いま、全国の小・中学生のうち約25万人が不登校の状態にあるといわれています。中学生に限ると7〜8人に1人が不登校または不登校傾向にあるとも推計されています。不登校は誰にでも起こりえることだと、文部科学省も言っています。

 

新学年になって一カ月ちょっとがたって、いわゆる「5月病」みたいなことが起こりやすい時期です。学校に行くことにストレスを感じることもあるかもしれません。

 

でも、実際、学校に行けなくなると、親はとても焦ります。

 

教育社会学の研究などから、教育格差の存在が指摘されています。出身家庭の社会的・経済的状況によって、学力やその結果得られる学歴に差が生じてしまうという指摘です。さらにはその差が、将来的な経済格差に直結することが指摘されています。要するに“勝ち組/負け組”構造の再生産です。

 

で、社会的・経済的には恵まれている家庭の子どもでも、不登校なると、学力が下がり、その結果得られる学歴も相対的に競争力の弱いものになってしまうのではないかということを、親は恐れます。

 

だからなんとか学校に行かせようとします。それを専門用語では「登校刺激」といいます。でも、不登校傾向が見られた初期対応としては、登校刺激は子どもに良い影響を与えないといわれています。

 

不登校になる原因は本人にもわかりません。多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合っています。精神的に過負荷になって、いちど心が不調を来してしまうと、すぐには回復しません。ゆっくりと心を休めることが先決です。肉体的に無理をしすぎて寝込んでしまったときと同じ状況です。

 

「そんなにつらいなら、学校にいかなくてもいい」と言って、安心感を与えることが大切です。そして回復を待つしかありません。

 

するとこんどは、「待っても待っても変わらないんですけど!」という訴えを聞きます。でも、口で「学校に行きなさい」と言っていないだけで、体中から「いつ学校に行くの?」というオーラがにじみ出ちゃってるケースも多いんじゃないかと思います。それって、子どもからしてみたらめちゃめちゃプレッシャーを感じるわけで、実質的にぜんぜん待ってもらえていないわけです。

 

ではどうすれば「待つ」ことになるのでしょうか。

 

待つというのは、早くその状態になることを望むことではありません。なんならずっといまのままでもいいと腹をくくることです。いまのありのままの子どもをそのまままるごと受け入れるということです。

 

「ありのままの自分でいいんだ」という深い安心感が、子どものやる気の根っこになります。やる気の芽みたいな前向きな気持ちはまだ芽生えていなくても、根っこをしっかり伸ばしておけばいいんです。

 

しっかり根を張っておくと、何かのタイミングがやって来たときに、「そろそろ学校に行ってみようかな」となることもあるわけです。

 

2017年に教育機会確保法が施行されました。それにより、仮に正式な学校に通わなくても、多様な学びの場から自分にとって学びやすい場を選んで学ぶことが認められやすくなりました。不登校特例校という、不登校経験者に配慮したカリキュラムを用意する学校も増えてきています。さらには通信制高校が人気になり、無理に毎日学校に通わなくても、大学進学への道が開けやすくなっています。そんなことも知識として知っておくと、少しは心に余裕ができるのではないでしょうか。

 

拙著『不登校にも学べる』(集英社新書)では、フリースクールや不登校特例校、通信制高校で実際にどんなことが行われているのかを詳細にレポートしているので、よろしければ参考にしてみてください。