マナゾーさんがご結婚されたということで、新婚夫婦の心得みたいなことをちょっとお話ししたいと思います。

 

そこで、余計なお世話であることを百も承知でマナゾーさんにうかがいますが、結婚されてから夫婦喧嘩とまではいかなくてもちょっとした意見の対立なんて、ご経験されました?

 

いざ結婚すると、やっぱりそれまでの恋愛関係とは相手との距離感がちょっと変わったのを感じると思います。これからずっといっしょにいるんだと誓い合ったわけで、それって結構人間の無意識にも影響を与えるんですね。

 

たとえばタンスのどこに靴下をしまうのがわかりやすいかとか、洗ったお箸を立てかけておくときには先っぽを下にするか上にするかとか、洗濯に使う洗剤は粉末がいいか液体がいいかだとか、いままでだったらスルーしていたちょっとした違和感が、これからずーっといっしょにいると思うからこそ大きく感じられて、一応自分の考えを伝えなきゃと思ったりします。

 

そこでお互いの常識がぶつかり合って、どちらかにちょっと心お余裕がなかったりするとちょっとした喧嘩に発展することがあります。で、一度そういうことがあると、似たようなシーンで「また!?」って感じになって、そのことにイラッとして、お互いにストレスが溜まったりします。意見がぶつかること自体が悪いことだと思っていると、ストレスは余計に大きくなります。

 

意見が対立するのは悪いことじゃないんです。そうやって2人の生活の秩序を徐々につくっていく段階ですから、最初は意見が対立して当然です。むしろそこでごまかしてしまうと、あとあとに遺恨を残すことになります。必要な意見の対立は避けないほうがいいんです。

 

まあ単なる意見の対立を夫婦喧嘩と呼ぶ必要はないのですが、ここではわかりやすくそれも含めて夫婦喧嘩と呼びますね。

 

必要な夫婦喧嘩を夫婦の秩序づくりのプロセスとして活用する第一の前提は、「夫婦喧嘩は悪いこと」という思い込みを捨てることです。私も結婚初期にはたくさん夫婦喧嘩をしましたから、いまとなってはあんまり喧嘩はしませんが、それでもときどき意見の対立があると、ちょっとイラッとするのと同時に「あ、これを乗り越えればまた夫婦関係が一層深まるぞ」というわくわく感も感じます。

 

実際、新しい意見の対立を乗り越えると、逃げずにきちんと自分の考えを伝えてくれて向き合ってくれたパートナーへの愛おしさが一層深く感じられるようになるものです。

 

「相手を信頼する」というのは、「こんなこと言ったら相手が傷つくんじゃないか」とか「怒っちゃうんじゃないか」とか気を遣うことではなく、「あのひとなら私の考えを受け止めてくれる」「あのひとはこれくらいのことで逃げたりしない」と信じることです。

 

「傷ついちゃうんじゃないか」「怒っちゃうんじゃないか」と気遣うことは、一見、思いやりですが、実は、それくらいのことで傷ついてしまったり怒ってしまったりする未熟なひとなんだと見くびっていることになります。これを心理学では相手に対する「ディスカウント(過小評価」)」と呼びます。

 

人間誰だって疲れているときや心に余裕がないときもありますから、もちろんいつでも体当たりがいいわけではありませんから、ときにはそういう気遣いも必要でしょうけれど、気遣いばかりしている関係性はお互いのためになりません。関係性が成長しないんですね。

 

逆に言えば、必要以上に傷つけないようなうまい言い方で結構ショックなことをずばっと言ってくれる相手というのは、自分のことを信頼してくれているということなんですね。これは仕事関係でも言えることだと思いますけど。

 

というわけで、おおたとしまさの上手な夫婦喧嘩の心得その1は、「喧嘩は悪いことじゃない」でした。次回の放送は年明けになると思いますが、そのときには、夫婦喧嘩が勃発してからの心得についてお話ししたいと思います。

 

年末年始は夫婦喧嘩が勃発しやすい時期なので、次回までにぜひリアルプチ夫婦喧嘩を経験してもらうことを、マナゾーさんへの年越しの宿題にして、今年のこのコーナーを締めくくりたいと思います。1年間ありがとうございました。

 

 

※2021年12月16日のFMラジオJFN系列「OH! HPPY MORNING」でお話しした内容です。