・「家事ハラ」は誰が悪いのか

旭化成ホームズが「家事ハラ」というキーワードを打ち出して、本当の「共働き」家族を考えようというキャンペーン(?)をやっているようです。
http://www.kyodo.co.jp/humhum/2014-07-14_862594/

「家事ハラ」とは「やり方が違う」など妻による家事のダメ出し。
調査によると、
・家事を手伝ったことがある夫=93.4%
・「家事ハラ」を受けたことがある=65.9%
・「家事ハラ」によりやる気をなくす夫=89.6%

プロモーションビデオ(?)が秀逸。
まさに「あるある」。
世の夫たちの溜飲を下げることでしょう。
http://youtu.be/5Ep3rMUWEbk

たしかに妻の余計なひと言が家事や育児をしようとする夫のやる気を損なうことはありますし、そういう余計なひと言をいってしまうという行為自体はよろしくありません。
しかし、「こんなことをいわれるからやる気をなくすんだよ」と妻のせいにしておしまいというのは大人げありません。

昨年「産後クライシス」騒動で、夫の理解がないから妻が産後クライシスになるみたいな短絡的な解釈が広まってしまいました。
そのときに私が危惧したのは、夫婦間の対立構造が深まってしまうことでした。
相手がこちらの思い通りに動いてくれないからと失望して、怒り、それを相手のせいにするというのは大変大人げのないことです。
相手に期待して、その結果に一喜一憂するということは、自分の感情を相手に預けてしまっているということです。
自分の感情を相手に依存してしまっているということです。
自律的ではありません。

一方がそういう態度になってしまうと、よほど意識的に振る舞わない限り、相手方も同じようなレベルに引きずり込まれてしまいます。
結局お互いに相手のいたらない部分を非難するようになるのです。
ですから、「産後クライシス」で一方的に妻が夫を非難するような構図が強まれば強まるほど、夫から妻への逆襲がそのうち始まるだろうと予測していました。
そのカウンラーパンチとして今回「家事ハラ」が登場したようにも思えます。

NHKがあおった「産後クライシス」騒動には、「夫たち」という目に見えない集合体に対し、社会正義の名のもとに、よってたかって攻撃を加えるような様相がありました。
あれでは対立構造こそ深まれど、相互理解が深まることはありません。
ただし、今回の「家事ハラ」キャンペーンは、「笑い」の要素があることが救いです。
「笑い」には、対立構造を弱め、相互理解をもたらす作用がありますから。
今回のことを契機に、夫婦の相互理解が深まるように流れが変わればいいなと思います。


・相手の言動に感情を預けないのが大人

夫婦に限らず、人間関係の悲劇の多くは、相手に期待しすぎることで起こります。
自分の期待に応えられなかった相手に失望し、それが怒りに変わり、その怒りが相手にも伝わり、対立構造が深まってしまうのです。

赤の他人の間にはこのような葛藤は生じません。
お互いに期待する関係だから生じる問題です。
特に子育て中の夫婦においては避けられない問題です。

「そんなことをいうからやる気をなくすんだ」とバンザイお手上げしてしまうことや、「あなたが理解してくれないから私がつらい思いをしているのよ」と相手のせいにしているうちは、自分は何も成長できません。
相手だけに変わってもらおうとするのはかなり子どもっぽい考え方です。
そのような葛藤を乗り越える強さを、自分自身が身につけなければ、チームワークも成長しません。

夫婦同士で責任のなすりつけあいや犯人捜しをしても何もいいことはありません。
相手を非難するのではなく、そんな人を相手にしつつ、自分はどうすれば自分の感情を相手に預けなくてすむかを考えるべきです。
相手がどうであろうと動じない自分の軸をつくるということです。
そうやって人間は成熟していくのだと思います。
自分の軸がしっかりしている人は、少々のことでイライラしたり、怒ったりしません。
自分の軸がしっかりしている人は、自分とは異なる意見をもつ人の話も冷静に聞くことができます。
自分の軸がしっかりしている人は、相手の気分を害さずに、自分の意見をはっきり述べることもできます。
自分の軸がしっかりしている人は、自分だけではなく他人のためになることを発想する広い視野をもつことができます。


