8月17日に新刊『不登校でも学べる 学校に行きたくないと言えたとき』(集英社新書)が発売になります。
すでに不登校の状態になっている親子には、こんな居場所や学びの場があるよと提案したい。
まだ不登校ではないけれど一抹の不安を感じている親子には、仮に「学校」に行かなくてもいきなり詰んだりはしないと伝えたい。
そうすれば、少しでも心に余裕ができるんじゃないかと思います。
そんな思いで、フリースクールから不登校専門塾、不登校特例校、教育支援センター、通信制高校まで徹底取材しています。
なんと432ページ!
でもガイドブックではありません。
どういう性格の場所が、実際にはどんな雰囲気で、どんな心意気をもったひとたちによって運営されているのかをできるだけ丁寧に描こうと思って書きました。
彼らの心意気自体が、わが子の不登校に不安を感じている親にとっての、いたわりとねぎらいと励ましになるのではないかと思います。
【目次】
序章 学校に行きたくないと言えたとき
第1章 不登校と社会の変化
第2章 居場所・塾・ホームスクール
第3章 学校から半歩離れる教育支援
第4章 不登校経験者が通う学校
第5章 フレキシブルに通える通信制高校
第6章 モザイク模様の学び環境へ
終章 親子で取り戻すそれぞれの自分
●不登校特例校―星槎中学高等学校、西濃学園中学校・高等学校、岐阜県立草潤中学校
●フリースクール─星槎ジュニアスクール、スマイルファクトリー、広島県スペシャルサポートルーム
●私学の生徒向け不登校支援センター─神奈川県私学修学支援センター
●オンライン不登校支援プログラム─カタリバroom-K
●通信制高校―星槎国際高等学校、目黒日本大学高等学校通信制課程
●不登校経験者が集う普通科高校―北星学園余市高等学校
●ホームスクール─ホームスクール&エデュケーション家族会、日本ホームスクール支援協会
●不登校専門塾―ビーンズ
●平日昼間の居場所―いもいも 森の教室
など多数(順不同)
その「おわりに」を、いきなり公開します。
おわりに
雑誌のインタビューで、子育てや教育に良い町をどうやって選んだらいいかという質問を受けたことがあります。
子育てしやすい町ランキングの類いでは、自治体による子育て支援政策や教育サービスの充実などの観点が挙げられることが多いはずですが、私は、次のような観点を挙げました。
「実際に候補の町を訪れることができるのなら、そこにある公園で遊ぶ子どもたちの様子を見てみてください。生き生きと大きな声を出して賑やかに遊んでいるか。それが許されているということは、子どもたちが子どもらしくあることが認められている地域であるということです」
「またその近くに駄菓子屋さんみたいな子どものたまり場があったら最高です。駄菓子屋さんは子どもたちの社交場であり、お小遣いを実際に使ってみるなど、直接社会とのかかわりを経験する入口です。そういう場所が守られている地域では、子どもたちが健やかに育つために何が必要なのかを住民たちがよく理解しており、それがその地域の文化になっていると推測できます」
若いころはいつか学校の先生になりたいと思っていました。規格外の学校をつくりたいと妄想していたこともあります。でもいまは、駄菓子屋のおじさんになることが私の目標です。
映画「万引き家族」で柄本明さんが演じた駄菓子屋のおじさんが、最高にカッコ良くてシビれたんですよね。あれって平成のあいだに失われた大切なものの一つなんだと思います。それになんとなく、学校の先生よりも、駄菓子屋のおじさんのほうが私のキャラに合っているような気がするし。
いまのこの仕事を細々と続けつつ、学校が終わるくらいの時間になったら店に出て、放課後の子どもたちの小さな社会を眺めていたい。そんなに遠くない未来の話として、このところよく、そんなことを考えていました。
でも、この本を書き終えて、ちょっぴり心境の変化がありました。
〈やっぱり、お昼前から店を開けようかな〉
さすがに「出席扱い」にはならないと思いますけど。
二〇二二年七月 おおたとしまさ