「愛して愛して愛しちゃったのよ」
作詞・作曲 浜口庫之助  1966年 ビクター
歌 和田弘とマヒナスターズ、田代美代子

いやぁ、懐かしいですね。昭和38(1963)年に東京で生まれ、物心ついたときには、公団住宅の3DKに一家四人で、いわゆる現代的な生活をしていたボクが、三歳の時のヒット曲です。「♪ララランラン~」というフレーズを、団地に配達にきてくれる酒屋のお兄ちゃんが歌っているのを覚えています。その頃、幼児教室という保育所に通っていたボクは、この歌をよく友だちを歌って、先生に「おマセね」と云われていたようで、母から聞いたことがあります(笑)

さて、マヒナといえば吉田正メロディー、ですが、この曲は、我らがハマクラさんの「フレーズ」ソングの傑作です。「愛しちゃったのよ~ララランラン~」。ここです。これが気持ち良いんですね。歌詞がシンプルで、ひたすらに「愛しちゃった」気持ちをホンワカ歌っているわけです。特に「生きているのが~」からの転調部分、これがイイんですよ。老若男女の「これイイ」気持ちをわしづかみにしてくれるわけです。

これが歌詞です。
http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND36/index.html

これが大流行したことは、日活ですぐに歌謡映画化『愛して愛して愛しちゃったのよ』(66年2月5日公開)していることでもわかります。浜田光夫さん、山本陽子さん、そして浜川智子さん! による、青春映画です。田代美代子さんとマヒナがタップリ歌ってくれます。

でも、ボクはこの「愛して愛して愛しちゃったのよ」というと、まず、渥美清さんの「♪ララランラン~」という名調子を思い出します。加山雄三さん主演、石坂洋次郎原作の『何処へ』(66年3月16日公開・佐伯幸三監督)で、渥美清さんが体育教師・野口長太郎という役を演じておられてます。この野口先生、明朗快活なのですが、体罰容認派。そのことで騒動が起こるのですが、野口先生がいつも「愛して愛して愛しちゃったのよ」を口ずさんでいるのです。あの、スーとした高音で「♪ララランラン~」と歌う渥美さんの声が素晴らしいのです。でも、野口先生、この歌を全部覚えているわけではなく、サビの部分を繰り返しているわけです。確か加山さんも釣られて歌う、という展開でもありました。

この歌、今の人たちには、オリジナルよりも、サザンオールスターズの原由子さんがカヴァーしているヴァージョンの方が耳馴染みかもしれません。これぞ歌謡曲! という感じで、サザンのコンサートで心地よく聞いた人も多いでしょう。男性パートを桑田さんがコーラスしていく展開も良かったです。

というわけで、 スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~では、この歌、どなたが歌ってくれるのでしょうか? 個人的には、「三木鶏郎トリビュート Swing With TORIRO」コンサートのように、今野英明くんや遊佐未森さんたちが皆で歌ってくれるのではないかと、踏んでおります(笑)

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今日から「オトナの歌謡曲」と題して、ニッポンのスタンダードについて、あれやこれや書いていきます。

「オトナの歌謡曲」第一回 見上げてごらん夜の星を

永六輔・作詞 いずみたく・作曲 坂本九・歌

昭和38(1963)年にシングルがリリースされ、「上を向いて歩こう」と並ぶ、坂本九さんの代表曲となりました。もともとは、永六輔作、いずみたく音楽による労音ミュージカル「見上げてごらん夜の星を」として昭和34(1959)年の夏に、大阪労音で初演されたそうです。その公演に関わった、当時サンケイ新聞におられた音楽評論家の岡野弁さんから、このミュージカルについて、いろいろ伺ったことがあります。初演と昭和36(1961)年の秋の東京再演では、伊藤泰道とリリオ・リズム・エアーズと橘薫さんが中心キャストでした。

そして、昭和38(1963)年、「上を向いて歩こう」がビルボードの全米1位にランキングされた年。坂本九さん、九重佑美子さんの主演で、春には大阪で再演、夏には東京公演が行われ、11月には番匠義彰監督による松竹映画化もされています。

