「夫婦の時間を確保しよう」「妻の一人の時間に協力しよう」「父親にも一人の時間は必要」というブログエントリを立て続けにアップしました。仕事でもない、家事でもない、育児でもない時間というのが必要だということです。

「そんな時間があるわけない」って声も聞こえてきそうですが、こういう時間は睡眠時間と同じくらい大切な時間だと思うんですよね。こういう時間もしっかり確保しておかないと、あとで息切れすることになると思うんです。ストレスを抱えてしまったり夫婦仲が悪くなったりすれば、あとでこれ以上の時間を浪費してしまうことになるかもしれませんし、こういう時間が足りないと、多分、仕事のパフォーマンスも落ちるんじゃないかと思います。多分ですけど……。

子育て夫婦はとにかく時間がないですよね。そりゃそうです。やることがいっぱいあるんですから。それで、仕事の時間をできるだけ短くして、早く家に帰ろうということになるのですが、そこで、「仕事の成果は落とさずに、こうすれば時間を短縮化できる!」なんて、まるで手品のようなことを大まじめに言う人がいるんですけど、冷静に考えて、もともとよほどサボっていた人でない限り、仕事のやり方をちょっと工夫したくらいで、大幅に時間を捻出するなんてありえませんよね。絞りきった雑巾をさらに万力にかけて最後の一滴を絞り出すみたいな感じじゃありませんか。

早く家に帰りたいのならば、いっそのことそんな難しことを考えずに、単純に労働時間を短くすると決めればいいと思います。そのときに、今までと同じ成果をあげようなんて思わなくていいのではないでしょうか。時間が短くなったのだから、それなりに成果も下がって当然でしょう。

でも、「子育てで時間がなくて、それをサポートしてもらえる制度も体制もなくて、自分の力が十分に発揮できなくて、まわりの人たちが自分よりも多く給料をもらっていたり、出世しちゃったりするのはクヤシイ!」と思う人も結構いるみたいですね。でもでも、それって、他人との比較でしか自分を捉えられていないということではないでしょうか。競争社会に染まりすぎてしまっているもしくは他人の目を気にしすぎているだけではないでしょうか。それこそ自分自身が「給料をたくさんもらっているヤツがエライ」とか「早く出世するヤツがエライ」とかいう旧来の価値観に囚われているという証拠ですから、「子育て世帯に対しての会社や社会の理解が進んでいない」なんて不平を言ってもしょうがないですよね。

そんな社会に不満を感じているのなら、まず自分から、子育ての時期に、仕事上でのレースから一度降りてみたり、少なくともペースダウンしてみたりということをしてみてもいいのではないでしょうか。それで会社での評価が下がっても、出世競争から遅れても、それでいいと思えばいいんじゃないでしょうか。本当の意味で、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」を主体的に設計するというのは、それを受け入れられるかどうかという問題な気がします。他人との比較をしたり、他人からの評価を気にしたりするのではなく、そのときそのときの自分にとって何が大切かを自分で決めることができるかどうかだと思います。それができることが、家族人として、仕事人として、そして人としての本当の強さじゃないかと思います。

それに、みんながそうすれば、結果、競争だって緩和するはずです。今はみんなが必死になって今まで通りのペースでレースを続けようとしているからみんながつらくなっているだけではないでしょうか。

そりゃあ生活の糧が足りなくなってしまうというのでは困ってしまいますが、家族がそれなりに幸せに暮らしていけるだけの稼ぎが計算できるのなら、他人の評価などはあまり気にしなくていいのではないでしょうか。他人と比べる意味もさほどないんじゃないでしょうか。それが自分の人生の価値にどれだけ影響するというのでしょうか。せっかくの子育ての時期に子どもと一緒にいられないとか、夫婦ともにイライラしてケンカばかりしているとか、身体をこわしてしまうとか、心を病んでしまうとか、そっちのほうがよほど人生の価値を損なうことになるのではないでしょうか。

それによって社会全体の労働生産性が下がるなんていう壮大なことを心配する人がいるかもしれませんね。その辺のところは私にはよくわかりません。でも「女性の活用のためにはまずは男性が長時間労働をやめなければならない。そのほうが結果的に総合的な労働力は向上する」という理屈があるわけですから、子育て中のみんながペースダウンしても、社会的なマイナスは少ないんじゃないかと思います。

もし同時に少子化まで緩和されたのなら、一石二鳥じゃないですか。いや、こういうのは一回歯車が回り出すと好循環が生まれますから、一石二鳥どころか、一石三鳥にも一石四鳥にもなるかもしれません。

社会を変えるきっかけは、国の制度や法律ではなくて、意外と一人ひとりのこんな心がけかもしれませんよね。