旧ソ連がスポーツで世界制覇しようとしていたように、いまの中国はひょっとしたら知的財産で世界制覇しようとしているのではないかと思えてくる。他国の知的財産権を侵害してきた中国がなぜだと思われそうだが、これはあくまでも過渡期で、中国そのものもこれを極めて意図的に行ってきたのではないだろうか。つまり、他国の、他者の知的財産をまず我が物にし、その後、本物の知的財産を発信しはじめた、ということである。知的財産の境界を曖昧にし、自国の知的財産が浸透しやすくなるのを助長し、ついにオリジナルを発信しはじめたのである。だから、今後、中国の知的財産権侵害は、全くなくなることはないとしても、少しはなりを潜めるかもしれない。
 これは、中国のIT技術進出、それによる世界制覇、サイバー攻撃、機密情報・個人情報獲得とつながっている。ソフトとハードの両面で世界を支配下に収めようとしているのである。アメリカ合衆国はこれにいち早く気づいたようで、混乱する中でも強硬な対応策を打ち出している。極端な話だが、トランプ大統領はそのうちに中国製の映画、ドラマや中国の文学、その他芸術を規制するのではないかとすら思えてくる。
 日本侵略も無視することはできない。尖閣諸島の領海侵犯だけに目を向けていてはいけない。知的財産による侵略が、既に始まっている。個人的には関心があるので言いたくはないが、中国人作家によるSF文学の進出がすさまじい。これも、いきなり中国の物だと抵抗があるので、中国系のアメリカ人作家による作品の紹介で地ならしをしたのではないか。そして、中国ってすごいという素地を作るのである。多くの人が、中国に対する親近感を抱くだろう。
 要は、目立ちやすい軍事介入に目が向きすぎると、中国によるソフト・キリングに気づくのには遅すぎるという事態になりかねないのである。中国だって、決して馬鹿でも表層的でもない。