ホショウ
「松田さん、お願いがあるんですけど」
玄関で配送業者の人が困った顔をした。
中身が凍っちゃってるんだけど、そんな苦情がいくつか入っているらしい。冷気が強過ぎたのか、内勤の人が間違えて冷凍に入れてしまったのか。現段階で原因は判らない、とのこと。
「中身を確認していただけますか？」
→はい
いいえ
中身を確認すると、まあ確かに凍っている物もあった。
傷んでいる葉物もあったけど。でもこれはまた違う原因で、かもしれない。
「実家からの野菜ですし。いいですよ。大丈夫です。食べれますし」
「ああ、でもこんなにしなっていたら……お引取りしますよ」
……お引取り？
「これ持っていくんですか？」
「はい。どういう形のホショウになるかはわかりせんが。1回持って帰らせていただいて。またこちらから電話させますので」
「……お気遣いありがとうございます。でもこの野菜を食べたいので。大丈夫ですよ」
「本当にいいんですか？」
僕にボキャブラリーがあれば川平慈英のモノマネで返せたんだけど。
送り賃考えたらこっちで買ったほうが。それでも送ってきてくれているんだから。汗水で作った野菜だろうし。このままこれで。いいと思う。いいでしょう。
これがワインとかだったらまた話は変わるけど。
とりあえず、凍って石みたいな硬さになっているゆずはお風呂行き。だな。
クリスマスツリー
寝ている時も点灯させている。間接照明としてちょうどいいし。
途中で目が覚めたときも、朝起きたときも何となくときめくように。
ときめきは必要らしい。海馬を回復させるために。脳科学者がそんなことを言っていた。ネズミの実験結果の結論だけど。
