「みんな夢の中」
作詞・作曲 浜口庫之助
歌 高田恭子(1969年キングレコード)



誰しも、”胸が締め付けられそうになる”メロディや曲があると思います。僕にとっての、子供の頃の”甘酸っぱい記憶”をくすぐってくれるのが、高田恭子さんの「みんな夢の中」です。この曲がヒットしたのは、昭和44(1969)年、由紀さおりさんが「夜明けのスキャット」でデビューを果たし、前年末にリリースされたいしだあゆみさんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」が大ヒットをし、千賀かほるさんの「真夜中のギター」を大人たちが口ずさんでいました。

僕は、ハスキーで少しセクシーな”大人のお姉さん”の雰囲気ただよう高田恭子さんが好きだったのか、ハマクラさんのメロディが好きだったのか、そのどちらでもあるのですが、とにかく、この曲は大好きでした。

だから、この年の紅白歌合戦を食い入るように見つめていたことを、はっきりと覚えています。



この「みんな夢の中」の「♪タラララ~タラララ~」というイントロ、リフレインの間奏を聞くたびに、とても切ない、懐かしい気持ちになります。

高田恭子さんは関西フォークの出身で、あの「竹田の子守唄」のファーストシンガーでもあります。ハマクラさんの「バラが咲いた」を歌ったマイク真木さんが率いる、フォークグループ・ザ・マイクスに参加して、ビージーズのカヴァー「星空のマサチューセッツ」(1967年12月)などを歌っています。なかにし礼さん訳による「星空のマサチューセッツ」は名盤で、耳を澄ますとバックに高田さんの歌声がはっきり聞こえてきます。

というわけで「みんな夢の中」には、ハマクラさんの「夢」がつまっています。イントロの良さ、歌詞の良さ、甘さと切なさ。「夢のくちづけ」「夢の涙」「よろこびも悲しみも」「みんな夢ん中」。一つの一つのフレーズが、リスナーの甘美な記憶や、感情のスイッチを入れてくれるのです。前年の島倉千代子さんの「愛のさざなみ」、そしてこの曲、立て続けに聞くと、ハマクラさんが目指していたサウンド、歌、歌謡曲というものが見えてきます。

いったんは結婚引退された高田恭子さんも1997年に復帰されて、今でもこの曲を大事にされています。その後も様々な人が折々にカヴァーをしております。あさみちゆきさん、柳澤澤潤子さんといった方がCDをリリースされています。
http://j-lyric.net/artist/a04aac2/l011702.html


そして、先日、最高の「みんな夢の中」を聞く事ができました。この11月11日と12日に東京国際フォーラムCで行われた「由紀さおり 40周年記念コンサートいきる ~今からはじまる夢~」のなかで、演出・脚本・出演の高泉淳子さんが「みんな夢ん中」の1番、由紀さおりさんが2番と3番を歌うスケッチがあるのですが、これが素晴らしかった。僕がこれまで、さまざまな方の「みんな夢ん中」(カラオケも含めて・笑)のなかでも秀逸です。ハマクラさんの世界を、由紀さおりさんのしっとりとした、ちょっと可愛らしい、そして大人の女性の孤独をにじませて、歌う「みんな夢ん中」は、二日間とも”鳥肌”ものでした。

この由紀さおりさんの「みんな夢ん中」は絶品です。おそらくは、来年のコンサートツアーでも歌ってくださると思いますので、ぜひ!

これもまた「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定です。

https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久
「恋の季節」
作詞 岩谷時子 作曲 いずみたく
歌 ピンキーとキラーズ(1968年7月キングレコード)



一世を風靡した曲は数あれど、この「恋の季節」のピンキーとキラーズの人気は、すごかったです。1968年から69年にかかて、オリコンチャート通算17週、一位を記録したビッグヒットです。猫も杓子もピンキラ、という時代でした。リードヴォーカルの今陽子さんは、前年の1967年にビクターから15歳で「甘ったれたいの」でデビューを果たした、いずみたくさんの秘蔵っ子。TV「太陽のあいつ」では、恵とも子さんとともに出演していました。で、やはり、いずみたくさんが育てたボサノバ・グループ、キラーズのリードヴォーカルとなり「恋の季節」をリリース。キラーズは、ジョージ浜野(ギター )、エンディー山口(ギター )、ルイス高野(ベース )、パンチョ加賀美(ドラムス )の四人組で、ダービーハットにステッキがトレードマークでした。

当時のレコードのコピーがイカしています。

エリートサウンド’68ーおしゃれ娘と貴族野郎

なんともはや!ですが、GSの貴公子たちよりもアダルトなキラーズの面々を貴族野郎としたのが、この時代のセンスです。なんたってエリートサウンドですから!

