12月7日に新刊『中学受験「必笑法」』が全国の書店に並びます。どんな本なのかを説明するために、「はじめに」をここに掲載します。

これから中学受験生活を始めるご家庭はもちろん、中学受験生活の真っ最中で不安や焦りと隣り合わせの毎日を過ごしているご家庭や、中学受験本番をまじかに控えたご家庭、そして自分たちが中学受験をしたことの意味を今一度考えてみたいご家庭の親御さんたちにぜひ読んでほしい1冊です。

 

 

はじめに

 

 首都圏模試センターによれば、2018年の首都圏における中学受験者総数は推定約4万5000人。それに対し、実際の中学入試の募集定員総数は4万8171人。受験者総数に対する募集定員総数の割合は107%。つまり理論上、どこかには必ず入れる。大学受験だけでなく、中学受験も全入時代なのです。

 それなのに中学受験に過酷なイメージがつきまとうのは、ごく一部の超難関校合格を目指す中学受験生たちが、文字通り1点2点を争うデッドヒートを繰り広げているシーンに注目が集まりやすいからです。

 中学受験の「合格」は、常に相対的なものです。自分が100がんばっても、ライバルが101がんばっていたら、負けてしまいます。一定の学力に達したことが認められれば全員が合格できる「○○検定」のようなテストとは、そこが違います。

 Aという中学受験塾が生徒たちに101やらせていていたら、Bという塾は102やらせるようになります。それでB塾が合格実績を伸ばすと、今度はA塾が103やらせるようになります。実際に複数の中学受験塾が過去数十年間にわたってこうして競い合ってきました。年を追うごとに、中学受験勉強は過当競争になっていくのです。

 この、際限なくレベルが上がっていく競争の中に、子供を放り込んでいいものかどうか、親は一度冷静に考える必要があります。過当競争からはあえて距離を置き、「わが子が100がんばればそれで良し」とする中学受験があってもいいはずです。それでも必ずどこかの学校には入れるのですから。

 勉強が得意な子たちが、ハイレベルな競争の中で切磋琢磨し、お互いを高め合うこと自体は素晴らしいことです。しかし子供の個性はさまざまです。もっといろいろな中学受験への取り組み姿勢があってもいいはずです。

 中学受験で最終的に第一志望に合格できる子供の割合は3割にも2割にも満たないといわれます。それを「勝ち負け」で表したらあまりに分が悪い戦いです。しかし人生に勝ち負けなんてないように、中学受験にだって勝ち負けなんてありません。終わったときに「やりきった」「成長できた」と思って家族で笑顔になれるなら、そして合格した学校に堂々と通えるなら、その中学受験は大成功だといえます。

 親がちょっとしたコツさえ知っていれば、そうやって中学受験を終えることは必ずできます。中学受験に「必勝法」はありませんが、「必笑法」ならあるのです。それが本書のタイトルに込めた意味です。要するに、他人と比べない中学受験、がんばりすぎない中学受験、子供を潰さない中学受験、親も成長できる中学受験のすすめです。

 第1章は中学受験に取り組む親の心構えの話です。第2章は塾選びおよび塾との付き合い方。第3章では学校選びや併願戦略について述べます。第4章は中学受験という機会を通した家族の成長に目を向けます。

 各章の終わりには、中学受験に取り組む親御さんからのリアルな相談に私が実際にお答えしたQ&Aを掲載します。ここには中学受験生を支えるご両親の夫婦間葛藤がたくさん登場するのが特徴的です。これも中学受験の現実です。

 中学受験とは、決して楽ではない家族のイベントですが、本書を読むことで、中学受験生の親御さんたちの不安や焦りやイライラが少なからず払拭されるはずです。中学受験期間中の家庭の雰囲気がだいぶ明るくなるはずです。中学受験という機会を通して、子供だけでなく、親も成長できるようになるはずです。

   偏差値を上げる方法は書いてありませんが、この本を読むことで、家族みんなが前向きな気持ちで中学受験に取り組めるようになり、結果的に偏差値も上がる可能性は十分にあるだろうと思います。

 中学受験に取り組むすべてのご家族が、満面の笑みで「12歳の春」を迎えられることを願いながら、本書を執筆します。