『今日、僕らの命が終わるまで』(アダム・シルヴェラ 五十嵐加奈子訳 小学館集英社プロダクション)

 デス=キャストというシステムがある世界の話。デス=キャストとは、その日に死ぬ人に、「あなたは今日死にますよ」と電話してくれる、ありがた迷惑なサービス。電話を受けた人は、その日に必ず死ぬ。どんなに抵抗しても、どんなに防止策を講じても、ぜったいに死ぬ。この電話を受けた少年ふたりが、友人同士となって、人生最後の一日を懸命に生きるという物語。

 正直なところ、このアイデアで長丁場を引っ張ることができるかどうか、ちょっと疑問だったが、実際に読んでみたら、見事に引っ張っていた。中だるみもないし、アイデアも豊富だ。はっきり言って基本的にはワン・アイデアだが、付随するアイデアがよく練られているので、わざとらしさもない。

 今日死にますよといきなり言われたら、そりゃ慌てるだろうな。登場する少年ふたりも、狼狽して、恐怖して、それでも最後の一日を有意義な者にすべく、けんめいに生きるのである。つい共感してしまう。じっさいにこんなサービスがあったらいやだけど、考えようによっては、自分の死期を知れば、それなりの対処ができるかもしれない。

 とどのつまりは、いつ死ぬにしても、その日その日を懸命に生きるということだ。この作品はそれを痛感させてくれる。ヤングアダルト小説だが、むしろ年配者が読むべきだろう。無為に毎日を過ごしてきた身としては、耳の痛い話ではあるが、今日を境に教訓を活かしていけばいいのだ。

 不治の病になって余命宣告されれば、いやでも残りの時間の使い方を真剣に考えざるを得ないが、いくらなんでも一日以内で死ぬとはなあ。もう少し余裕を持って知らせてほしいものだが、こんなサービスがあったら、それを前提に生きざるを得ないだろう。身が引き締まる思いがした。