他人の文章をコピペしたり、同様のアイデアで小説を書いたりしたら、当然、盗作になる。盗作がバレたら出版差し止めになるし、作者も干されるだろう。かように、盗作というものは恐ろしい。自分も、知らぬ間に他人のアイデアや文章をまねないように注意しているところだ。ま、知らぬ間に似てるものを書いてしまうこともあるから、それも限界があるのは確かだが。

 

しかし、他人の作品から盗んでも全くとがめられない部分がある。それどころか、この窃盗行為は小説業界やテレビドラマ業界、音楽業界で白昼堂々と行われている。

 

いったい何を盗むのか。

 

それは、小説やドラマ、映画、楽曲のタイトルである。

 

これはある出版社の編集者に聞いたことだから確かだと思うのだが、作品のタイトルを盗んだりまねたりしても、盗作にはならないというのである。だから、「草原の輝き」とか「センチメンタル・ジャーニー」というタイトルを全く関係ない歌謡曲につけても咎められないし、元ネタの作者も泣き寝入りするほかはない。だから、世の中に広くまかり通るのである。

 

ちょっと知恵を働かせる人になると、完全に一致するのではなく、一部だけパクる。元ネタがわかんない人のために書くと、二十数年前にあったラノベの『ダイバード』はどうしても映画『ダイ・ハード』に似ているように見えるし(もちろん、関係ないがれっきとした用語でもある)、『フルメタル・パニック』はどんなに好意的に受け止めても、明らかに『フルメタル・ジャケット』をまねているように感じられる。

 

もちろん、そのままのパクりも多い。特に韓流ドラマが顕著だ。ちょっと思いついただけでも『フルハウス』とか『イヴのすべて』とか『秘密の花園』とか『赤と黒』とか『禁じられた遊び』とかが出てくる。しかし、これは韓国の制作者を一概に非難することはできないだろう。あくまでも邦題なのだ(韓国語は全く分からないので、原題がパクりなのか、判断できない)。であれば、非難されるべきは日本の制作サイドだ。とはいえ、タイトルをそのままパクっても罪にはならないので、非難することもできない。いちどなど、日本のドラマ業界は、あろうことか『人間失格』をパクろうとして遺族に抗議され、やむなく中黒(「・」のこと)で文字を区切ったらしい。

 

巧妙なものになると、元ネタをほんの少しだけ変えるというのがある。「Can't Buy My Love」にはぶったまげた。元ネタはビートルズのヒット曲。ひょっとしたらビートルズのカヴァーか何かと勘違いされて売れるのを企んでいたのかと勘ぐりたくなる。決してそうではないことを願いたい。

 

こうしたタイトルの剽窃(いや、法的に問題がないのだから剽窃とすら言えない)は、やはり意識の低さから来るのだろうか。ある作品に心酔し、どうしてもそのタイトルをいただきたくなると言うのもあるだろう。気持ちは分かる。だが、そこでグッと我慢するのがクリエイターなのだ。全く関係ない内容の作品に、既存のタイトルをつけるなどは、やはり法律で規制すべきじゃないだろうか。もっとも、線引きは非常に難しいだろう。

 

だから、せっかく一目置いていた作家なのに、『ブラザー・サン シスター・ムーン』などというタイトルをつけたもんだから、その後一切読む気をなくしたのである。

 

もちろん、私自身も、知らぬ間に他人のタイトルをパクることのないよう、気をつけなければならない。