僕はもちろん舞台は見ておりませんが、昭和38年、空前の坂本九ブームのなか、東芝レコードからリリースされたLP「ミュージカル 見上げてごらん夜の星を」を、子供の頃から繰り返し聞いてきました。このLPは、ブロードウェイのミュージカルのレコード化のように、オリジナルキャスト+豪華ゲストを交えた強力盤です。

作・構成 永六輔 音楽・いずみたく
出演 坂本九 九重佑三子 越路吹雪 ダニー飯田とパラダイス・キング 大貫ゆみ子

音楽と歌、そして台詞で舞台を再現しています。昼間働いて、定時制高校に通う主人公(坂本九)が、田舎のお母さん(越路吹雪/レコードキャスト)に手紙に綴る心情、昼間部の女生徒(九重佑三子)と文通をする模様が描かれています。「ニッポンにもオリジナル・ミュージカルを!」という作り手の意気込みが、レコードからも伝わってきます。ちなみに名曲「勉強のチャチャ」は、このミュージカルから生まれました。

番匠義彰監督の松竹映画版では、舞台をさらに大きく脚色しているようですが、この映画もイイです。九ちゃんは、南千住の東京スタジアムの前にある定時制高校に通っていて、お化け煙突や、都電荒川線など、当時の東京がイキイキを描かれています。こちらは来年に衛星劇場「番匠義彰」アワーで放映予定です。

さて、この舞台、映画の主題歌となった「見上げてごらん夜の星を」は、いずみたくさんならではの美しいメロディによるバラードの傑作です。いつしか舞台や映画のイメージから離れて、スタンダードとしてさまざまな人に歌い継がれています。

由紀さおりさんは、LPにもなった「いずみたくリサイタル」で歌い、フォーリーブスもカヴァーしています。最近では2003年、平井堅さんがカヴァーして、PVで坂本九さんの映像と共演してました。あれにはヤラレマシタ。坂本九さんが亡くなってすぐの「夜のヒットスタジオ」では、森進一さんが急遽歌ったのが強烈な印象として残っています。

そうそう、ドラマ「ウーマンドリーム」(92年関西テレビ)では、裕木奈江さん扮するヒロイン、朝倉利奈が「見上げてごらん夜の星を」を歌ってブレイクするという設定でした(原作は小林信彦さん「極東セレナーデ」)。

さて、11月24日(火)新宿文化センター大ホールでの
「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」では、誰が一体、この曲を歌ってくれるのでしょうか? タノシミです。

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ソングブック映画というジャンルがあります。例えば、ジョージ・ガーシュインの『アメリカ交響楽』(45年)や、コール・ポーターの『夜も昼も』(46年)、ジェローム・カーンの『雲晴れるまで』(46年)、リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの『歌詞と音楽』(48年)などなど。1940年代のハリウッドでは、ソングライターの生涯を、その人が書いたヒットソングで綴る音楽映画が花盛りでした。

最近でも、コール・ポーターの『五線譜のラブレター』がありました。こうしソングブック映画の主役はなんといってもスタンダード。フランク・シナトラ、ジュディ・ガーランド、ペリー・コモといったスターが次々と登場して、おなじみのスタンダードを歌う。おまけに、映画では「歌の誕生秘話」が、多分に脚色されてますが、描かれて、興趣が湧くわけです。

僕はこうした映画を通じて、アメリカのスタンダードを知りました。いささか絵乱暴かも知れませんが、ガーシュインを知るなら『アメリカ交響楽』、コール・ポーターなら『夜も昼も』と、今でも人におススメしております(笑)

でも日本には、ソングブックという発想がなかなか根付かず、映画では古賀政男さんの『影を慕いて』が作られてますが、これは華麗なヒットソングのページェント、というわけに行かず、やはり歌謡映画になってしまっています。

これまでも、いずみたくさんや中村八大さん、宮川泰さんのトリビュート・コンサートなどはありました。残念ながら、お亡くなりになったときの、メモリアルばかりでした。

僕はもっと、気軽に日本のスタンダードを楽しめる、時代とともにあった歌謡曲を、オンタイムの世代だけでなく、若い世代にも聞いてもらったり、歌ってもらいたい、そのための「ソングブック映画」「ソングブックコンサート」があればいい、と思っていました。

