つい先日、自主的に午後を半休にして釣りに行って釣れたカレイ(本文とちょっと関係がある)

 

「ライター」って言葉の意味が話題になっているようだ。人によって想起するイメージが違うらしい。英語で「writer」と言えばまさに日本語の「物書き」の意味になるのではないだろうか。スティーブン・キングもたしか映画「スタンド・バイ・ミー」で”I’m a writer.”と言っていた。

 

ちなみに私は仕事の電話をかけるときや、名刺交換のときなど、業界内の人に自己紹介するときは「ライター」を名乗る。執筆業を指す言葉として汎用性が高い無難な言葉だと思っているからだ。「ライター」には、小説家、エッセイスト、コラムニスト、記者、ジャーナリスト、コピーライターなど何でも含まれると思っている。

 

ただ、「ライター」ってカタカナで書くと100円ライターと区別ができないし、一般の人には職業の内容がわかりにくいだろうから、自分のことをよく知らない不特定多数の人たちの前で自己紹介するときは「ジャーナリスト」を名乗る。そのほうが「取材をして書く人なのね」ということが目に浮かぶだろうから。

 

私自身の中では、「ジャーナリスト」とは単に「取材して書く人」。「自分は何も知らないことを自覚している人」というとらえかたもできる。「ジャーナリスト」という言葉を使うことで、「自分は何も知らない。だから調べる、聞く、見る、教えてもらわなければいけない。それをせずに書くな!」と、自分に言い聞かせている部分もある。

 

私はよく自分の仕事を「自分で釣りに行っていい食材を手に入れて(取材)、料理して(執筆)、お客様に提供することに似ている」と表現する。料理人というよりはむしろ漁師としてのアイデンティティが強い。私の料理人としての腕は至って凡庸だが、漁師としての腕にはちょっとだけ自信がある。

 

いい食材さえ手に入れば、料理はできるだけシンプルなほうがいい。活きのいい魚をさっとさばいて、すっと切って、醤油とわさびを添えて出すのがいちばんだと思っている。だから「取材7割、執筆3割」。仕事には、いつもそういう気持ちで取り組んでいる。

 

私の中のイメージはこんな感じ。
・ジャーナリスト=食材を見つけて獲得するところから自分で行い、シンプルに調理して提供する人(アイデンティティバランス:漁師>料理人)
・コラムニスト=どこにでもある素材を見たこともない料理に変身させてしまう凄腕の料理人(アイデンティティバランス:漁師<料理人)
・作家=自分自身の中から素材を取り出すことができ、それを自分で美味しく料理できる人(アイデンティティバランス:魚=料理人)
・ライター=上記すべてを含む無難な言葉。ただし汎用性が高すぎて一般の人には具体的な意味が伝わりにくい。

 

私の名刺には肩書きなど書いていない。ただ「おおたとしまさ」とだけ書いてある。他人が自分をどう呼ぼうがかまわない(なんて呼ぼうか考えさせてしまうころは申し訳ないとは思うのだが)。ただ、メディアに載る場合は、ターゲットである読者にわかりやすい肩書きであるかどうかは気をつける。