5月10日に新刊『いま、ここで輝く。〜超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』が全国の書店に並びます。そこで、GWに入る4月27日から5月10日の配本日まで、14日間連続で毎日、本のなかでも特に印象的なページを、チラ見せ的に少しずつこちらのブログで公開します。第2回目の本日は、「鍵メソッド」と呼ばれる、「イモニイ」オリジナルの幾何のユニークな教授法について!

 

 

 幾何の証明問題の答案には一定の「お作法」が求められる。理屈はわかってい

たのに証明の〝文章〟の書き方に不備があって減点されたという思い出があるひとも多いのではないだろうか。しかしイモニイの授業ではひとまずそこは置いておく。たとえば「下図のときAB∥CD(ABとCDは平行)を証明せよ」という問題(図1)の正解は、通常ならばこうなる。

 

△OABと△ODCにおいて、問題の条件より、OA=OD、OB=OC

対頂角は等しいから∠AOB=∠DOC

二辺とその夾角が等しいから、△OAB≡△ODC

よって∠OAB=∠ODC

2直線がほかの1直線と交わってできる錯角が等しいならば、2直線は平行なの

で、AB∥CD (Q.E.D.(証明終了))

 

 しかしイモニイの授業では、たった3文字で終わり。

 

正解は「(あ)(か)((う))」。

 

 どういうことか。

 (あ)(か)((う))は、それぞれ「公理」を表す。あは「対頂角の大きさは等しい」。かは「2つの三角形において二辺夾角相等で合同」。 うは、う「2直線が平行ならば、他の1直線が交わってできる錯角は等しい」に対してその逆「2直線が他の1直線と交わってできる錯角が等しいならば、2直線は平行である」を意味していて、結果、生徒たちは根拠として使っているのが、うなのか うなのか、(A→Bなのか、B→Aなのか)を明確に把握することから逃げられないしくみになっている。授業で使用する実際のプリントが図2だ。

 これらの「公理」を、イモニイの授業の中では「鍵」と呼ぶ。「この問題は、どの鍵とどの鍵をどんな順番で使えば開けられる?」などと使う。授業の初期段階では、「公理」によって「定理」を証明していく。授業の中で証明された「定理」には記号が与えられ、それが新たな「鍵」となる。そうやって証明のための「根拠の鍵束」を増やしていく。

 これらの記号は当然イモニイの授業だけで通用するルール。大学入試ではきちんと「お作法」通りの答案を書かなければ点はもらえない。しかし、イモニイはこういう。

 「本来、論理と答案作成は別物なんです。中学生のうちは答案の文章の完成度を上げることに時間をかけるよりも自分の考えの中で無意識に根拠とされているものや〝当たり前〟としているものをきちんと意識化する習慣を身に付けることのほうが大切。そうやって破綻のない論理を組み立てる経験を積み、その面白さを知ってほしい。そのためにあえて答案作成は後まわしにしています。もちろん根拠の意識化がある程度身に付いてから、正しい答案作成の作法も並行してしっかり教えます」

 

 

 

2019年5月10日発売!

『いま、ここで輝く。〜超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』

(おおたとしまさ著、エッセンシャル出版社刊)

全国の教員が、 カリスマ塾講師が、 「一目見たい!」と見学に訪れる授業では一体何が行なわれているのか? 独創的な授業で子供たちのやる気を引き出す名物先生の、笑いと涙のルポルタージュ!