サンプル問題にみるコーチングのクライアント像(その6)
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コーチングのクライアント像
コーチングを受けるクライアント像とは?
コーチングクラスの受講者からよく
「目標やなりたい自分が見つからない人」
はコーチングのクライアント像にならないのですか?
というご質問を受けます。
そのようなクライアントにもコーチングをすることはできますが、
本来のコーチングのクライアント像とは異なります。
本来のコーチングのクライアント像とは、以下のように解説しています。
「目標を達成したい!」という強い意欲はあるが、
① これをやれば成功するという確信が持てず、行動に踏み切れない
② いつまでたっても行動できない
③ 行動したが思うような成果が上がらない
④ 新しい発想やアイディアが浮かばない
⑤ 気持ちが落ち込み、新たな発想や行動への意欲が高まらない
このクライアント像をもう少し具体的に説明するために、
国際コーチング連盟の認定資格試験のサンプル問題を転載して解説していきます。
それではさっそく問題です。
クライアントは、重要なキャリアの移行期間中にコーチと協力してサポートしています。
クライアントは現在、会社の最高執行責任者として厳しい役割を担っている一方で、
2 人の幼い子供を育て、クライアントと同居している年老いた両親の世話も率先して務めています。
クライアントは最近 3 つの異なる企業から仕事のオファーを受けましたが、
いずれもクライアントとその家族に転居を要求しました。
クライアントは新しい仕事の機会に興奮してセッションに来ており、
どのオファーを選択するかについてセッションを通じて明確になることを望んでいます。
クライアントは、新しい仕事に何を求めているかについて話し合い、
成長の機会、やりがいのある責任、率いるべき有能なチーム、出張の可能性などを精力的に列挙します。
コーチが、クライアントの子供たちや年老いた親たちが、新しいコミュニティで何が必要になるのかを尋ねると、
クライアントの興奮した笑顔は消え、突然静かになってしまいました。
コーチは何をすべきでしょうか?
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日頃は家族のために努めていながらも、
キャリアアップが目の前に訪れ、夢中になってしまい、
家族のことがついついおろそかになってしまうパターンですね。
笑顔が消え、静かになってしまったクライアントの心情は皆さんもご理解できることと思います。
クライアントはまさに
「(キャリアアップという)目標を達成したい!」という強い意欲はあるが、
今まさに
⑤ 気持ちが落ち込み、新たな発想や行動への意欲が高まらない
に陥っているといえるでしょう。
コーチングの効果
コーチングがクライアントにもたらす6つの効果の視点からみると、
① 目標とその達成イメージが明確になる
② 毎回、自分が得た成果をコーチと話すことにより、目標達成へ向けての意識の集中を継続することができる
③ ヤリタイことを実現するために何をすべきかが毎回具体的になるため、行動が促される
④ 気になっていることや心のわだかまりをコーチに話すことで、心身のストレスが減る
⑤ コーチと約束をすることにより、怠け心を克服することができる
⑥ 感情が最大限に尊重されるので、心から受け入れられている安心感を得られる
当初、このクライアントは、キャリアアップの実現に向けて、
③ ヤリタイことを実現するために何をすべきかが毎回具体的になるため、行動が促される
を期待して、コーチングを依頼してきたのではないでしょうか。
しかし、キャリアアップと引き換えに転居を求められ、
家族の生活になんらかの影響を与えてしまうという状況に追い込まれたクライアントは、
コーチングから、
⑥ 感情が最大限に尊重されるので、心から受け入れられている安心感を得られる
自身の感情を尊重してくれるコーチに安心と感謝を抱き、
④ 気になっていることや心のわだかまりをコーチに話すことで、心身のストレスが減る
家族のコミュニティに関する心のわだかまりを話し、
心身のストレスを減らすことに期待が移っているかもしれません。
プロコーチの能力水準と接し方
認定資格試験で問われるコーチの接し方として、以下4つの選択肢が与えられています。
A) クライアントに質問を繰り返して、コーチの質問に答える機会をもう一度与えます。
B) クライアントにセッションを続けても大丈夫かどうか、または休憩が必要かどうかを尋ねます。
C) 少しの間立ち止まって、クライアントのエネルギーの変化に気づいたことをクライアントと共有します。
クライアントに、今この瞬間に感じていることを探ってみたいかどうか尋ねます。
D) クライアントが新しい仕事について列挙したそれぞれの特徴を探ってもらうことで、
クライアントが受け取ったオファーを比較検討できるようにサポートします。
コーチとしての最善の行動はC)です。
国際コーチング連盟の行動規範(コア・コンピテンシー)では、
6-4. クライアントの感情、エネルギーの変化、非言語的な合図、またはその他の行動に気づき、認識し、 探索している
と定めています。
クライアントの感情やエネルギーの変化に気づき、
クライアントが真に求めていることを自己表現するまでしっかり待つ
という積極的な傾聴が求められます。
ちなみに、
コーチとしての最悪の行動はA)です。
D) も、クライアントの感情やクライアントを取り巻く家族環境などを無視して、
新しい仕事3社について比較検討に入るという情け容赦ない対応であり、
コーチとしては許されない行動です。
しかし、それ以上にA)はクライアントを追い詰めてしまい、
コーチとクライアントのパートナー関係にまで悪影響を与えるリスクがあります。
クライアントの感情やエネルギーの変化に気づいたら、しっかり待つ。
そして、視点を変えてクライアントの胸の内を引き出す問いかけが適切です。