子育てや家事分担については、ネット上での炎上案件が多い。最近では、乳児育てに孤軍奮闘する母親のリアルを描いた某おむつメーカーのCMが「ワンオペ育児」を容認する内容であるとして批判を受けた。

 

おむつメーカーが子育て中の人々を敵に回すようなCMをつくるわけがない。誰からも見られることなくがんばっている母親のリアリティを世に伝え、そういう母親を応援することがメーカーの意図であったことは容易に想像がつく。

 

主人公が父親でもよかったはずだが、そうするとリアリティがなくなりフィクション感が出てしまうから、母親だったのだろう。それが現実であることは否めない。

 

「CMの中に父親がほとんど出てこない」ことに対する批判もあるようだ。しかしCMではあえて母親の大変さを強調するために孤軍奮闘のシーンばかりを演出したのだろう。

 

もし妻のピンチに都合良く夫が現れて、笑顔で子供の世話を引き受け、妻も笑顔になって終わったとしたら、そうではない現実に生きている当事者は、「私とは違う……」と絶望してしまうかもしれない。

 

そんなつらさに寄り添いながら、せめてもの励ましとして、「その時間が、いつか宝物になる。」という決めぜりふでしめたのだろう。でもこれが「だから一人で頑張って」という意味にもとらえられるとして、批判を浴びた。

 

たしかにそうとらえられてしまうリスクはある。決めぜりふにどんなメッセージをもってくるかで、CMの印象はがらりと変わったはずだ。かといってこれなら良かったという名案は、私にはない。

 

メーカーとしては「そんなつもりじゃなかったんだけど……。しょんぼり」という感じだろう。

 

「そんなつもりじゃなかったのだけど……。しょんぼり」。これは夫婦の間でもよくある。良かれと思ってしたことが、裏目に出ることがある。良かれと思ってしたのに配慮が不十分であったために努力が水の泡となり、「ゼロ査定」を付けられてしまうことがある。

 

かのCMも現実から目を背けずに現実を描くという手法までは悪くなかったと思う。しかし着地に失敗した。体操競技なら、減点されるだけだが、現代の社会的風潮の中では一気に「0点」になってしまう。

 

それはそれでちょっと世知辛い気がするのは、「そんなつもりじゃなかったのに……」というミスをよく犯す私だからだろうか。

 

というわけで、家庭の中での男と女という視点と、社会の中での男と女という視点の、二重の文脈で、産後クライシス、家事ハラ、セックスレスなどの問題について、本日(5月19日)20:00から下北沢B&B(ビールが飲めるブックショップ)にてトークイベントを行う。

 

トークのお相手は、VERY編集長の今尾朝子さんとFQ JAPAN編集長の宇都直也さん。さらにスペシャルゲストとして、産後ケアのNPOマドレボニータの吉田紫磨子さんと日本愛妻家協会の小菅隆太さん、そしてまもなく父親になる盟友・常見陽平さんもかけつけてくれることになっている。

 

会場の皆さんにもマイクを向けて、いろいろな考え方・感じ方を共有したい。ネットではなかなかできないライブな議論ができればうれしい。参加はいまからでも可能。プレミアムフライデーではないけれど、今晩の予定が未定なひとはぜひ、下北沢B&Bへ! http://bookandbeer.com/2017/05/19/