海士町の絶景

 

7月にちょっと変わった2つの島を旅しました。1つは島根県の隠岐郡海士町(あまちょう)。承久の乱のあと、後鳥羽上皇が流されたところです。もう1つはフィリピンのセブ島の沖にあるカオガハン島という小さな島です。

 

高校魅力化で地域も活性化

 

海士町のほうから紹介しましょう。島根県の沖合60kmに浮かぶ隠岐諸島のひとつ「中ノ島」が一島まるごと「海士町」です。米子から船で約3時間。周囲は約90km。人口は約2300人。

 

島前高校からの眺め

 

過疎の進む島のひとつで、いわゆる地方再生のプロジェクトを積極的に推し進めてきました。キャッチフレーズは「ないものはない」。それでも、和牛の「隠岐牛」や牡蠣の「春香(はるか)」のブランド化などの特産品開発のほか、教育にも力を入れました。※海士町オフィシャルサイト

 

島唯一の高校「島前(どうぜん)高校」はおよそ10年前、廃校の危機にありました。学校や地域の活気が失われると、地域から子どもが流出し、後継者や未来の担い手が不足して、待ちの文化や産業が廃れるという悪循環が起こります。それを断ち切るために、島をあげて高校魅力化プロジェクトを推し進めました。

 

「アクティブ・ラーニング」などという言葉が流行り出す前から探求的な授業をいち早く取り入れると同時に学校の近くに公営の塾を創設し基礎学力の定着を図りました。いまでは「島留学」という形で全国から生徒が集まる人気の高校となりました。それとともに、島全体が活気づきました。

 

教育に力を入れることは、まさに未来を明るくすることなのです。

 

 

 

 

何もないけど豊かな島

 

カオガハン島は、セブ島の玄関口「マクタン国際空港」があるマクタン島からボートで約1時間のところに浮かぶ小さな島。面積はちょうど東京ドーム1個分くらい。歩いても20分くらいで一周できてしまいます。そこに約700人の島民が住んでいます。※カオガハン島オフィシャルサイト

 

珊瑚礁の上の島

 

実はこの島のオーナーは日本人の崎山克彦さん。この島の環境と島民たちの素朴な暮らしに魅せられ、約25年前に島を買ってしまったのです。

 

もちろん水道なんてありません。雨水を貯めて大事に使います。電気は自家発電。1日のなかで時間を決めて最小限使用するだけです。海の恵みを必要な分だけとり、家畜を育てながら暮らします。この島の子供たちは15歳までには自分で家を建て船をつくる方法を身につけてしまいます。生きる力の塊みたいなひとたちです。

 

崎山さんが島を買って最初にしたことは、医療と教育の整備でした。島に小学校をつくりました。

 

島の小学校

 

かつてはほとんどお金の要らない生活が営まれていましたが、いまでは現金が必要になってきています。それでもできるだけ島民の生活を変えないように、小さな宿泊施設をつくったり、「カオガハンキルト」の制作を始めたりという方法をとっています。

 

水道もトイレもないロッジが4棟

 

 

教育に力を入れれば未来が輝く

 

いずれの島にも共通するのは、決して資源に恵まれているわけではないけれど、島の環境と昔からの暮らしを最大限大事にしつつ、次世代の教育に力を入れたことです。この10年で海士町の島前高校の生徒数は倍増し、島の出生数は125%上昇しました。カオガハン島では、医療や教育環境が安定したため、この25年間で人口は倍増しました。島の人口の半分以上が子どもです。

 

島国日本の閉塞感を打破するヒントがたくさんあるような気がします。かといって頭でっかちになる必要はありません。頭のなかをからっぽにして、島ののんびりした時間に身を任せれば、自ずと何かを感じることができるのではないでしょうか。

 

ちょっとユニークな2つの島を紹介しました。夏休みの旅行先にいかがでしょう。いまから予約が取れるのかよくわかりませんが。

 

※2019年8月1日放送のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」で話した内容の書き起こしです。