2019年4月に開校した長野県佐久穂町にある私立大日向小学校

 

昨年6月に『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方』という本を出しました。その本で紹介している教育法の概要を1つずつ紹介していきたいと思っています。前回、前々回はシュタイナー教育とモンテッソーリ教育だったのですが、今回はイエナプラン教育です。

 

聞き慣れない名前かもしれませんが、2019年春には長野県に日本初となるイエナプランの私立小学校が誕生していますし、広島県福山市では公立のイエナプラン学校が開設される予定です。

 

ドイツで生まれてオランダで育ったというわりと数奇な運命をたどった教育法なのですが、時間がないのでここでは割愛します。詳しくは拙著『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方』をご覧ください。

 

押さえておきたいポイントは、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育がわりと具体的な子どもへの関わり方を明示しているのに対し、イエナプランは実は具体的な教育法というよりは教育理念そのものに近い概念だということです。目指すべき人間像、社会像、学校像をコンセプトとして指し示し、具体的にそのために何をするのかは教育者に委ねられる部分が多い。決められた教材などは存在しません。

 

特徴の1つはマルチエイジです。異学年が同じ教室で学ぶことを基本としています。彼らが過ごす教室のことをリビングルームと呼びます。そこでいっしょにすごす異学年の仲間のことをファミリーグループと呼びます。担任に相当する先生のことをグループリーダーと呼びます。教室の椅子と机は黒板を向いて並んでいるのではなく、いわゆる給食の時間のような向かい合わせの形式が基本です。

 

時間割も日本の一般的な学校とはだいぶ違います。先生が黒板でみんなに説明する一斉授業のスタイルではなく、ブロックアワーと呼ばれる時間に、子どもたちはそれぞれ異なる自分の課題に取り組みます。同じ時間に計算問題に取り組む子どももいれば漢字練習に取り組む子どももいます。それぞれの課題は子どもとグループリーダーが毎週相談して決めます。新しい単元に進むときには該当する子どもだけを集めて、15分程度のミニ授業を行います。

 

ブロックアワーはいわゆる自立学習であるのに対して、みんなで対話したり探究活動を行ったりする時間をワールドオリエンテーションと呼びます。日本の学習指導要領でいえば、「総合的な学習の時間」みたいなものですが、それがイエナプランの学校では、学校活動の中心だと認識されています。

 

いま新型コロナウィルス感染拡大防止策の一環として日本でも多くの学校が休校しており、子どもたちの学習をどのように進めるかが大きな問題となっています。クラスの子どもたちみんなが同じ量と内容の課題を与えられて、「おうちでしっかりやっておいてください」と丸投げされている状態です。

 

でももしイエナプランのようなスタイルだったら、いつものようにブロックアワーでそれぞれに取り組む課題を毎週個別に決めることができて、ワールドオリエンテーションの対話のみをオンライン会議システムを利用することで実現することもできたはずです。

 

もともと学校や先生に大きな裁量があり、臨機応変に対応できるシステムになっていれば、こういう緊急事態時にも比較的スムーズに対応できたはずです。これを機に日本も、全員一律の学習に子どもを合わせる教育ではなく、子どもに合った学習を提供する発想に転換するのがいいのではないかと私は思います。

 

※2020年4月23日放送のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。