「おさななじみ」
作詞 永六輔 作曲 中村八大
歌 デューク・エイセス(1963年8月 東芝音工)



NHK「夢であいましょう」の「今月の歌」として、1963(昭和38)年5月に登場した「おさななじみ」は、幼稚園から小学校、そして中学校と”おさななじみ”の男の子と女の子の物語が綴られる、新「唱歌」ともいうべき楽曲。それまで黒人霊歌や、アメリカのフォークソングを歌っていたデューク・エイセスにとって、初めてのドメスティックな日本語曲のヒットとなりました。この曲の成功があって、後の「にほんのうた」シリーズに連なっていくわけです。

さて、この「おさななじみ」は、コミカルな展開に、微笑ましいエピソードの数々。永六輔さんならではの「青いレモン」というフレーズが利いている、リリカルな世界が繰り広げられ、二人がゴールインして子供が幼稚園に入園するところで大団円。

http://listen.jp/store/artword_1106943_30300.htm

ボクが生まれたのは、この歌が誕生した昭和38年ですが、幼稚園に入るころには、この歌は「童謡」として、先生から教わりました。今でも「青いレモンの味がする」というフレーズを聞くと、その頃のことを思い出します。

ところが、小学校に上がった昭和45(1970)年、銀座の山野楽器で、小遣いで買った「おさななじみ」のシングルのB面「続 おさなじみ」を聞いて、驚きました( TP-2344 シングル おさななじみ/続おさななじみ)。

「おさななじみ」でゴールインした主人公夫婦に生まれた幼子が、その後どうなったか、を描いているのですが・・・ しかも”ニャロメ” ”べし”といった赤塚不二夫先生の漫画のキャラクターの名が織込まれ、さらには「スカートなのだ まくるのだ」とバカボンのパパの口調になってしまいます(笑)

やっと大学に入っても、デモと封鎖とアルバイトで通えず、劇画や麻雀、女の子に明け暮れる日々で「遊ぶことだけ一人前」な、大学生となります。と、まるでクレージーキャッツの歌のような、ゲバルト路線に脱線。いや、この頃の現実を考えれば、まったくその通りなのですが(笑)転調してから、クレージーの「アッと驚く為五郎」のようなアレンジで、イカします。

”核マル ・中核・赤軍派” ”ノンポリなのに捕まって”

と続くわけです(笑)さらに、この息子が結婚して、”夫婦ともども 浮気して"
と現代的な展開となり、主人公夫婦の間にもすきま風が吹いて

”おさななじみは 今となりゃ 苦いレモンの味がする”

というオチになるわけです。パロディなのですが、続篇なので、かなりキツいシャレになっているわけです。7歳の僕にとっては、これが面白くて、いつもレコードをかけて、家族のヒンシュクを買ってました。

そして、さらにこの曲には「おさななじみ~その後」という、三作目まで作られました。こちらは、まっとうな”あれから早くも 二十年”の物語になっています。子供たちはすくすく育ち、結婚し、初孫が生まれ、眼に入れても痛くないほど可愛がって、主人公は孫をつれて動物園へ。

”バスでおでかけ 無料パス”

と、ついに老境へとさしかかり、少し記憶があやふやになってきます。”おさななじみの 思い出も"すっかり忘れてしまい、青いリンゴか、それともバナナかなと、迷いながら”あっレモンだ!!”と思い出したところで、リスナーがホッとする、というわけです。

この「おさななじみ」三部作については、永六輔さんの著書「上を向いて歌おう:昭和歌謡の自分史」(飛鳥新社2006)のなかの「よくもまぁ、こんな歌詞を」という章に詳しく書かれています。

http://books.google.co.jp/books?id=D1UXj9eK_zgC&pg=PT89&lpg=PT89&dq...


