本日先ほどフジテレビのネット放送局「ホウドウキョク」の「あしたのコンパス」で中学生の自殺者数の増加について話しました。

用意していたやりとりを全部お話しできなかったので、ここにあげておきます。

 

①    なぜ中学生の自殺者数が増えているのか?
不思議。

少子化なので自殺率が同じなら数は減るはず。しかし、中学生の自殺率(人口に対する自殺者の割合)は過去最高の水準にまで増えている。
一般の自殺率は下がっている。
ただし中学生ばかりが自殺しているわけではない。
内閣府のデータによれば、
昨年の中学生の自殺者数は101人(朝日新聞報道と1人の誤差)、高校生は237人、大学生は397人。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/pdf/h27joukyou/furoku2.pdf
また注目すべきは男女比。
大人を含めた自殺者全体では約7割が男性。
中学生は2/3が男子。
高校生も約6割が男子。
大学生では3/4が男子。
社会人でなくても男子が多い傾向は変わらない。

自殺の原因については「いじめ」しかもSNSを利用した陰湿ないじめが想起されやすいと思うが、内閣府自殺対策白書平成27年度版によれば
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2015/html/chapter1/chapter1_02_05.html

中学生男子の自殺の原因・動機は上位から
学業不振 20.0
家族からのしつけ・叱責
親子関係の不和
その他進路に関する悩み
学校問題その他
いじめ 5.8

中学生女子の自殺の原因・動機は上位から
その他学友との不和 22.2
親子関係の不和
学校問題その他
学業不振
うつ病
いじめ 4.2

はっきりといじめと断定できるケースが少ないのと、そもそも自殺の原因がはっきりしないケースも多いと考えられるが、男女の動機に大きな違いがあることも注目に値する。


②    なぜ9月1日が多いのか?
新学期がはじまり「またあの生活が始まる」と考えて気持ちが不安定になる。
8月31日も9月2日も多い。
一般的な自殺者数を曜日別に調べると、月曜日が突出して多いというデータもある。
平成15年厚生労働省調べ。
男性は、全曜日では1日平均64.1人のところ、月曜日は80.7人。女性は1日平均23.9人のところ、月曜日は27.3人。祝日・年末年始は逆に少ない。男性52.6人、女性20.7人。次いで少ないのは土曜日。男性53.5人、21.2人。
このことからも、人間は休みの後に、現実に引き戻されるときに自殺するケースが多いことが分かる。

最近は授業時間数が増えて夏休みを短縮し、8月下旬から2学期をスタートさせる学校も多いので、今後は8月の最終週へとデータが引き延ばされる可能性はある。


③    シグナルを見逃さないポイントは何か?
新学期に体調が優れない日が続く、
朝起きられない
食欲がない
学校に行きたくないという
など
夏休み明けは、子供の悩みや心の不調に気づくチャンス。
「うちの子は大丈夫」などと高をくくらず、念のためいつもより注意深く子供の様子を観察したほうがいい。
思春期は親への反抗と依存をくり返す難しい時期。親からすると甘ったれているだけに見えるかもしれないが、これといった理由はなくても本人は本気で辛い思いをしていることもある。

 

④    どうすれば中学生の自殺を防げるか?
昨年夏に鎌倉の図書館が「学校に行きたくなかったら図書館においで」というツイートをして話題になった。
居場所があることが大事。

家庭が安心できる空間ならいいのだけど、学校が始まると生活のペースが変わり、親のほうも最初のうちは浮き足立って子供への対応が雑になることがあるので要注意。
そこで孤立を感じると、極端な言動に走る可能性もある。

特に新学期早々の自殺は学校に行くということ自体に強いストレスを感じている可能性が高い。
学校だけが居場所じゃないと、親をはじめとするまわりの大人も心の底から思うこと。

夏休み明けの子供の様子がどこかおかしいと感じたら、無理に学校に行かせるなどせずに、まずは話を聞いてみることも場合によっては必要かもしれない。
ただし、話を聞くときには、価値観の押しつけは禁物。
子供が「学校に行きたくない」というのであれば、学校に行かせようと意図して話すのではなく、「どうして学校に行きたくないのか」「どんな気分なのか」を聞く。説教はもちろんアドバイスも不要。
ただありのままの気持ちを受け止め、共感してあげることが最重要。
場合によっては遠慮せず、学校の先生やスクールカウンセラーの力も借りるべき。
親としては「このまま不登校になってしまったらどうしよう?」と不安になるかもしれませんがそこで焦ってかえって事態を悪化させてしまってはいけません。


もし今辛い思いをしている中学生がこれを見ているのなら、「24時間子供SOSダイヤル」や「夏休み明け 学校がつらくてもココがあるよ!プロジェクト」http://freeschoolnetwork.jp/p-etc/2144など子供たちへ直接支援を行う団体もあることを知っておいてほしい。