「うちの子、やる気がないんです。どうしたらやる気が出ますか?」と質問されることがよくあります。たぶん何の気なしに目の前にあるイライラを訴えているだけだとは思いますが、実はこれ、深くていい質問だと思います。

 

「うちの子やる気がないんです」と言う親御さんに、「じゃあお子さんは普段何しているんですか?」と聞いてみると、サッカーは一生懸命やるとか、ゲームは一生懸命やっていたりするんです。つまり、やる気はあるんです。ただ、それが勉強に向かっていないというだけなんですね。

 

はじめからやる気のない子どもなんていません。でも、親は、自分が望む方向に向かっているやる気しかやる気と認めないんですね。

 

せっかく子どもはやる気を発揮しているのに、「あんたはやる気がない」なんて言われたら、子どものやる気なんて、本当に消えてなくなってしまいます。

 

そこで「どうしたらやる気が出ますか?」という質問の真意を「いつになったら自ら勉強をやり始めるんでしょうか」だととらえ直します。その答えはシンプルに、「その子がやり始めるまでわかりません」です。

 

カタツムリが角を出すのを待つのと同じで、突いたりしないで、おとなしく待つしかないということです。

 

するとこんどは、「待っても待ってもやり始めないんですけど!」という訴えを聞きます。

 

でも、いや、それって、口で「勉強しなさい」と言っていないだけで、きっと体中から「いつ勉強し始めるの?」「早く勉強してよ!」というオーラがにじみ出ちゃってますよね。子どもからしてみたらめちゃめちゃプレッシャーを感じるわけで、実質的にぜんぜん待ってもらえていないわけです。

 

「やりなさい」という圧を受けながら「自ら始める」ことは原理的に不可能です。それなのに、そういう状況を親が率先して構築してしまっているんですね。それではやる気の芽なんて芽生えません。

 

ならどうするか。

 

まずは、勉強以外のことでもいいので、いま発揮されているやる気を認めてあげることです。そうすれば、そのやる気がいつか勉強にスライドすることは十分にあり得ます。

 

さらに、「待つ」ということの意味を考え直してほしいと思います。待つというのは、早くその状態になることを望むことではありません。なんならずっといまのままでもいいと腹をくくることです。いまのありのままの子どもをそのまままるごと受け入れるということです。

 

「ありのままの自分でいいんだ」という深い安心感が、子どものやる気の根っこになります。やる気の芽はまだ芽生えていなくても、根っこをしっかり伸ばしておけばいいんです。

 

早くやる気を出してくれないかなと親が焦るのは、よその子と比較してしまっているからです。それは子どものやる気を最も削ぐことです。

 

※2022年6月2日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。