青春18×2 君へと続く道
2024年作品/日本・台湾/123分
監督 藤井道人
出演 シュー・グァンハン、清原果耶
2024年5月10日(日)、シアタス調布のスクリーン11で、8時50分の回を観賞しました。
始まりは18年前の台湾。カラオケ店でバイトする高校生・ジミーは、日本から来たバックパッカー・アミと出会う。天真爛漫な彼女と過ごすうち、恋心を抱いていくジミー。しかし、突然アミが帰国することに。意気消沈するジミーに、アミはある約束を提案する(以上、公式サイトからの抜粋)、という物語です。
「新聞記者(19)」「余命10年(22)」「最後まで行く(23)」などの藤井道人監督の新作。この方、まだ37歳の若さなんですよね。サスペンス、ラブストーリー、アクション、どんなジャンルを撮ってもクオリティを維持されて、この年齢にしてなんだか大成してしまったかのようなところがありまして、新作も完成度の高いウェルメイドな作品でした。
ネタバレを含みますので、気になる方はご覧になってからお読みいただけると嬉しいです。
《感想です》
- 定番のラブストーリーですが、語り方、見せ方、編集で上質な仕上げに
- シュー・グァンハンさん、清原果耶さんの〝青春〟という演技に魅せられます
- ロードムービーで、旅の途中、ジミーが出会う人たちがまた気持ちがいい
私は「余命10年」もとても良かったと感じた派ですので、この新作も2時間しっかり最後まで堪能させていただきました。ある種、定番のようなラブストーリーなのですが、決して悲劇を強調しすぎることがないところに好感が待てます。ドラマの途中で観客に〝そうなんだろう〟と予測させてしまうノーサプライズな展開の仕方が返っていいのだと思います。
藤井道人監督の演出が冴えて、空撮のロングショットでの場所の捉え方から、ミドルショットでの状況説明、そしてここぞという時のクローズアップなど、カメラが素晴らしいです。また、ジミーがアミの実家を訪れるくだりの抑制の効かせ方が見事で、母親とジミーの目線の動かし方、ジミーの向こう側にたくさんの花があることを見せるカットの挿入など、編集も素晴らしい。
日本と台湾の合作ということで、それぞれの国の景観の見せ方もよくて、日本はジミーが神奈川県鎌倉、長野県松本、新潟県長岡、福島県只見などを巡るロードムービーになっています。それぞれの場所の映像が美しいだけではなく、台湾における彼とアミの物語とリンクしているので、単なる〝絵ハガキ〟になっておらず、感情に訴えかけてくるのです。
色々とあった末に男性が未来に向けて歩き始めるという点に先日観た「パスト ライブス」を思わせるようなところもありました。ただ、本作では二人はきちんと折り合いをつけて台湾で分かれているので、間に横たわる月日に違和感はなかったです。自分も含め、女性に比べて男性が過去に縛られていたり、感傷的なのはアジア特有のものなのでしょうかねー。
いい人しか出てこないのはおかしい、あまりにも偶然が重なりすぎるといったことを〝ご都合主義〟だと、そもそも創り手がハナから考えてもない(よく考えた上で排除した)のだろう点を突くような粗探しをせずに素直に観れば、やはりよくできた作品だと思います。まあ、こういう作品が肌に合う、合わない、好き、嫌いという嗜好の差はあるのでしょうが。
最後の10分の〝裏側〟のくだりは少しくどいのかなーと感じたりもしましたが、これを見せないと清原果耶さんの演技の見せどころが無くなってしまうので、あって正解なのでしょう。
なお、私の「余命10年」の感想はこちらです。
実にいい映画でしたし、台湾にも行ってみたくなりました!
この項、終わり。