中学受験、高校受験、大学受験といろいろありますが、どんな段階であれ、11月というのは受験生がいるご家族にとってはなかなかしんどい時期だと思います。

 

いちばんしんどいのは受験生本人であるのは間違いありませんが、それを見ている親のストレスもピークに達する時期ですよね。この時期に緊張感の欠けた様子を見てしまったりすると、「そんなことしてて大丈夫なの?」と、つい小言を言ってしまうこともあるのではないでしょうか。

 

それだけ子どものことを心配しているし、せっかくなら子どもの努力が報われてほしいと思うゆえの言動です。でも、小言を言われてやる気になるひとってあんまりいないですよね。それは親だってわかっているはずなのに、どうしても言わずにはいられない心境になる。

 

実は先週11月11日に『勇者たちの中学受験』(大和書房)という本を出しまして、そこでもこの時期のご家庭の緊張感を描いているんですが、私が聞く限り、口を出してうまくいくケースはあんまりないんですよね。それでも親はなぜ我慢ができなくなってしまうのか。

 

子どもの中に2つの人格を見ているのではないかと思うんです。

 

1つめの人格は、かわいくてたまらなくて、その努力が報われてほしいと思っている、笑顔で受験を終わってほしいと思っている、わが子です。この子に幸せになってほしいと願う、その対象であるわが子です。親の中にある、理想のわが子といってもいいかもしれません。

 

でも、ときどきもう1つの人格が表れます。理想のわが子であることを邪魔する、あるいはわが子を堕落への道へと誘惑する、悪友みたいな人格です。その人格も、もちろん子どもの中にいるものです。

 

実際、誰だって、自分の中に、正しいことを指し示す自分と、まるで悪友のように「そんなめんどくさいことやめちゃえよ」「いまじゃなくてもいいじゃん」と誘惑する自分の両方が共存していると思います。そしてときどきその2人が自分の中でケンカをしますよね。

 

要するに、親がわが子に小言を言っちゃうのって、わが子の中で、悪友のような人格が強くなっているときに、そいつを撃退したくなっちゃっているってことなんですよね。理想のわが子、かわいいわが子、幸せになってほしいほうのわが子を守るためですよね。

 

そりゃそうですよね。受験生なのに、「勉強なんてやめて、いっしょにゲームしようぜ」なんて誘ってくるお友達がいたら、「うちの子のじゃましないで!」って退けますよね。それをやってるってことなんですよね。

 

でも、実際には2つの人格ともわが子なので、親としては悪友のほうを撃退したいだけでも、ついきつい言葉を浴びせてしまったりすると、かわいいわが子のほうまで傷ついちゃうことがあるんだと思うんです。

 

かわいいわが子も、悪友の誘惑に必死で抗おうとしているんですよね。だとしたら、悪友を追い払うために罵詈雑言を浴びせるのではなくて、必死にそれに抗おうとしているかわいいわが子のほうを応援するような声がけをしたほうがいいですよね。

 

ちょっと疲れが溜まって悪友に抗うエネルギーが低下しているなら、「ちょっと疲れているんじゃない? 大丈夫?」とか「たまには勉強のことを忘れて、リフレッシュでもすれば?」と、かわいいわが子のほうをエンパワーする方法を考えてみるといいと思います。

 

まあ、悪友のほうの人格までパワーを受け取ってしまう可能性もあるので、うまくいくかどうかはわかりませんが、ぐちゃぐちゃと小言を言うよりはましだと思います。受験生の親として焦りや不安が高まってしまったときには、ちょっとした方便として試してみてほしいと思います。

 

※2022年11月17日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。