年度の臨時免許交付数は1万572件で過去最高。つまり1万572人の先生が臨時免許で教壇に立ったということです。佐賀県だけでなく、全国的にそれくらいに教員不足が深刻化しているということ。

 

○教員不足の原因は何か?

 

いろいろ考えられるが、制度的に最も問題だとされているのが、みなし残業代制度。現在公立学校の教員たちはみなし残業代として月給の4%相当をもらっています。これを「教職調整額」といいます。そのうえで、いくら残業をしてもそれ以上の残業代はもらえないしくみになっています。つまり定額働かせたい放題です。

 

労働基準法では原則として、月45時間・年間360時間を時間外労働の上限としています。しかし文科省が発表した2022年度の調査結果によると、上限の月45時間を超えた教員が、小学校で64.5%、中学校で77.1%いたとのこと。

 

○そもそもなぜ4%なのか?

 

教職調整額の制度ができたのが1971年。このとき、1966年のデータでは教員の平均残業時間が8時間程度だったことが根拠にされた。それが50年以上経ったいまでも続いているということ。

 

つい先日明らかになった政府のいわゆる「骨太方針」案では、教職調整額など教員の処遇を抜本的に見直すと明記されています。自民党内では4%を10%に引き上げる案などが議論されていたが、まだ正式な決定はありません。

 

定額働かせ放題の定額を引き上げたところで、実際に残業が減らなければ意味がなく、効果には懐疑的な声も上がっています。

 

○なぜ残業が多いのか?

 

授業準備以外のさまざまな事務仕事、保護者対応などが山積しているといわれています。かつては学校は勉強をするところでしたが、約20年前の学習指導要領改訂から「生きる力」という広い概念を学校が身につけさせなければいけないといわれるようになり、さまざまなことに取り組まなければいけなくなりました。つまり教員の仕事の幅がかつてないほどに広がっています。

 

不登校についての取材をしているときに感じたのですが、学校の機能が肥大化しているように私には見えます。現代社会では、学校の現場に、教員に、そして子どもたちに、多くを求めすぎではないでしょうか。

 

こんな能力もあんな能力も身につけておかないとこれからの世の中では生きていけないと大人たちは脅します。でもちょっと考えて見てください。そこまでしなければいけない社会のほうがおかしくありませんか。子どもたちを脅すことではなく、そんな社会を変えていくことこそ我々大人の役割ではないでしょうか。

 

 

※2023年6月15日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。