日本のスタンダードを書いたソングライターでまず浮かぶのは、「上を向いて歩こう」「黄昏のビギン」の中村八大さん、「夜明けのスキャット」「恋の季節」のいずみたくさん、「涙くんさよなら」「夜霧よ今夜も有難う」の浜口庫之助さんです。もちろん、坂本九さん、水原弘さん、由紀さおりさん、ピンキーとキラーズ、ジャニーズ、石原裕次郎さん、といったオリジナルシンガーの歌声がすぐにイメージされます。

ところが、中村八大さんの「上を向いて歩こう」は、坂本九さんの歌でありますが、同時にいろんな方が歌い継がれております。なんせビルボード1位のスキヤキソングですから、沢山の方がカヴァーをされています。そうして歌はスタンダードになっていくのです。

浜口庫之助さんの「涙くんさよなら」は、坂本九さんのヒット曲でもあります。最近でもないですがドラマ「天までとどけ」の主題歌として、川越美和さんemuさん、安達祐実さんも歌ってました。そして僕らも、時々口ずさんでます(笑)。1966年の日活映画『涙くんさよなら』では、日活が誇るGSバンド”ヤング&フレッシュ”とジュディ・オングさん、そしてジョニー・ティロットソンさんも歌っています。これもスタンダードです。

こうしたイイ曲を、さまざまなアーティストが歌い継いでいくこと。とても大事なことだし、とても素敵なことだと思います。日本にはソングブック映画は作られませんでしたが、ソングブックコンサートはこれからも開催することができる、そんな風に思っていました。

昨年から、僕は、大先輩のプロデューサーである佐藤剛さんと「20世紀の歌謡曲」と「21世紀の歌謡曲」をテーマに、さまざまなことを考えて、行動してきました。由紀さおりさんのアルバム「いきる/由紀さおり」は、その実践であり、そこから派生してくるさまざまなことを通して、歌謡曲という概念がここのところ定着してきたようでもあります。

昨日の朝日新聞でTHE BOOMの宮沢和史さんが「歌謡曲」に興味がある、ということをインタビューで話してました。「歌謡曲」きてますね。やっぱり。

こうした活動の一貫として、「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」と題して、念願のソングブックコンサートが開催されることになりました。さすが剛さん、行動が早いです。


スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~

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日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久

登場楽曲(予定)
♪みんな夢の中(浜口庫之助)
♪愛のさざなみ(浜口庫之助)
♪夜明けのスキャット(いずみたく)
♪恋の季節(いずみたく)
♪黄色いサクランボ(浜口庫之助)
♪愛して愛して愛しちゃったのよ(浜口庫之助)
♪夢であいましょう
♪夜霧よ今夜も有難う(浜口庫之助)
♪夕日が泣いている(浜口庫之助)
♪涙くんさよなら(浜口庫之助)
♪黒い花びら(中村八大)
♪見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
♪ともだち(いずみたく)
♪花と小父さん(浜口庫之助)
♪遠くへ行きたい(中村八大)
♪夜明けの歌(いずみたく)
♪ふれあい(いずみたく)
♪黄昏のビギン(中村八大)
♪初めての街で(中村八大)
♪「笑点」のテーマ(中村八大)
♪「徹子の部屋」のテーマ(いずみたく)
♪おさななじみ(中村八大)
♪いい湯だな(いずみたく)
♪手のひらに太陽を(いずみたく)
♪いいじゃないの幸せならば(いずみたく)
♪バラが咲いた(浜口庫之助)
♪明日があるさ(中村八大)
♪上を向いて歩こう(中村八大)

といった曲を、どの方が歌うのか、それを想像するもの楽しいです。
日本の歌謡曲、日本のスタンダードの源流を知るというアカデミックな愉しみだけでなく、メロディの良さ、歌詞の良さ、そして歌の良さを、存分に味わえるコンサートになるような、そんな気がします。

このシリーズ、どんどん続けていただいて、次世代にも日本の歌謡曲の素晴らしさを歌い継いでいって欲しいです。