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10月27日に文部科学省が「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果を発表しました。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

 

暴力行為、いじめ、出席停止、不登校、中途退学、自殺、教育相談などについての実態把握を行い、児童生徒の問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応に、また、不登校児童生徒への適切な支援につなげていく目的で毎年行われている調査です。

 

それによると、小中学校における不登校の数は24万4940人で、前年度の19万6127人から、24.9%も一気に増加していることがわかりました。

 

●どういう理由が考えられるのか?

 

コロナ禍で、お昼時間は黙食だし、いろんな行事が中止になったりもしているほか、感染拡大防止のためにどうしても細かいところで子どもの自由な行動を管理せざるを得ない状況が増えており、学校に行きたいというモチベーションを盛り上げにくい状況があることは間違いないと思います。

 

一方で、経年の変化を見てみると、もともと2016年くらいから急激な増加傾向が始まっています。実は2016年12月に「教育機会確保法」という法律が成立し、翌年の2月14日から施行されています。

 

この法律は、不登校の児童生徒に対して、学校を休むことの必要性をはっきりと打ち出し、学校外で学ぶことの重要性も認めました。不登校の児童生徒への支援の目的を、学校への復帰ではなく、社会的な自立に置きました。要するに、学校に戻ることが唯一の解決ではないという方針を打ち出したんですね。

 

それで、学校側の対応も柔軟になって、学校に行くことにストレスを感じる児童生徒が、学校を休みやすくなったという面はあるんです。

 

今回、大幅に不登校の生徒児童が増えたということは、それまで学校を休みたくても休みにくかった子どもたち、つまり潜在的な不登校児童生徒がそれだけたくさんいたということでもあると思います。だとすると、来年もこの増加傾向は続くかもしれません。

 

私の身の回りでも「実はうちも……」と聞くケースが、このところものすごく増えている印象があります。

 

●学校に戻ることが唯一の解決ではないとして、ほかにどうやって学べばいいのか?

 

今年7月に出た拙著『不登校でも学べる』では、不登校の子どもたちがすごす居場所、塾、フリースクール、オンラインの学びの場、ホームスクーリングなどを紹介しました。最近ではネットやSNSが利用しやすいので、そうやって不登校の子ども同士がつながるケースもあるようです。

 

ただ、そういった情報が誰でも簡単に手に入る状況ではまだまだありませんし、いろいろな学びがあったとしても、それをどのように活用していいのかもわからない場合も多いと思います。そこをサポートする公のあるいは民間の施設の整備も今後ますます必要とされるでしょう。

 

さらには、本来であれば無料で受けられるはずの義務教育を自前でカスタマイズしなければいけないということなので、お金もかかります。子どもが家にいる時間が増えますから、親が仕事をセーブしなければいけないこともあり、二重の意味で経済的な負担が増すことも大きな問題です。そういった家庭への経済的支援の制度も急いで整える必要があります。

 

全国津々浦々どこに行っても同質の教育を受けられるのが日本の教育システムの優れた点ではあるのですが、半面画一的にやりやすいのが弱点です。多様な学びが認められる社会に変えていくためには、まず、大人たちがもっている学校観や教育観をいったん疑ってみる必要があるかもしれません。

 

※2022年11月3日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。