これは小説を書く全ての人に言いたいんだけど、小説というものは、それを読んだ人が、読んだあとでは確実に読む前とは変わっているべきものだと個人的には思っている。

 

その多くは情動の変化ということになるが、ある災害をテーマにした小説の場合、災害の悲惨さ、人の命の尊さに対する認識が、読者の中で確実に変化しなければならないのである。もちろん、それに伴って、情動も大きく動かされるはずだ。

 

感動を誘うような作品ではないとしても、たとえばショートショートの場合、優れた結末は知的な変化を読者の内面に及ぼす。あるいは、物事の見方を理性の面で変化させられるということだ。

 

歴史的大長編の場合、それこそ読者の生き方を、生きる姿勢をも変えるだろう。そこまで大それたことを考える必要はないかもしれないが、少なくとも、読者に肯定的な意味での変化をもたらしたいとは思わないだろうか。