いよいよGWの10連休が始まります。どこに行くのも混んでそうで、返って身動きがとれないというご家族も多いのではないでしょうか。

 

たまには家の中で家族でゆっくり語らうのもいいことだと思いますが、接触する時間が増えればこそ摩擦も増えます。連休中には夫婦喧嘩のリスクが高まるというのもこれまた事実でしょう。いっしょにいる時間が長いから、喧嘩も増える。

 

でも、夫婦喧嘩は必ずしも悪いものではありません。これはこれで、夫婦にとってはときには必要なコミュニケーション手段です。普段なかなか伝えることのできない本音を言い合ういい機会なのです。

 

そこまでしてでも相手にわかってほしいという気持ちがあるからこそ、夫婦喧嘩が生じるわけです。ただの友達が相手ならそこまで期待しないので喧嘩にはなりません。

 

ただし、夫婦喧嘩もやり方を間違えるとただの罵り合いになってしまいます。そこで上手な夫婦喧嘩の方法を、たった2つのポイントにまとめて説明したいと思います。

 

ポイントの1つめは、勝とうとしないこと。

 

夫婦喧嘩の目的は、相手をボコボコにやっつけて、傷つけて、打ち負かすことではありません。夫婦喧嘩の目的は相互理解です。

 

相互理解とは、相手の意見に自分の考えを合わせることでもその逆でもありません。相手の意見を自分の意見と同じくらい大切だと認めることです。相手の考えに100%同意する必要はありません。

 

口論をしているとつい自分の考えのほうが相手の考えよりも優れていることを証明したくなってしまうのですが、相手を論破したところで待っているのは、一瞬の優越感と、その後何日続くかわからない冷たい家庭の空気です。

 

相手を打ち負かしたい誘惑に打ち勝ち、お互いの考えを認め合うことを夫婦喧嘩のゴールに設定しましょう。打ち負かさなければいけないのは「相手」ではなく、自分のなかにある「相手を打ち負かしたいと思う誘惑」です。

 

でも、それじゃあ結論が出ないじゃないかと思うかもしれません。それがポイントの2つめです。

 

ポイントの2つめは、下手にまとめないことです。

 

合理的に考えて結論の出せることであればそもそも夫婦喧嘩になっていません。お互いの価値観や判断基準などの前提が違うから、喧嘩になっているのです。そしてそのひとが長時間をかけて築き上げた前提を短時間で変えることはほとんど不可能です。

 

それなのに、相手の前提を覆してやろうとするから、夫婦喧嘩がエンドレスになるのです。下手にまとめようとするからまとまらないのです。両面テープをつけたメンコをひっくり返そうとしてムキになるような行為です。

 

ではどうするか。お互いに、自分の言いたいことを本音で言ったら、そこで夫婦喧嘩をおしまいにしちゃうのです。

 

堂々巡りの夫婦喧嘩をしていると、そのうち「さっきも言ったけど……」とか「それさっきも聞いた!」というセリフがだんだん増えてきます。これがサインです。もうお互いに相手に伝えるべき情報はすでに伝え終わっているのです。

 

ポイント1で述べたように、喧嘩の目的は相互理解です。言いたいことを伝えて、お互いにお互いの意見を自分の意見と同等に大切だと認めれば目的は達成です。お互いの意見を言い合ったところで、「あなたがそういう前提に基づいてそういう考えをしていることはわかった」とお互いに伝えて、喧嘩をおしまいにしましょう。

 

それじゃあ、やはり結論が出ないじゃないかと思うでしょう。それでいいのです。

 

相手の考えが自分の頭の中にインプットされました。自分の前提と、相手の前提の違いがわかったということです。その状態で時間が経つと、相手の前提も視野に入れた思考がほとんど無意識的に始まります。すると、いつの間にか、だんだんとお互いの意見が重なり合ってくるのです。

 

 

私はこれを「無意識の歩み寄り」と呼んでいます。激しく夫婦喧嘩してその場では喧嘩別れに終わったのに、その後その問題がいつの間にか問題ではなくなっているという経験をしたことのある夫婦は多いでしょう。それです。

 

夫婦喧嘩のその場で意見を無理やりまとめようとするよりも、時間をかけて「無意識の歩み寄り」に委ねたほうが、うまくまとまることが多いのです。

 

そうやって、たくさんのポイントでお互いの本音を伝え合って、無意識の力を借りて歩み寄って、夫婦はだんだんと「夫婦の形」をつくっていくのです。

 

※2019年4月25日にFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。