LOVEBITES SWAN SONGについて | darumaさんの詩(うた)

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     旧 Ichigo 美郷台ブログ 

 

 

SWAN SONGについて個人的な感想や考察を述べたいと思います。あくまでも自分の個人的な捉え方なので、その点はご容赦ください。

 

このLIVEでは、アルバムにはないMIYAKOさんのショパン「Etude Op.10,No.12」のピアノ演奏から始まります。この曲が書かれた1831年はショパンの母国ポーランドで、ロシアによるワルシャワ侵攻が起こった年です。MIYAKOさんがSWAN SONGの前に、この曲を演奏する意味は、「ショパンの曲がモチーフなんですよ。後世の人が『革命』とタイトルをつけた曲なんですよ。」と紹介したい意図があるのかな?と感じました。

 

自分はピアノは聴く専門で弾くことはできませんが、おそらくこの曲は難易度的には中の上くらいだと思います。左手はアルペジオで右手はユニゾンによるメロディーです。MIYAKOさんがすごいのは、ローランドの電子ピアノ、デジタルピアノで、情緒的な表現がきちんとできている事です。「ショパンは歌うように弾かなくてはならない」と自分は思っているのですが、彼女は完璧です。グランドピアノとはキータッチがまるで違うのに…。正にクラシックピアニストの佇まいです。

 

力強いパワーメタルの前奏が始まるとボーカルのASAMIさんは、ステージ左右のお立ち台に上り、バレエの動きで白鳥を表現します。彼女の動きはいつもバレエ的ですが、クラシックに興味がある人なら、チャイコフスキーの「白鳥の湖」を連想するかもしれません。二羽の白鳥ですね。ただ自分は他の意味もあると感じたので、それは後で詳しく説明します。

 

曲調はパワーメタルながら全体的にはクラシックの要素がふんだんに入った曲です。サビにドヴォルザーク「新世界より」のメロディーが入り、ピアノのアルペジオが重なってきます。何の先入観もなく初めて聴くと、「これはメタルのラフマニノフか!」と感じてしまいます。力強さと哀愁とわびしさが混在しているような…。

 

歌詞はいつものASAMIさんの書く歌詞とは異なります。戦いで亡くなった戦士を讃える内容ですが、一種の比喩となっています。ASAMIさんはインタビューでSWAN SONGについて「この曲を聴いたときに、バレエっぽいなと感じて。白鳥を入れたいなと浮かんだんです。ヨーロッパの伝承では、白鳥は生きている間は鳴かないけど、死ぬ間際に美しい声で鳴くという話があるんです。」と言っています。白鳥、戦士、MIYAKOさんが弾いた「革命のエチュード」…。すべてがつながりました。

 

歌詞にはFloating lotusという言葉が入っています。「ハスの花が浮いている」という意味でしょうか?とても東洋的な情景を感じさせる言葉ですが、白鳥が水に浮かんでいる姿にかけてあるとしたら、深みを感じさせる歌詞です。

 

中間のギターソロはいつも通りテクニカルですが、少しもの悲しさがあります。彼女たちのハイライト、聴かせどころはツインギターによるハーモニーなのですが、この曲の場合、ほんのわずかしかありません。これは「二つのもの」を表現するためだと自分は解釈しました。

 

そしてラスト。MIDORIさんの熱い、燃えるような、まぶしいきらめきを感じるソロ。これは「生(せい)」です。いつのまにかMIYAKOさんのピアノのアルペジオが重なってきます。それは「死」のイメージなのですが、まったく悲劇的、悲観的に聴こえません。MIDORIさんの「生」の演奏が終わり、MIYAKOさんの両手のアルペジオには、美しさと安らぎしかありません。そして極めてショパン的に完璧に終わります。

 

「二つのもの」とは「生」と「死」です。ASAMIさんがステージの両端に立ったのも、ギターソロの表現も…。森羅万象、生きているものは必ず死ぬのです。これが唯一の真理で、同時に存在しています。ただ「死」を恐れるのではなくて、毎日を悔いのないように精一杯生きよう、死に際しては、何を残せるかの心構えをしておこう。「生き様」も大事だが「死に様」も同等に考えよう…。いろんなことを想起しました。

 

メタルなんだけど、とても日本人的ですね。「鬼滅の刃 無限列車編」の煉獄さんの姿に似ているような気がしました。