「恋の季節」といえば、最近缶コーヒーBOSSのCMで、イントロだけがBGMに使われていますが、これを聞くたびに、「忘れられないの~」とピンキラの声が聞こえてきてしまいます。このピンキラは、GSブームのさなか、大人の観賞に耐えうる流行歌として、ジャッキー吉川とブルーコメッツに次いで、大衆受けしたグループでもあります。

大人受けする、ということは勿論子供にも受けるわけで、第二弾「涙の季節」がヒット中の1969年3月には、それまで藤子不二雄アニメを放映していた、日曜夜7時30分のTBS枠で、ピンキラ主演のドラマ「青空に飛び出せ!」がスタートします。



主題歌、イカしてるでしょう! 僕らは、セルジオメンデスよりもピンキラでこういうサウンドを知ったわけです(笑)このドラマは、自分たちだけの『独立国』を目指して、ピンキラの面々が、ピンキングカーなる改造車にのって、全国を旅するという、ヒッピームーブメントのこども文化へ流入させた、ファンタジーでもありました。

で、「恋の季節」がいかに大人受けしていたかがわかるのは、映画界の反応です。かの井上梅次監督が、奈美悦子さんと森田健作さん主演で歌謡映画化を果たし、さらには瀬川昌治監督の「喜劇 旅行シリーズ」では、ピンキラがしばしば出演して、演奏を披露します。とくに「旅行シリーズ」は、そのほとんどの音楽をいずみたくさんが手がけておられたこともあり、『喜劇 婚前旅行』(69年)や『満願旅行』(70年)ではピンキラをフィーチャーしてました。

なかでも『喜劇 婚前旅行』の挿入歌「愛のチュチュ列車」はマイフェバリッツの一つです(笑)『喜劇 縁結び旅行』では、この曲を金井克子さんと東京ロマンチカの皆さんが歌うシーンもありました。



「恋の季節」から離れましたが、僕らの世代にはそれほどいずみたくさんのサウンド、ピンキーとキラーズの曲が大きな存在でもある、ということです。



これもまた「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定です。

https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久
「愛のさざなみ」
作詞 なかにし礼  作曲 浜口庫之助
歌 島倉千代子(1968年7月1日コロムビア)



島倉千代子さんのデビュー15周年記念盤。ハマクラさんの提案で、ロサンゼルスでレコーディングするという、当時としては大胆な企画で、ジャケットにも編曲とセッションに参加したボビー・サマーズと彼のグループの写真がレイアウトされています。しかし、このジャケットもサイケですね。しかも、和服姿の島倉千代子さんが超然としている感じもイイ(笑)これぞ、歌謡曲のあるべき方向性!だったのでしょう。

アタマのコーラス部分からノックアウトされる名曲です。この曲が登場した昭和43(1968)年という時代の空気が凝縮されています。なんたって、アメリカ人がバックをつとめた流行歌なんて、これまで考えられなかったわけで、そのインパクトは強烈でした。

http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND97/index.html

作詞は「知りたくないの」「恋のフーガ」などで、前年の日本レコード大賞作詞賞を受賞し、この年「天使の誘惑」で日本レコード大賞に輝くことになる、なかにし礼さん。気鋭の作詞家と、あくなきチャレンジャーであるハマクラさんのコンビによる「愛のさざなみ」の登場は、当時絶頂だったGSブームを吹き飛ばすほどのサムシングがあったのではないか、と思います。

この曲を聴いていると、”昭和元禄”とか”サイケ”とか、そんな言葉が飛び交っていた子供の頃を思い出します。「くりかえすす くりかえす さざなみのように」というフレーズを、遊びながら歌っていた記憶があります。この年の紅白では、ザ・ヴァイオレッツ(山本リンダさんの「チキチキバンバン」で共演し、吉沢京子さんの「レモンの天使」の主題歌を歌うことになる)のコーラスをバックに、お千代さんが歌いました。レコードに比べると歌声が堂々とされています。ワタクシ5歳の頃です(笑)



それから十年後、大滝詠一さんの「ゴーゴーナイアガラ」でこの曲がかかった時に、なんともスゴイ曲なのだと実感しました。ハマクラさんが狙っていたのは、ノンジャンルの”島倉千代子”のプレゼンテーションだったのだと。

ハマクラさんは、「愛のさざなみ」の翌年1969年に、高田恭子さんの「みんな夢の中」を作り上げます。この2作品は、スゴイですね!

この曲は、島倉千代子さんのヒット曲としてだけでなく、1960年代末の”歌謡曲”というジャンルの嚆矢として、和製スタンダードの傑作として、さまざまな人がカヴァーをしています。なかでも、原由子さんが「東京タムレ」のなかで歌ったものが秀逸です。

変わったところでは、香港の明星、汪明荃さんが1978年にカヴァーしています。微妙にメロが異なりますが、これもイカしてます。面白いのは「パッパ~」のコーラスは変わらないこと。オリジナルのインパクトの強さを感じます。




これもまた「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定です。

https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久