マサリク大学のシミュレーションセンターでの授業

 

先週まで一週間、チェコに行ってきました。

チェコのいくつかの国立大学の医学部には、チェコの学生向けのチェコ語で医学を学ぶコースのほかに、英語で医学を学べるインターナショナルコースがあります。

 

そこには世界中から医学を学びたい学生が集まってきますが、日本からも多くの学生が参加しています。

彼らがどんな環境でどんなふうに医学を学んでいるのかを視察するのが、今回の出張の目的でした。

 

最初に訪れたのはチェコ第二の都市、ブルノという町にある、マサリク大学という大学です。

モダンな校舎が印象的で、最新鋭の機器を集めたシミュレーションセンターという施設がありました。

ダミーのICUや救急処置室やヘリポートまであって、本物の病院そっくりの施設の中で、実践的な研修が行えます。

純粋に教育用のシミュレーションセンターとしてはヨーロッパでも最高水準の設備だそうです。

 

首都のプラハは、神聖ローマ帝国の首都として栄えた町です。

そこにあるカレル大学は、なんと14世紀につくられた大学です。

日本でいえば東大のような存在。

その医学部でも、多くの日本人学生が学んでいました。

 

●どうやったら入学できるんですか?

 

日本の高校を卒業見込みであれば、受験資格があります。

日本に入学をサポートしてくれる事務局があり、そこで受験が可能です。

書類審査や面接もありますが、筆記試験は英語と理科だけで、数学力が問われないのが、日本の医学部との大きな違いです。

 

●英語で勉強するのは大変じゃないですか?

 

はい。慣れるまでは大変だと思います。

不安な人のためには、1年間の予備コースというのもあります。

医学部に入学する前に、チェコで英語や理科などの基礎科目を学べます。

ただ、英語自体にはすぐに慣れるようです。

頻繁にテストがあり、そのための勉強が本当に大変なんだとか。

1年生でもテスト前は1日の睡眠時間が2−3時間だったり、6年生でも週末は1日7−8時間勉強していたりするようです。

留年してしまう学生も多いですし、退学になってしまうケースも多いようです。

入口は入りやすいけれど、入ってからが大変だということです。

 

●チェコで医学を学んで、日本で医師になれるのですか?

 

チェコで6年間学んですべての分野を修了すると、EUでの医師免許がもらえます。

EU内であれば、それで医師として仕事ができます。

でも日本で医師として仕事をするためには、日本の国家試験を受ける必要があります。

日本に帰国してから国家試験の対策をして、合格すれば日本で医師になれます。

 

●費用はどれくらい?

 

大学によって、授業料は年間150万円から230万円程度。生活費を合わせて、年間250万円から350万円くらいが目安のようです。

日本の私大の医学部の授業料が6年間で2000万円から3000万円と言われていますから、それととんとんか、それよりは安くすむことが多いようです。

 

●どんなひとがわざわざチェコで医学を学ぶんですか?

 

日本の医学部に挑戦したけれど入れなかったという学生さんはやっぱり多いです。

でも現地で猛勉強して、世界中から集まってきた学生たちと切磋琢磨する中で、ここに来て良かったと思う学生さんも多いようです。

また、もともと帰国子女だったり留学経験がある高校生が、海外志向と医師になりたいという両方の願いを同時に叶えるために選択するケースもあるようです。

「将来は日本に留まらず活躍したいし、英語で医学を学んでおけば、医学の最新情報を常にアップデートしやすいじゃないですか」と言っていた学生さんが印象的でした。

 

正直、勉強は相当ハードなようなので、簡単に入れる医学部みたいなとらえかたをしたら大やけどすると思います。

でも、これからのグローバルな社会において、本気で医師への道を目指すのなら、積極的に選択する価値のある道だなと思いました。

 

※※2022年10月20日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。