それから「続 おさなじみ」は、昨年リイシューされた、デューク・エイセスのアルバム「おさななじみ(紙ジャケット仕様)」のボーナストラックとして収録されています。

「おさななじみ」は「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定ですが、出来れば「続~」「~その後」も織込んでいただけると嬉しいですね。

http://kyodotokyo.com/standard
https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久
「いいじゃないの幸せならば」
作詞 岩谷時子 作曲 いずみたく
歌 佐良直美 (69年7月15日発売 日本ビクター)

この曲は、昭和44(1969)年の第11回日本レコード大賞受賞曲です。シンガーの佐良直美さんは、この曲から二年前の昭和42(1967)年の第9回日本レコード大賞新人賞を「世界は二人のために」(作詞 山上路夫 作曲 いずみたく)で受賞されています。この曲は同じいずみたくさんの作曲ですが、岩谷時子さんによる詞は、そのイメージを百八十度逆転させてしまう「時代と寝た」ものになっています。

この歌詞を読んでみてください。
http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND442/index.html

一番の「いいじゃないの幸せならば」掠奪のシチュエーションの衝撃
二番の「いいじゃないの今が良けりゃ」の刹那的な感覚
三番の「いいじゃないの楽しければ」の享楽的な感覚
四番の「いいじゃないの幸せならば」の”幸せ”という言葉の希薄さ

それまで男と女を描くときのモラルや、「世界は二人のために」などで描かれてきた愛のかたちは、見事に瓦解して、ここでは「掠奪」「刹那」「享楽」「希薄」といった言葉が浮かんできます。これが1969年という年の「気分」でもあり、奔放で冷めた女の子を描く岩谷時子さんの詞こそ、新しい歌謡曲のかたちでもありました。

岩谷時子さんと、いずみたくさんのコンビによる「大人の世界」のクールさと切なさは、日本の歌謡曲のなかでも特別な輝きを放っています。この歌がいかにして誕生したのかを描いたドラマがありました。2005年に放映されたフジテレビのスペシャルドラマ「女の一代記 越路吹雪 愛の生涯 この命燃えつきるまで歌う』です。越路吹雪さんを天海祐希さん、岩谷時子さんを松下由樹さんが演じていました。

岩谷さんの描く「女」は、シャンソンの世界なんですね。ここまで踏み込んだ歌はそれまで、いわゆる流行歌の世界ではありませんでした。この曲の登場は、それゆえ衝撃的だったと思います。

この曲が流行したのは、僕が6歳の時ですが、赤塚不二夫さんの漫画にもよくこのフレーズが登場してました。それで、何気なく使ったら、オフクロにものすごく怒られたことがあります。やっぱり、この歌、アンモラルだったんですね。

ちあきなおみさん、西田佐知子さんなど「大人の歌手」がカヴァーしていますが、僕は、由紀さおりさんのライブアルバム「 いずみたくリサイタル"Live Recording" Taku Izumi Recital 」(ゲスト:デューク・エイセス)で、由紀さんがシャンソンとしてこの「いいじゃないの幸せならば」を歌ったヴァージョンがイイと思います。

そういえば、昨年の「桑田佳祐 昭和八十三年度!ひとり紅白歌合戦」でも、桑田さんが歌っていました。また、信藤三雄監督の『代官山物語』(98年)のタイトルで、夏木マリさんが歌ったヴァージョンも強烈でした。


これもまた「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定です。

https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久
「夜霧よ今夜も有難う」
作詞 作曲 浜口庫之助
歌 石原裕次郎(1962年2月テイチク)

この場所には、YouTube動画が貼り付けられます。


石原裕次郎さんの代表曲にして、日活ムードアクションの象徴ともいうべき映画『夜霧よ今夜も有難う』の主題歌でもあります。今年は、石原裕次郎さんの23回忌ということで、ご存知のように、ワタクシも日活さんのDVD-BOX「石原裕次郎 ゴールデントレジャー」のプロデュースをさせていただきました。

