5月10日に新刊『いま、ここで輝く。〜超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』が全国の書店に並びます。そこで、10連休のGWに突入した本日より5月10日の配本日まで、14日間連続で毎日、本のなかでも特に印象的なページを、チラ見せ的に少しずつこちらのブログで公開します。初回の本日は、「はじめに」をまるごと載っけます!

 

 

「はじめに」

 

 この本は、「イモニイ」こと井本陽久という一人の数学教師に密着したルポルタージュである。

「イモニイ」の名前を出せば、「ああ、聞いたことがある!」という教育関係者は多い。「あの先生はすごい」と、ほとんどクチコミで広がった。

 どんな人物なのか。

 飄々としていて天真爛漫。『窓際のトットちゃん』がそのまま大人になったよう(要するに黒柳徹子みたいということか?)。それでいて、宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』を地で行くような生き方をしている。そしてひとたび教育のことになると、求道者と呼ぶにふさわしい切実な覚悟を感じさせる。その意味では、教育界のイチローといっても過言ではない。

 何がすごいのか。

 東大合格者数では全国トップレベルの超進学校に在籍してはいるが、イモニイのチャームポイントは、大学受験指導にあるのではない。「21世紀のグローバル人材を育成する」なんてお題目はこれっぽっちも掲げていない。「イケメンすぎる数学教師」という評判も、残念ながら聞かない。ちなみに見た目は、俳優の阿部寛を4割引にしたくらい(褒めすぎか?)。

 それでもイモニイの授業には、全国の教員が見学に来る。学校の先生だけではない。カリスマ塾講師も、プロ家庭教師も、イモニイの授業を一目見ようとやってくる。そして一様に感激して帰っていく。イモニイの授業を受ける生徒たちの躍動感を目の当たりにすると、教育という営みそのものに、改めて大きな希望を感じられるようになるからだ。

 イモニイが、中学受験塾で小学生の保護者向けに講演を行えば、保護者たちの表情はにこやかに、会場の空気は温かくなる。「こんな先生がいる学校に子どもを通わせたい」と強く思う一方で、「どんな学校に行くことになってもわが子は最高」と思えるようになるのだ。

「30年近く教員をやって、たくさんの子どもたちを見てきましたが、どんな大学を出たなんてことはまったく重要じゃありません。これからの社会ではこんな力が必要だから、それを身に付けさせるための教育をしようなんてことすら、僕は考えていません」とイモニイは断言する。

 いま私たちは、めまぐるしい社会の変化につい目を奪われ、いつのまにか目が回ってしまい、目の前の子どもたちのことが見えなくなってしまってはいないだろうか。

 急激なグローバリゼーションだとか、情報技術の発展だとか、AI(人工知能)の進歩だとか、たしかに世の中は大きく変化している。だから教育も変化しなければいけないとも叫ばれている。

 しかしともすると、そのような言説をもとに繰り広げられる教育論議は、世の中の変化に、どうやって子どもたちを対応させるのかという話に陥りがちだ。まったくあべこべだ。

 子どもたちが未来をつくるのであって、当たりっこない未来予想図に合わせた子どもたちをつくるのではない。教育の役割は、子どもたちに未来をつくる力を携えさせることであり、未来に怯えさせることではない。

 とはいえ、教育が変わらなければいけないことも事実である。どう変えればいいのか。そのヒントが、イモニイの授業を受ける子どもたちの躍動感のなかにある。

 一人でも多くの先生がイモニイ流のコツをつかんでくれれば、大げさな教育改革なんてしなくても、日本の教育は意外にあっさりと変わるかもしれない。イモニイと同じ視点から子どもたちを見つめれば、多くの親の不安が解消し、偏差値に振り回されるようなことが減るかもしれない。

 そんな願いを込めて、本書を著す。現在の教育に対する痛烈な批判書であり、希望の書でもある。

 

 

 

YouTubeでは、おおたとしまさが「はじめに」を朗読する動画も公開中!

 

2019年5月10日発売!

『いま、ここで輝く。〜超進学校を飛び出したカリスマ教師「イモニイ」と奇跡の教室』

(おおたとしまさ著、エッセンシャル出版社刊)

全国の教員が、 カリスマ塾講師が、 「一目見たい!」と見学に訪れる授業では一体何が行なわれているのか? 独創的な授業で子供たちのやる気を引き出す名物先生の、笑いと涙のルポルタージュ!