2月19日に新刊『パパのトリセツ2.0』がディスカヴァー・トゥエンティワン社から刊行されます。2012年に刊行された『パパのトリセツ』の改訂新版です。本書で紹介する方法は、心理学の「交流分析」や「アサーション」といった理論の応用で、 家庭内に限らず、世間一般の人間関係にも十分使えるものばかりです。 世界的名著D・カーネギーの『人を動かす』の子育て夫婦バージョンといってもいいでしょう。 刊行を記念して、ここに「はじめに」を転載します。

 

 

はじめに

 

「夫婦で協力して子育てしようって話だったはずなのに、ちょっとイメージと違った」みたいなかすかなストレスを感じているママや、そうなることを未然に防ぎたいママたちにだまされたと思って試してみてほしい方便をまとめたものが本書です。

 

大事なことなのでもう一度言います。本書はまるごと1冊方便です。

 

「方便」を辞書で調べると「目的のために利用する便宜の手段」とか「真理に誘い入れるために仮に設けた教え」などという説明が出てきます。もともとは、ままならない現実と折り合いをつけるための知恵というような意味を含む仏教用語です。「うそも方便」などと使いますよね。

 

本来ならわざわざ妻がこんな方便を使わなくとも、夫が当たり前のように子育てするのが筋です。でも現実がそうはなっていないときに、しかもその現実を真正面から変える時間も気力もないときに、「あえて現実のとらえ方をちょっと変えてみたら?」という提案です。

 

ものの見方を意識的に変えてみることを、心理学では「リフレーミング」といいます。本書の内容の多くも、心理カウンセラーが頻繁に使うテクニックを応用したものです。(私はもともと心理カウンセラーの資格をもっていて、「パパの悩み相談横丁」というオンラインカウンセリングルームを10年ほど運営していましたが、うっかり資格を失効してしまい、今はその活動はしていません。)

 

本書に書いてあることは、要するに、夫を全自動子育てロボットと見立てて、その機能を存分に引き出す方法です。ほら、どんなに高性能な全自動洗濯機やルンバのような賢い掃除機を買っても、電源ボタンを押すだけでは十分にその機能を使いこなすことはできないじゃないですか。

 

「人間をロボットに見立てるなんてなにごとか!」というお叱りも飛んできそうですが、だから方便なんですって。

 

人前で話して緊張しそうなときに、「観客をみんなカボチャだと思えばいい」とか、昔からいうじゃないですか。それと同じで、うまくいかない現実があるときに、まず現実のとらえ方を変えることで、現実そのものを変えていく知恵です。

 

とはいえ、パラパラめくってみて、「なんでこんなまどろっこしいことしなくちゃいけないの!」と、かえってイライラが募るようなら、どうか本書を閉じてください。方便を使う余裕すらないときもありますし、そもそも「ふざけんな!お前もちゃんと子育てしろ!」とストレートに伝えるほうが伝わる夫もいるはずですし、そのほうが本来は健全ですから。

 

でももし、「あ、これは新しい視点! こういうアプローチのほうがうちの夫には響くかも」と思えるようなら、できる範囲で方便を試してみてください。

 

でもやはり大事なことなので、もう一度言います。本書はまるごと1冊方便です。

 

方便がうまくいったからといって、それが現実だとは決して思わないでください。夫はロボットではありません。母親も父親も、親として対等なのが当たり前です。妻が夫をいつまでも掌の上で転がすようなアンバランスな関係は長続きしません。本書はあくまでも現実を変えるきっかけにすぎません。

 

本書を利用して日々のストレスをやり過ごしながら、一方で、本当に対等な夫婦関係は、それはそれで時間をかけて構築していってください。一朝一夕でできることではありませんが、少しずつでも、人生のパートナーとしての夫婦関係が成熟していくことはそれはそれで、子どもの成長と同じくらいうれしいことです。

 

みなさんの子育てライフが、今よりちょっぴり幸せでおだやかなものになりますように。

 

 

【目次】

第1章 パパの機能と特徴

第2章 パパスイッチの入れ方

第3章 機種タイプについて

第4章 アプリのインストール方法

第5章 故障かな?と思ったら

第6章 日ごろのお手入れ