7月2日、名門国立大学であるお茶の水女子大学が、2020年度からトランスジェンダーの学生を受け入れる方針を明らかにした。

 

トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別と自分が認識している性別が異なるひとのこと。要するに、身体上は男性でも、自分のことを女性だと認識しているひとであれば、入学できるようにするということ。おそらく国内の女子大では初めてのケース。報道によれば、日本女子大や津田塾大など複数の女子大でも同様の検討を始めているとのこと。ただし、お茶の水女子大でも、入試の際の確認方法はまだ明らかにしていない。

 

いわゆるLGBTといわれるような性的マイノリティーの存在が、社会の中でも認知されるようになってきた。最近では勝間和代さんが、女性と恋愛関係にあり、同棲中であることをカミングアウトして話題になった。

 

勝間さんも、同性に恋愛感情を抱くことがあることをなかなかカミングアウトできなかったと、これまでの葛藤を語っている。子供のころから自分の性別に違和感を感じているひとは少なくないと考えられる。

 

今回のお茶の水女子大の決断は、学校における性別の捉え方に、一石を投じるものになるだろう。そしてその波紋は意外に早く、他の大学、高校、中学、小学校にまで影響を与えるのではないかと思う。

 

2017年に三重県で行われた調査によれば、アンケートに答えた県立高校の生徒のうち約1割が性的マイノリティであったとのこと。しかし現実問題として、学校という空間では、性別を意識しなければいけない場面も多い。

 

もっとも象徴的なのは制服だ。その点、すでにいくつかの公立中学校で、トランスジェンダーの生徒に配慮した制服を設定している。

 

今年4月に開校した千葉県柏市の柏の葉中学校では、性別にかかわらず、自由に制服を選べるようにした。制服のデザインも男女ともに違和感のないようにと配慮されている。東京都の世田谷区でも、すべての中学校で、性別にかかわらず、制服を自由に選択できるようにと検討を始めている。

 

トイレの問題もある。愛知県豊川市の市立一宮西部小学校では、2017年3月に児童用のトイレを改修し、男子用・女子用とは別に「みんなのトイレ」を設けた。廊下から前室を経て各トイレに入る設計で、どのトイレに入ったのか廊下からは見えないようにしている。

 

同じく愛知県西条市の市立丹原東中学校では、2016年11月、障害者用トイレに虹色のステッカーを貼り「思いやりトイレ」とした。性的マイノリティについて学習する中で、誰もが使いやすいトイレを設置しようと生徒が発案したとのこと。

 

性的マイノリティといってもいろいろなタイプがあり、ひとくくりで対応できるものではないが、このような配慮が広まることで、性的マイノリティだけでなく、社会的マイノリティや社会的弱者の声に耳を傾ける社会へと変化する意味合いが大きいと思う。

 

社会を変えるために、大挙したり大声を上げたりということもときには必要だが、むしろ、小さな声に耳を傾けることのできる社会こそを目指していきたいものだ。