ネット上で署名活動を行い、課題に注目を集め、社会全体に問題提起する方法が一般的になってきている。寒い中街頭に立って署名を求めたり、組織の中で帳簿を回して署名を集めたりしなくていい分、署名活動のハードルを下げて社会の意見を形として量として示しやすくなったといえる。
最近話題になった署名活動としてはたとえばこれ。大阪府の高校での頭髪を巡る校則の問題についても署名活動が行われている。
「なぜ地毛なのに黒く染めなきゃいけないの?」 生徒の心身を傷つけるブラック校則をなくして、いきいきと過ごせる学校にしてください。
以下、署名を呼びかけるサイトの文言から引用。
学校の外から見たら首を捻るような校則やルールが今も学校現場に残り、それを根拠に生徒に対して時に厳しすぎる指導がなされています。このことに私たちは心を痛めています。
髪の色や天然パーマの生徒に「地毛証明書」を提出させる、下着の色を指定した上それを学校でチェックする、水飲み禁止や日焼け止め禁止など生徒の健康や命に関わるようなものも見られました。
これきっかけに、校則を学校と生徒個人の問題として捉えるのではなく、広く社会全体で、今の時代にあった校則とは何か考える必要があるのではないでしょうか。
学校を舞台にした署名活動としてはこちらも。これも以前このコーナーでとりあげました。
働き方改革の文脈で言えば、こちらも。
単に長時間労働を是正しようというのではなく、具体的に1日8時間働けば普通に暮らせる社会を実現しようという訴え。政府が進めている「働き方改革」の不十分な点に社会の目を向ける役割も果たしているように思う。
一方で、いちいち署名活動しなければ民意が届かない社会はそもそもおかしい。民意を届けるために議会があるのにそれが十分に機能していないことの表れでもあることは忘れてはいけない。
企業では社長など決裁者に直訴するのが早かったりするが、民主主義国家はそれではいけない。足尾銅山鉱毒事件の田中正造が天皇に直訴したのは、戦前で主権が天皇にあったから。
署名活動は盛り上がりを見せているが、これに慣れっこになってはいけないという危機感やバランス感覚も必要。
署名活動ではないが、ツイッター上での#metooというハッシュタグも、世界規模で社会を動かしている。
ハリウッドの映画プロデューサーが自らの立場を利用して、レイプやセクハラを多数行っていたことが告発され、「私も同様の被害を受けた」と勇気をもって声を上げよう、泣き寝入りはやめようという主旨で広まっている。
「どこからがセクハラか」みたいな話があり線引きは難しいが、この映画プロデューサーの件に関して言えばかなり悪質であるし、セクシャルなものに限らずとも「権力を利用して人に何かを強要するような卑怯なことはするな」ということだと思う。
いまのところ少なくとも日本では女性が中心となってこのハッシュタグを使って発信しているようだが、男性側からの#MeTooもあってもいい。男性だって男性であるがゆえの不利益や不快な思いをさせられた経験がある人は少なくないのではないかと思う。
男女限らず、人は知らず知らずのうちに他人を傷つけてしまうことがある。#MeTooを発信しながら自分の胸に手を当てて過去の行いを振り返ることも大事だと思う。#MeTooは仇討ちのために使うものではなく、「これはダメ」ということを社会に発信して未来を変えていくためにあるハッシュタグだと前向きに捉えたい。