石原裕次郎 ゴールデン・トレジャー
http://www.nikkatsu.com/package/golden/

裕次郎さんのムーディな歌声のイメージとともに、この曲もまた「オトナの歌謡曲」として、多くの人々に愛され続けています。このレコードがリリースされたのは昭和42(1967)年2月、カップリングは傑作『波止場の鷹』(67年8月西村昭五郎監督)の主題歌となる「粋な別れ」。さて映画『夜霧よ今夜も有難う』の公開は3月11日。同時上映は吉永小百合さんの『恋のハイウェイ』でした。

http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND559/index.html

この曲と、映画については、そのDVD-BOXのブックレットのための解説から、一部、引用させていただきます。

夜霧よ今夜も有難う
A WARM MISTY NIGHT 監督・江崎実生

 石原裕次郎と浅丘ルリ子のコンビによる“ムード・アクション”は、昭和30年代末から40年代にかけての日活アクション成熟期に、多くの佳作を残している。裕次郎映画のメイン監督である舛田利雄監督の『赤いハンカチ』(1964年)、松尾昭典監督の『夕陽の丘』(1964年)や『二人の世界』(1966年)など、裕次郎の甘い歌声をフィーチャーした大人のラブ・ストーリーに、アクションを巧みに配したムード・アクションは、裕次郎映画の新たな境地となった。

 ムード・アクションという言葉は、日活宣伝部が『夕陽の丘』の宣伝コピーとして作ったものだが、映画評論家の渡辺武信氏は『憎いあンちくしょう』(1962年)から『波止場の鷹』(1967年)までの間に作られたものが、ムード・アクションと定義している。いずれも、自己のアイデンティティとロマンに生きる「男」と、現実的な幸福を求める「女」の葛藤をさまざまなドラマの中で描いた作品である。

 そういう意味では『夜霧よ今夜も有難う』は”ムード・アクション”の条件を満たした佳作となった。浜口庫之助作詞・作曲による主題歌は、歌謡史に燦然と輝く名曲で、裕次郎の甘い歌声とともにファンに今なお愛され続けている。

(中略)

外国航路の貨物船の船長・相良徹(石原裕次郎)が、バレエダンサーの北沢秋子(浅丘ルリ子)と婚約するが、秋子が結婚式の当日に失踪。失意のうち船を降りた相良は、それから数年後、横浜で外国人相手のクラブ“スカーレット”を経営しながら、密出国を斡旋していた。ある日、秋子が夫である東南アジア某国の革命派幹部グエン・ホアダイ(二谷英明)と共に密出国させて欲しいと現れる。

 再会した二人の間には「千五百回の昼と千五百回の夜」が過ぎていた。失われた過去の為に、目の前に現れた秋子の現実を、受け入れる事の出来ない相良。過去と決別するための克服のドラマは切なく、まさにムードアクションの面目躍如。

(中略)
 
 本作のムード作りに貢献しているのが、魅力的なダイヤローグの数々。野上竜雄、石森史郎、そして江崎監督によるシナリオには名台詞がちりばめられている。相良と秋子が交す、失われた四年間についての「千五百回の朝と昼、そして夜」の会話。ピアノを弾く裕次郎の前に現われた秋子が、「貴方の好きなもの。雨上がりの舗道・・・ひとりぼっちのゴリラ・・・」と相良が好きだったものを挙げ、続いて「私の好きなもの」を挙げてゆく。渡辺武信氏も指摘しているように、これはリチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン二世作詞の「マイ・フェバリット・シングス」(「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」)にインスパイアされたものだろう。この会話はリリカルななかに、失われた二人の時間が凝縮された名シーンといえるだろう。

 余談だが、「♪こぼれ花」のシーンでの国籍不明のコンガ奏者として登場するのが作曲者の浜口庫之助。浜口といえば、日活ダイヤモンドライン第四の男・和田浩治主演のコミック・アクション『有難や節 あゝ有難や有難や』(1961年・西河克己)にも、行幸のパロディ場面で、なんと天皇陛下風のスタイルで出演している。自らが作曲した裕次郎ソングを歌ったCDもリリースされている。

(後略)

これもまた「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定です。

https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30
出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久