10月16日に新刊『受験と進学の新常識』(新潮新書)が発刊された。この本は、一言で言えば、私のここ数年の取材成果のおいしいところどりをした「おおたとしまさベストアルバム」みたいな本だ。

 

50冊以上の著作があるなかで、代表作を挙げるとすれば、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『名門校とは何か?』(朝日新書)、『中学受験という選択』(日経プレミア新書)あたりになるが、どれも特定のテーマにクローズアップしているので、万人向けの内容ではない。

 

今回の『受験と進学の新常識』は、これ1冊で、『塾歴社会』『名門校とは何か?』『地方公立名門校』『男子校という選択』『女子校という選択』『大学付属校という選択』『中学受験という選択』『進学塾という選択』『公立中高一貫校に合格させる塾は何を教えているのか』『なぜ、東大生の3人に1人は公文式なのか?』の10冊分の拙著の要素が一気に読めて、さらにこれまで週刊新潮に寄稿した、「進学校下剋上」や「インターナショナルスクール」や「大学入試改革」や「小中高受験の比較」や「海外大学進学」の各ネタも読めるようになっている。

 

「おおたとしまさの本を読んでみたいけれど、どれから読めばいいのか?」というひとや、「おおたとしまさに会うのだけど、どれか1冊くらい著書を読んでおくとしたらどの本を読んでおけばいいかな?」という律儀なひとには迷わず手に取っていただきたい1冊だ。ちなみに、面会するひとが私の本を1冊も読んでなくても、別に失礼だともなんとも思いませんけれど。

 

どんな本なのか、より具体的にわかるように、「はじめに」と「目次」をここに転載する。

 

 

はじめに

 

「どこの塾がいいの?」「どんな学校がおすすめ?」

 教育ジャーナリストとして書籍の執筆や雑誌への寄稿を生業にしていると、親しいひとからそうした漠然とした問いを投げかけられることがある。

 正直、困惑する。あまりにざっくりしていて答えようがないからだ。しかし先日、旧知の友人たちと話をしているときに合点した。

 2020年には大学入試改革が予定されている。教育のグローバル化やIT化も急速に進んでいる。“親世代の常識”はもはや役に立たない中で、そもそもどういう観点で何を相談していいのかすら見当が付かないのは無理もない。

 地方出身のある友人は「高校までは(自分と同じように)公立でいいでしょ」と思ってはいるのだが、同時に「中学受験は本当にしなくていいのかな?」という不安を拭えない。逆に東京で生まれ育っても、急速に価値観が多様化している首都圏の教育事情についていけず、戸惑う友人もいた。

 せっかく久しぶりに会ったというのに、昨今の受験事情について講話をしなければならないのでは骨が折れるので、その内容を一冊にまとめた。本書はそういう本である。

 今後、ざっくりした質問をされたら、まずは本書を差し出そうと思う。

序章から終章まで順番に読み進んでもらえれば、いま日本の受験と進学にどんな変化が起きていて、今度どうなっていくと考えられるのか、理解が深まるようになっている。

 あるいは、興味のある章から読んでもらっても構わない。最難関大学進学を盤石にするための教育を探しているのなら、第1章〜第4章を読んでほしい。中学受験をすべきか、高校受験ではダメなのか、疑問に思うなら、第5章〜第9章をめくってみてほしい。そもそも日本の偏差値主義的教育観に疑問を感じるなら、第10章〜第12章が参考になるだろう。

 教育・進学・受験というと、どうしても偏差値や学歴社会や東大至上主義的教育観を連想してしまうひとも多いと思うのだが、その現実を受け入れつつ、しかし一方でそうではない教育観・進学観・受験観を醸成できないかというのが常に私の問題意識であり、そのために取材・執筆を続けている。

 本書でも、理想と現実の狭間を行ったり来たりしながら、混迷を極める時代において、教育・進学・受験に関する何らかの道標を示すことができればと思う。

 

 

目次

 

序章 小・中・高のどこで受験すべきか

第1章 勢いがあるのはどんな高校か?

第2章 大学受験の塾・予備校選びの注意点

第3章 最難関大学への"王道"あり

第4章 9歳までの"最強"学習法

第5章 難関化する公立中高一貫校

第6章 中学入試が多様化している

第7章 私立大学付属校が人気になる理由

第8章 いま見直される男子校・女子校の教育

第9章 地方では公立高校が強い

第10章 受験エリートでなくても医師になる方法

第11章 海外大学受験の実際

第12章 インターナショナルスクールにご用心

終章 大学入試改革の行方