・イクメン夫婦の皮肉な葛藤

ただでさえ子育て中は夫婦の葛藤が増えるんです。
実は、夫が家事や育児に積極的であればあるほど、一時的に葛藤は増えます。

男性が積極的に関わることって、世の中的に大歓迎されているじゃないですか。

・ママの負担が減る
・ママが笑顔になれば子どもも笑顔になる
・子育て中の女性のライフスタイルに幅ができる

などのメリットが挙げられます。
一見いいことづくめなんですが、そこには落とし穴もあるってこと、意外と気づいていない人、多いみたいです。

想像してみてください。
あなたは、とある中小企業の創立経営者です。
会社や社員は自分の子ども同然。
これまで、大変な局面も多々ありましたが、最善と思う決断を下し、実行し、今日までなんとかやってきました。
自分の判断力と行動力にはそこそこの自信もあります。
これからもなんとか良い方向へ導き、成長させていきたい。

そこに突然同じくらいに会社や社員を愛してくれる副社長が現れました。
最初は感激しました。
「これで自分の重荷が半減する」
しかし、そう思ったのもつかの間。
次第に二人の意見が食い違うようになりました。
会社をより良くする目的は一緒なのに、そのためにとる経営戦略が、まるで反対意見だったりするわけです。

次第にあなたと副社長は険悪な関係になっていきます。
口もききたくなくなります。。。

ワンマン経営者には、重責を背負うのは大変さの代わりに、好き勝手にできる自由があります。
しかし、共同経営者が出現することで、好き勝手というわけにはいかなくなります。

いかがでしょうか。
これと同じことが家庭でも起こるのです。
ママがワンマン経営者状態で子育てしているときは、負担的には大変です。
しかし、ママの好きなペースで好きなようにできるというメリットがあったはずです。
「子育てはキミに任せた」というパパのセリフ。
悪く解釈すれば、無責任、放任ですが、よく解釈すれば、「キミの子育てを信頼している」ということでもありますよね。

しかし、ただでさえ凝り性の傾向がある男性が、ひとたび育児に目覚め、育児書を読みあさり、ネットで最新情報をチェックし始め、にわか知識で理論武装すると、やっかいです。

「そこは叱るところじゃないでしょ!」とか「ママが穏やかな気分じゃないと、子どもを寝かしつけることはできないよ!」とか。
ママの子育てにいちいち口出ししかねません。
パパの育児参加で笑顔になるはずのママの目は次第につり上がり、眉間にはしわが刻み込まれるようになります。

これがイクメン夫婦の皮肉な葛藤です。
でもこれは夫婦で乗り越えるべき為に用意されたハードルです。
これをクリアできるようになって、夫婦は夫婦としてまた一段、成長するのです。

結論を言えば、「ママにはママのやり方がある。パパにはパパのやり方がある」
それでいいのです。

私のサイトに寄せられるパパの悩みのTOP3のうちひとつに「子どもへの接し方について、夫婦の意見が食い違う」というものがあります。
「あなたが甘すぎるのよ!」「いや、キミが厳しすぎるんだ!」とか、「なんでそんなに簡単におもちゃを買い与えるのよ!」とか、「子どもにファーストフードを食べさせないで!」などの攻防です。

健やかに育てたいという目的は、パパもママも一緒です。
しかし、そこに至るために選択する道が違うことがあるんですね。
それがイクメン夫婦の葛藤の種となります。

違って結構だと思います。

例えば目の前にたき火があります。
子どもがたき火に近寄ろうとしたときに、親はどう反応するか。
ある親は、子どもが火に一歩近づいた時点で手をつかんで止める。
またある親は、子どもが火に触って火傷をして戻ってきたときにすぐに氷で冷やしてあげながら、「火って怖いでしょ」と教えてやる。

子どもを守る目的は一緒でも、得てして、パパとママでは、タイミングや狙いが違ったりするのです。
そして、夫婦の考え方が違っているほど、子どもは多くを学ぶことができます。

夫婦の考え方が違うことで、ときには喧嘩にもなるでしょう。
でも、より良い家族を築いていきたいという目的さえ一緒なら、必ず乗り越えられます。
人はそれぞれ違う考えを持ちながら、お互いに尊重し合うことができる。
そんな関係性を子どもに見せてあげればいいと思います。