デューン 砂の惑星(IMAX) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

デューン 砂の惑星(IMAX)


2021年作品/アメリカ/155分

監督 ドゥニ・ビルヌーブ

出演 ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン


2021年10月24日(日)、ユナイテッド・シネマとしまえんのスクリーン8で、8時50分の回を鑑賞しました。


人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた西暦1万190年、1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれる中、レト・アトレイデス公爵は通称デューンと呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになった。アラキスは抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンに乗り込んだレト公爵を待っていたのはメランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。やがてレト公爵は殺され、妻のジェシカと息子のポールも命を狙われることなる(以上、映画.comより引用)、という物語です。


間違いなく映画館の大きなスクリーンで観るべきタイプの作品。しかし、油断していますとどんどん上映回数が減って、IMAXで観ようとすると時間が限られていて、朝8時50分の回を選択せざるをえず。でも、日曜日に早起きして行った甲斐のある作品でした。ちなみにデビッド・リンチ版(84)は公開時に大阪の松竹座で鑑賞、フランク・ハーバートの小説は未読という状態です。


大スケールと緻密描写で魅せる宇宙叙事詩


巷では評判のあまりよろしくないデビッド・リンチの「デューン/砂の惑星」ですが、私は個人的には〝そんなに酷い作品〟とは感じておらず、「エレファント・マン」のデビッド・リンチらしいグロテスクで、シュールなイマジネーションの世界観に心惹かれたほうでした。映画館で観たずっと後にも、公開時の2時間17分より1時間も長い3時間強のテレビ版をレンタルしましたね。


しかし、それでも巨大な宇宙の世界での戦争を描くにはCG登場前の当時の技術的な限界もあり、また、ストーリー展開も字幕(語り?)や人物の内声に頼るところもあり、それがゆえに慌ただしく分かりにくかったと記憶しております。今回、満を辞して登場というドゥニ・ビルヌーブ監督版は、そういう前の「デューン」が出来なかったあれこれを見事にクリアした印象です。


ハルコンネン家とアトレイデス家の対立を、カラダンという海を持つ美しい惑星とアラキスという砂と岩しかない荒涼とした惑星を舞台の中心に壮大なスケールで描きつつ、トンボ型の昆虫のような飛行艇や保水スーツ、シールド(電磁鎧?)といったSFファンが涎を垂らして喜びそうな数々のアイテムが、圧倒的なリアル感をもって登場。この宇宙叙事詩に華を添えます。


▼カラダンからアラキスへ引っ越すアトレイデス領家


実は分かりやすい、通俗的な戦国英雄譚


また内容のほうもすごく分かりやすいです。このドラマ(原作)では、独特の世界観を作るために登場人物だけでなく、機械や武器などあらゆるものに風変わりな名前・呼び名がついていて〝らしさ〟が大切にされているのですが、それに気を取られてしまうと頭が混乱しかねません。でも余計なものを取り払うと、要は皇帝お抱えの二つの名家の勢力争いということですね。


悪徳商人ハルコンネン家の策略により、国王である父親レト・アトレイデスを殺され、母親とともに砂漠に追放された息子のポール。しかし彼は、やがて原住民たちに言い伝えられる救世主となって、ハルコンネン家を倒すために民を束ね立ち上がる、という感じ。その中で描かれていく、決闘、暗殺、裏切りは、よく考えると歴史物の大河ドラマでは結構ありがちだったり。


見た目が新しくそうは思わせないのですけど、割と昔からよくある話のようなのですね。そして、みなさんご指摘されているように本作は二部作になり、今回はそのパート1、つまり〝前編〟。なのでドラマも悠々と進んでいき、焦るような展開は1ミリもなく、丁寧に描かれていきます。それでも事前に少しは〝人物相関関係〟なんかをオフシャルサイトで整理しておくとよいかと。


▼アラキスを急襲するハルコンネン領家と皇帝の軍隊


美術館で絵画をじっくり楽しむように観る


2時間半という長さで、しかも前編。これを冗長で退屈な2時間半と感じるか、それとも壮大な世界観に身を浸す豊潤、濃厚な2時間半とすることができるか。善玉敗退で終わり、尻切れトンボでカタルシスは薄いものの、私自身は見せ場には事欠かず、飽きるところなく最後まで堪能できました。観客の目に映るもの全てが完全に統制されている映像スペクタクルも素晴らしいです。


そうですね、この映画は美術館へ行って一枚の絵画の前でじっくりと時間を過ごすようなところがありますね。キャストの顔立ち、メイク、衣装、舞台、これは美術の映画。ちなみに視覚から入るものだけでなく、音楽、音響効果も印象的でやはり劇場環境で体感いただきたいです。一方であまりにキレイすぎて、逆にデビッド・リンチ版のアクの強さが懐かしく感じたりも、笑笑。


さて、この映画を観ていますと、フランク・ハーバートの原作が後のSF映画に与えた影響を感じますね。分かりやすく、あちらだと「スター・ウォーズ」、こちらだと「風の谷のナウシカ」。そういうところ観ていて興味深いです。で、思い出したのが「フラッシュ・ゴードン(80)」で、主人公が気持ち悪い植物のなかに右手を入れて勇気を試されるシーン、元ネタはこれか!


▼アラキスに棲息する〝砂虫〟と呼ばれる巨大生物!


この前編がそれなりに成功したからか、次のパート2があるということで、とても楽しみです。でも公開までに数年はありそうで、そういうのってどうなの?と感じたりもします。やはり、基本的には映画はひとつの作品としてどんなに長尺でも一本で完結させてもらうか、最初から連作として作り公開することを前提に製作し、あまり間をおかずに公開すべきなのではないかと。

この前編だけで判断するのも難しいですが、今年を代表するSF映画として、オススメかと思います!


トシのオススメ度:4

5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


デューン 砂の惑星、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり