私は大きな災害のニュースを見ると、他人事とは思えず、毎回身が縮まるような思いをします。なぜなら、私は地域の自治会の役員として防災部長をしており、もし自分がパニック状態の被災地にいたら、防災部長として何ができるのかと、毎回リアルに想像してしまうからです。

 

自治会の防災部長というのは普段は、年に何回か防災訓練を仕切ったり、賞味期限切れになった非常食を新しいものと入れ替えたりするだけなんですが、いつ、どんな災害が町を襲い、どんな被害が出て、どんな対応が必要になるのか、まったく想像が付かないんですね。

 

たとえば携帯電話が通じるのかそれさえ通じないのか、水道が使えるのか使えないのか、電気が使えるのか停電しているのか……。ケースバイケースです。大きな災害なら、自分や自分の家族だって被災するでしょう。そんななかで、正しく優先順位をつけて対処する自信が、自分にはありません。

 

2018年夏に広島を襲った豪雨で大きな被害を受けた地域で自治会役員をしていた(現在もおそらくしている)ひとに話を聞く機会がありました。

 

誰もが初めての経験ですからやはりトラブル続出もめごと多数だったそうです。行政が本格的に動き出すまで1週間くらいかかった気がするとのこと。避難指示が出ている間はボランティアの募集も表だっては行えなかったそうです。

 

でも、近所のおじいちゃんおばあちゃんに小さな子どもを預けて、若い人たちはみんな必死で土砂や流木の撤去作業に当たったそうです。

 

「そんな状況でリーダーシップがとれるかどうか、不安です」という私に、その方は、「あとから判断ミスといわれてもいいから、まずは決断することです。そうしないとその場にいる人たちが動けない。何かしなくちゃと思って人が集まってきているのに、トップが決断できないから作業が滞ったことがありました」というアドバイスをくれました。

 

災害を受けた状況下で、すべての情報を集めて精査して判断なんてできません。だから判断ミスするのは当たり前。ミスに気付いたらそのときに作戦を変更すればいいとのことでした。「なるほどな」と思いました。

 

そういうときに、みんなの力を合わせる土台となるのが、地域のひとたちの日ごろからのコミュニケーション。

 

自治会というと、ひまなおじいちゃんおばあちゃんたちが集まって、気長に会議をしていたり、ゴミ拾いしたり、紅葉を見に行ったり……と、のんきな集まりだなあと思われてしまうことも多いのですが、そうやって日ごろから、お互いの顔を見て、ときどき話をして、町ですれ違えば一言気の利いた挨拶ができる関係を築いておくことが、いざというときの地域の力になるはずなんですね。

 

また、たとえば電話が通じなくても、自治会館には区役所からの防災無線で情報が入ってくるようになっています。それをアナログな方法で地域住民に伝えることも必要になるはずです。いまどきSNSじゃなくて、回覧板を回すのも、リアルな掲示板なんてものを大切に使っているのも、いざってときにスマホもネットも使えないときに、地域に情報を提供するインフラとして、残しておかなければいけないからなんですね。

 

普段は何の役に立っているのかわからない自治会も、実はそういうときのための備えであるわけです。もちろんみんなボランティアです。そんなふうに理解いただいて、可能な範囲で自治会活動に顔を出していただけると、それだけで災害に強い地域の土台がつくれるのだということをしっておいてほしいと思います。

 

※2019年1月17日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」にてお話しした内容の書き起こしです。