東日本大震災のときに、テレビで連日のように津波の映像が流されたり、原子力発電所が水蒸気爆発を起こす様子が放映されたりするのを見て、子どもが不安がるということがありました。

 

当時、震災の直後、東京でも知り合いのの子どもの幼稚園生が、「地震が来たらどうしよう」「津波が来たらどうしよう」って不安がっているという話を聞きました。

 

このような刺激から、子どもたちをどうやって守るかが、当時、子育て世代の間では大きな関心事になりました。私も子育て雑誌の企画で、こういうときに親がすべきことみたいな記事を書いた記憶があります。

 

いま、ウクライナでの戦争の様子がテレビで頻繁に流されています。これについても感受性の高い子ほど、恐怖や不安を感じるんだと思います。

 

こういう、メディアから流れてくる、子どもにとってはインパクトの強い情報から子どもをどう守るかということを、今回は、元心理カウンセラーとしてお話ししてみたいと思います。

 

1つには、ショッキングな映像を見せないようにするという方法も考えられるわけですが、メディアから流れてくる情報に近くにいる大人がどういうキャプションを付けるかが大事というか、受け止め方を補助してあげることが大事というか、子どもの情報処理を手伝ってあげるみたいな姿勢でいればいいと思うんですね。

 

まず近くにいる大人が動揺していたら、子どもは間違いなく不安になりますよね。

 

大人だって不安なわけですが、メディアから衝撃的な映像が流れてきたり、衝撃的な報道があったりした場合には、特に自分の気持ちを客観視することのできない小さなお子さんが近くにいる場合には、素のリアクションをしないように、ちょっと気をつけたほうがいいかもしれません。冷静に受け止める姿を見せてあげることが大切です。

 

それでも子どもが不安がっているよう場合なんですが、安心させてあげようと思って、いきなり「大丈夫だよ」みたいに言うのはちょっと危険です。その子の素直な感情を否定することになってしまうからです。

 

自分の感情を否定された子どもは、自分の感情を表現することをやめてしまい、その感情が心の奥底に隠されてしまいます。それを専門用語では「抑圧」と言います。すると、その感情はいつまでも心の奥底で温存されてしまいます。

 

それに、実際、いつ大地震が起こるかもわからないわけだし、津波が来るかもしれないし、戦争だって、いつ巻き込まれるかもわからないのが現実です。「大丈夫だから」といくら言葉でいっても、言っている大人自身がその言葉を信じていませんよね。それは子どもにも伝わって、なおさら不安になってしまいます。

 

いきなり「大丈夫だよ」と言うのではなく、言葉にはならない子どもの気持ちを、子どものペースではき出させてあげましょう。「ああ、心配なんだね」「怖いんだね」「悲しいんだね」などと、その子の気持ちをただ、理解してあげる。否定も肯定もしないで、「そうか、そうか」って聞いてあげるだけでいい。

 

肩や手に手を添えながら話を聞くにもいいですし、ひざに載せて話すのもいいですね。不安が強いようなら、ぎゅーっと抱きしめてあげることも有効だと思います。言葉じゃなくて、スキンシップを通して、絶対的な安心感を感じてもらうようにしましょう。必要なら、それを何度でもやってあげる。

 

そうするなかで、自然災害とか戦争とかあるいは親しいひとの死だとか、現実に起こりえる恐怖に対する不安に向かい合う強い心が徐々に育まれていくわけですよね。人間の心は、言語で瞬時にプログラミングされるわけではないんです。

 

そうやって少しずつショックから回復していくものなので、焦りは禁物です。むしろいつまででも不安でいていいんだよというくらいの気持ちで親が構えていてくれたほうが、子どもは安心できるということを覚えておくといいでしょう。

 

※2022年3月10日にFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。