候補者が
取締役の義務、法律、財務、ガバナンス、ESG(環境・社会・企業統治)開示要件
などに関する知識を有しているかを確認せずに、(中略)取締役全員を承認している。
米国の2020年の調査では、上場企業の取締役は過去1年で平均33時間を取締役教育に費やしていた。
2023年12月25日(月)日本経済新聞朝刊
会社役員育成機構 代表理事 ニコラス・ベネシュ氏の記事より
記事のタイトルに目が留まり、一読しました。
取締役研修・社外取締研修を提供する組織の代表者なので、
自組織の宣伝の色も強いのですが、
注目の一文が3点もあったので、全文そのまま転載します。
---
役員候補のスキルに目を向けよ
社会が大きく変わる時には、会社も変革が必要だ。
それを行うのは取締役でなければならない。
しかし、日本企業に投資する大半の機関投資家は、経営陣が事実上コントロールする取締役会の候補について、最も肝心な資質を重視せずに承認している。
多くの場合、新任候補者は株主と社会の利益に貢献するための特別な準備を欠いている。
投資家はこの事実を直視していない。
その結果、ほとんどの日本企業の取締役会において、取締役の大半は取締役会が監視・監督すべき経営陣そのものとなっている。社外取締役の約1/3は就任後3年未満であり、過去に取締役を務めたことが無い。
対照的に他の先進国では多くの場合、候補者は最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)の経験があり、独立取締役として長年の経験を積んでいる。欧米ではこうした人材が日本より多く、新たな課題に対応できる知識の向上を心掛けている。
米国の2020年の調査では、上場企業の取締役は過去1年で平均33時間を取締役教育に費やしていた。
残念なことに多くの日本企業は社内外を問わず新任取締役の教育よりも、実施訓練に頼る傾向が強い。そのため、新任取締役の多くは就任後2年間あまり発言しない。結果として、事業ポートフォリオ・合理化などの根本的な問題に取り組むことに貢献できない。非効率な取締役会が変革されず、株式市場での低評価につながる。
財務諸表を読めないメンバーもいる取締役会が、企業の価値を大きく上昇させるような大胆なプランを打ち出すことは難しいだろう。
しかも候補者の資質は十分にチェックされていない。
候補者が取締役の義務、法律、財務、ガバナンス、ESG(環境・社会・企業統治)開示要件などに関する知識を有しているかを確認せずに、不祥事や独立性・多様性の問題がなければ、慣例のまま、指名されている取締役全員を承認している。
取締役候補者の準備不足を見過ごし続けているのだ。
近い将来、多くの業界が統廃合を迎え、上場企業の数は減少し、その平均的な質は向上するはずだ。それがどの程度になるかは、投資家の声にかかっている。
---